表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

132/150

第百三十一話 彼には野望があった。


 ……教官が俺を呼んでいる? 心当たりは……無い、いや1つだけあるな。……昨日急ぎ足の職員らしき男の人とすれ違ったんだよな、そういえば。良い知らせだと良いんだけどね、まあ行けば分かるか。


――

教官室

――


 ノックをしてからクロードは教官室へ入って行った。教官室ではレオが厳しい表情を浮かべながら腕を組んでいた。この場合怒られるのでは無いことは経験上知っている。それだけに自分の予感が当たっているようでクロードは何となく嫌な気になった。


「……来たか。クロード、……君に少し話がある。君にとあるタスクを申請したいのだ」


「……調査タスクが終わったんですか?」


 クロードは自分の予感をレオにぶつけてみた。特に問題行動が思い出せない故にクロードが呼び出される理由はそれしか残っていないのだ。その反応を見てレオは静かにこちらを見ていた。肯定と言うことだろう。


「……その通りだ。昨日の夜ラッケルが帰還した。彼に申請した調査タスクはただ1つ。ネミリア王国に現在極化書はあるか否かだ。……ラッケルの懸命な調査の結果、ネミリア王国に現在使用可能な極化書は存在していないとの判断が得られた」


 極化書は存在していない。その情報は朗報のはずである。しかしレオの表情は厳しいままである。ならば他に何かあると言うことだろう。クロードは考えるよりも先に口に出していた。


「……他に何が分かったんですか?」


「……言い方を変えよう。既に使用された極化書が見つかったようだ。ラッケルがそれを確認した限りでは極化された機体はエミリアス、ネミリア王国傭兵部隊隊長シュガの機体のものであったようだ」


 ……マジか、よりによって一番強いであろう人の機体が極化されているのか。ルブールが極化してステータスがかなり上がったからな。そもそもエミリアスと戦ったことの無い俺にはどれほど強いのかも想像もつかないや。


「……つまりシュガは極化した機体を既に手に入れていると考えて間違いないだろう。最高峰とも言える極化したE・L・Kを手に入れたあいつが次に目指すのは恐らくオリオンの頂だ。あそこには純度の高いミスリルがあるとの噂。それすらも手に入れてしまったならばあいつを止める手立ては皆無となるだろうな。ミスリルで作った武器パーツなど想像もしたくない。」


 どうやらシュガは極化したE・L・Kを手に入れ、その上武器パーツまでも最高のものを手に入れようとしているようだ。どうやら彼は文字通りの最強になるつもりらしい。スタラジア帝国としてはそれまでにシュガを止めなければいけないだろう。だがクロードにはそれよりも気になることがあった。


「……知り合いなんですか?」


 傭兵部隊隊長ならネミリア王国で最も強い人物であろう。言うなれば最強の敵である。そんな彼のことをレオは詳しく知っているようだ。彼を語るレオの口調には親しげすら感じられるのだ。


 それを聞かれたレオは少しだけ驚いた顔をするとやがてニコリと笑った。


「あぁ、そうか。君は知らないのか。シュガは元々スタラジア帝国の人間だ。クロード、君にとっては先輩の騎士にあたり、私の同期だ」


 ……あ、そうなのか。道理で詳しく知ってるしなんとなく親しげに聞こえたはずだよ。……でもなんで元々スタラジア帝国の騎士だった人がネミリア王国で傭兵部隊の隊長をしているんだ?


「少し昔の話をしよう。かつて私とシュガは一等騎士を目指して日々切磋琢磨していた。それはそれは楽しい日々であったよ。……だがシュガにとっては違ったようだ。彼には野望があった。……最強の騎士となり自分が皇帝に君臨し人々を支配する。いつしかそんなことを口にするようになった。私はシュガのその発言を許せなかった。……騎士としてあるまじき姿だと激しく非難したのだよ」


 その時のことを思い出したのかレオは少し遠くの方へ顔を向けた。楽しい日々だったのは間違いないのだろうな。クロードはレオのそんな表情を見てそう思っていた。


「シュガは黙って私の言葉を聞いていた。納得してくれたのだろうとその時引き下がったのさ。だが、シュガは何一つ納得していなかった。ある日シュガは失踪したのだ。2日ほど血眼になって探しやっとシュガの姿を見つけたのだ。……ネミリア王国傭兵部隊幹部としての彼をね」


 クロードは最早何も言えなかった。楽しい日々を過ごしていたはずの仲間が消え見つかった時敵の幹部となっていたなんて想像もしたくない。


「……その日から私はE・L・Kから降り、教官の道を進むことに決めた。自分では止められなかったあいつを止めてくれる。そんな騎士が現れるのをずっと待っていたのだよ。……そしてクロード、……君が現れた」


「……つまり俺がシュガを止めれば良いんですね」


「そうだ。今から私は君にスペシャルタスクを申請しよう。……もちろんタスクの目的はシュガの発見および撃墜だ」


 レオはまっすぐクロードの顔を見つめていた。レオの表情は今まで見たどの表情よりも穏やかで力強いものであった。相当な信頼を感じたクロードに取るべき選択肢は1つしかない。


「……そのタスク、もちろん受けさせてください」


 読んでくださりありがとうございます。

 どうやらネミリア王国傭兵部隊隊長であるシュガは元々スタラジア帝国の騎士だったようです。そしてレオとは同期であり因縁もあるようですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ