第百三十七話 立ちはだかるジョニア
……このMAPはテレジコ空域を取り巻いている対流の動きまで分かるように表示されているな。どうやって対流の向きまで観測しているのか分からないけどすごい技術だね。……ん? この部分だけ向きが違う?
情報を整理しながらMAPを見ていたクロードはテレジコ空域の奥側に1ヵ所周囲のものとは異なる向きのものを見つけた。そこのMAPの表示はそれ以上進めないようになっているのではなくむしろ進めるようになっているように見えるのだ。何気なく見ていると気付かない程の違いだが気付けば違和感しか無い。目指すべき場所はそこである。
……ここに行ってみるか。数は少ないけどモンスターがいない訳じゃ無いからね。注意して進もう。
クロードは索敵をしつつ慎重に進んで行った。モンスターは基本的に目に入らなければこちらに気付けない。従って漂うガレキを障害物にしながら進めばほとんどのモンスターに気付かれずに進むことが可能なのだ。とは言ってもそれはあくまでモンスターに限る話である。
……まあ、そりゃそうか。確かこいつを救出するためにネミリア王国が直接攻めて来たんだっけ? 確か名前は……ベルウッドだったか?
クロードは対流で出来た壁と距離が空いているためにやや広めの空間となっている場所に出た。その場所を通り抜ければ目指す地点はすぐそこである。だがその場所を通り抜けるために絶対に通る必要のある場所に見覚えのある機体が漂っていたのだ。
こうなれば隠れる必要は全く無い。クロードは正面から近づいた。それでようやくベルウッドの方もこちらに気付いたようだ。少しばかり前へ進んで来たのである。やがてクロードにとって見覚えのある空戦用E・L・K、ジョニアから声が聞こえて来た。
「……何をお探しかな? こんな辺境に何の用です?」
「……オリオンの頂を探している。この先にあるのか?」
「なるほど、目的は我らがボスを止めることでしたか。……確かテレジコ空域への突入口はどちらも幹部に見張らせていたはずですが、あなたがいるなら彼らを破ってここに来たと言う訳ですな。……ふふ、あなたの予想通りこの先にオリオンの頂へと続く道があります」
……へぇ、丁寧に教えてくれたね。まあ、オリオンの頂へ行けないよう見張るなら道中絶対に通る場所で見張るべきだし、ここに見張りがいるならこの先にあることは教えてもらわなくても分かるんだけどな。
「ですが、当然奥に進むには私を破る必要があります。……あぁ、間違えた。私だけじゃあ無いな」
私だけじゃ無い? ……マジかよ。
背後から何かがうごめく気配がした。クロードの背後にはモンスターから見つからないように使っていたガレキくらいしか無い。振り返らずともうごめく気配が[マインドジャック]されたラブルゴーレムから発せられたものだと言うことをクロードは分かったのである。
「……お前の実力は分かっている。お前には悪いがボスの野望のためここを通す訳にはいかない。……さて、御託はもう良いだろう。それじゃあよォ! 戦いを楽しんで行こうやァ‼︎」
感情を爆発させながらベルウッドはクロードに目掛けて爆弾を発射した。この攻撃は爆発自体はもちろん飛び散るガレキの破片まで気を配らなければならず相当厄介である。これをクロードは下がりながら確実に回避すると大きく旋回してまず背後に回っているラブルゴーレムを確認した。
……2体か、ちょっと多いな。前回は隣り合わせて攻撃させることによって消耗させたんだけど、今回は多分無理だな。それをしようとするならベルウッドの背後に回る必要がある。だが位置関係的にもそれは不可能だろうね。
ベルウッドの背後に回れればラブルゴーレム同士の消耗に持ち込めるが、そもそも背後に回れればそのまま先に進めば良いのでそれ以上の戦闘の必要が無くなる。クロードがこの先に進むことを阻止したいベルウッドからそれが出来るとは思えない。故にラブルゴーレムは正攻法で対処するしか無いのだ。
距離を考えながら旋回することでクロードはラブルゴーレムを2体共射程圏内に入れた。ジョニアとは距離が離れているためベルウッドの攻撃を気にせずにラブルゴーレムとの戦闘に集中出来る絶好の位置取りである。
……よし、ここから攻撃開始だ。あんまり時間をかけてられないからな。スキルでサクッと討伐するぞ。
クロードは【レーザースパイラル】のスイッチを押し込んだ。スキルの発動により一定時間通常射撃に貫通属性が付与される。装甲の厚いラブルゴーレムであってもこの状態なら3発の通常射撃で討伐が可能である。こうして宣言通りクロードはラブルゴーレムを計6発で2体沈めてみせた。【レーザースパイラル】の効果時間はまだ残っている。クロードはベルウッドへのダメージを稼ぐため照準をジョニアへ合わせた。
しかしベルウッドもラブルゴーレムでクロードを倒せるとは思っていない。せいぜいベルウッドがクロードの視界から外れる時間を稼ぐ程度である。稼いだ時間で何をするか。やれることをは沢山あるがベルウッドが選択したのはため攻撃であった。
読んでくださりありがとうございます。
当然ですがそう簡単にオリオンの頂に、シュガの元にはたどり着けません。一度戦ったとはいえベルウッドはかなり厄介な相手です。果たしてクロードは勝てるのでしょうか?