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第百三十四話 海戦の始まり


 そう言うとパディンは砲撃を始めた。大きな轟音と共に一定の周期で放たれるその弾丸は狙い澄ましたかのようにクロードへと飛んで来ていた。クロードはそれを難なく全て回避しつつカウンターの砲撃を仕掛けていた。


 前回のパディンとの戦闘は空戦用対海戦用と言ってしまえば特殊な状況での戦闘であった。その分砲撃を回避するのは難しく前回は大方の砲撃は回避出来ていたが、スキルを含め何発かは食らってしまっていたのだ。だがそれはあくまでも特殊な状況下だったからである。


 現在クロードは空戦用のアクィラではなく海戦用のデサルトに乗り込んでいる。そのため相手こそ厄介だが普通の戦闘と何ら変わりない故に少なくとも通常砲撃程度なら簡単に回避出来るのだ。


「……相変わらず回避するのが上手い。通常砲撃じゃ意味が無いようだな。それならスキルを発動させるとしよう。……食らえ、【スレッドジャマー】!」


 クロードはパディンが叫んだスキルの名前に覚えがあった。記憶と寸分違わない白い物体が高速で砲台から放たれたのをクロードは見た。これに触れられてしまうと速度が著しく低下してしまう。


 そして【レーザースパイラル】のように食らってから状況を挽回出来るようなスキルはクイックガトリングには装着されていない。つまり食らえば相手から相当なダメージを食らってしまうことが確定してしまうのだ。……ならばやることはただ1つ。食らわないよう全力で回避する、それだけである。


 放たれたそのスレッドジャマーを視界に捉えながらクロードはハンドルを捻りペダルを大きく踏み込んだ。反応が早かったからかスレッドジャマーはデサルトにかすりもせずに水面に不時着した。着水するまで見届けたクロードは2つのあることに気がついた。


 1つは着水したスレッドジャマーが消失せずにオブジェクトとして水面に残っていることである。そしてもう1つはスレッドジャマーの回避に気を配りすぎてパディンがかなり接近していることである。


 前を向いたクロードはかなり近い場所で砲台を水平方向まで傾けたパディンの姿を見た。やって来る攻撃を回避したいがスレッドジャマーのオブジェクトが邪魔で思うように回避が出来ない。


「この距離なら絶対外さねぇよ。食らいやがれ!【サブマリンボム】!」


 放たれた砲弾は水面ギリギリを唸るように這って迫り来るとデサルトに直撃した。消耗を恐れるあまり過剰に回避した結果が招いた事態である。とはいえクロードもただ食らう訳にはいかない。直撃しダメージを受けてから早急に体勢を整え次の砲撃を完璧に回避してみせたのだ。【サブマリンボム】の直撃から畳み掛けたかったパディンとしてはそれほど成果が上げられずやや不満顔である。


「……思ったより消耗してねぇな。畳み掛けてやろうと思ったのによォ」


 当たり前だよ。こっちは出来るだけ消耗したくないんだ。むしろ俺からしたら【サブマリンボム】すら食らいたくなかった。ここからはなるべく食らわないなんて悠長なことは言わない。全部完璧に回避してやる。


 ところで接近したらしたままなんだな。弾速の速いスキルじゃない通常の砲撃ならこの距離でも回避可能だし、スキルを発動するまでの間に距離を取らないのならこっちの攻め時だ。この距離なら外さねぇよ。……だっけ? 確かにこの距離でスキルを外すビジョンは微塵も湧かないね。


 クロードは赤く輝くスイッチを押し込んだ。発動するのは【ヒートチャージ】。接近したままのパディン目掛けて放たれた炎熱攻撃は正確に弧を描いてパディンへ命中した。反応が遅れたのかパディンは体勢を立て直すのに苦労しているようだ。その隙にクロードは通常砲撃を何発か命中させつつ距離を取った。


 ……さっきまであったスレッドジャマーが消えているな。時間経過で消失するのは嬉しいけどそれはつまり触れれば何らかの効果があったであろうって言う意味でもあるからね。慎重に回避して正解だったよ。


「アァ、痛ぇ。こっちの攻撃は中々当たらねぇのにあんたは俺にきちんと命中させてくる。……前回よりも強くなってやがるな。ちょっと真剣にやらねぇとすぐに撃墜されちまいそうだ。……さて、そんなことを言っている間に再び【スレッドジャマー】が発動可能になった。つまりもうすぐ【サブマリンボム】も発動可能になる。そしてあんたもよく知るように俺の扱うスキルは3種類ある。……あんたには一度見せたか。なら【プリズムオーラ】ってうそぶく必要も無いな。俺は今から3種類全てをあんたにぶつける。……楽しい勝負だがもう終わりにしよう、食らうが良い!【キャノンオイル】!」


 パディンはスキルを発動させた。なるほど、以前見たものと同じ黒いオーラを纏っているようにクロードには思われた。【プリズムオーラ】では無くあの時と今発動させているスキルは【キャノンオイル】で間違い無さそうだ。


 ……そうか、発動した側からどう言う見た目なのかは分かりづらいから気付かなかったよ。あのオーラは【キャノンオイル】のものだったんだな。……ふふ、クイックガトリングでこのタスクに臨んで良かったよ。それじゃあ応戦するとしようか!


 パディンがスキル名を叫んでから僅か2秒後、クロードによってコックピットの左上【ヒートチャージ】のスイッチの下で黒く輝くスイッチが押し込まれた。もちろん発動するスキルは【キャノンオイル】である。


 読んでくださりありがとうございます。

 パディンとの戦いが始まりました。今のところクロードの方が優勢でしょうか。このまま押し切っていきたいところです。

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