第百二十二話 ベルウッドはいない
……やっぱり攻撃を仕掛けられていたのか。穏やかじゃないね。……攻撃を仕掛けられるようなことあったっけ?
「以前君はベルウッドと言う名の幹部を撃墜させスタラジア帝国に捕縛して帰還しているな?」
そう言われてクロードは記憶を辿った。確かベルウッドを撃墜させた時ラッケルがやって来て連れて帰ると言っていた気がする。そしてラッケルの分も報酬を受け取った覚えがある。それならベルウッドを連れて帰ったのもクロードであるとなっていてもおかしくは無い。
「……そうですね」
「おっと、それを咎めることはしない。そもそもクロードに申請したのは撃墜タスク。故に撃墜すれば捕縛して帰還するのが自然の流れ。そこに何も問題は無い。……その後ベルウッドは駐屯所地下の尋問部屋へ連行されたのだ。もちろんネミリア王国の目的を知るためだ」
「……! つまり、ネミリア王国はベルウッドを取り戻すために?」
ここでようやくクロードもなぜネミリア王国が攻撃を仕掛けて来たのが分かった。駐屯所に空いていた大穴もベルウッドを取り戻すために攻めて来た者が空けたと考えれば納得がいく。
「その通りだ。……私とラッケルで応戦したのだが少しばかり数が多くてな。ベルウッドは連行されてしまったよ。……本当に申し訳無い」
そう言うとレオはクロードに頭を下げた。クロードは慌ててそれを制止した。ベルウッドが連行されてしまったのは確かに残念である。だが、そもそもその場にクロードは居なかったのでありレオを責めることは出来ない。むしろ大事なのはこれからどうするかである。
「それで……その、これからどうするんですか?」
「ひとまずは情報を集めるのが先だ。皇帝も攻めて来たことに大層ご立腹だがひとまず静観せよとのお考え。ラッケルに申請している調査タスクの結果によってまた次の動きが決まるだろう。クロード、……いずれ君の力を借りることになるだろう。その時にまた君をここに呼ぶ故に今は休息を取り、普段通りタスクをこなしていってくれたまえ」
……なるほど、調査タスクの結果待ちって事だな。何を調査しているのかはまったく分からないけどどうせ後で分かるから良いよね。……あ、そうだ。
「あの、……ルピウスが避難した場所はどこですか?」
「あぁ、ルピウスなら地下にあるシェルターだよ。もう戦闘は終わった後で解除命令も出しているからもう格納庫に戻っているんじゃないかな? もし格納庫に戻っても居ないのであれば地下のシェルターに行くといい。道中カギのかかった扉があるがカードキーで開くから問題無くシェルターに着けるはずだ」
へぇ、シェルターなんてものがあるのか。まあ、仮にも帝国騎士団の寮だからあってもおかしくは無いね。ちょっとだけ見てみたい気もするな。
ところで、……尋問部屋もシェルターになっていれば連行されるのを防げたんじゃないか? まあ、起こってしまったことを考えても仕方ないか。ルピウスは戻っているらしいし格納庫に戻りますかね。
クロードはレオに軽く挨拶をしてから教官室を出た。その後向かう先はもちろん格納庫である。シェルターも見てみたいが実際行くのは少しばかり面倒なのだ。
――
格納庫
――
クロードが格納庫の扉を開けるとそれに反応したルピウスがこちらへ駆け寄って来た。やはりシェルターに行く必要は無かったようである。
「クロード! 無事に帰還してたんだね、良かった良かった」
「それはこっちのセリフだ。帰還したらルピウスの姿は見えないし、外に出たらでっかい穴が空いているし、何が起こったのかまったく分からなかったよ」
「こっちも大変だったんだよ。クロードが調査タスク中なのに通信室から今すぐ地下のシェルターに避難せよって命令が来たんだ。精一杯サポートするって言ったのに途中でホログラムを切ることになって本当ごめんよ」
どうやらホログラムは壊れて機能停止した訳では無くあのタイミングで通信が切れてしまった故に通信が途絶えたようだ。通信が途絶えたのはクロードにとってはルピウスのサポートが無くなるため痛手だが、避難しない訳にはいかない。
「なるほど、だからあの時以降ホログラムが反応しなくなったのか。俺はてっきり壊れたのかと思っていたよ」
「普段ならタスクをしているクロードを輸送トラックで追いかけるから避難することも無いんだけど、テレジコ空域にはついていけないからね。だからその時僕は通信室にいたんだよ」
そう言われてクロードは輸送トラックを思い浮かべた。確かに水陸両用車になったことを嬉しそうに自分に言うルピウスは思い出せるがトラックが空にも対応したという話は思い出せない。
いずれは対応出来るようになるのかもしれないが現状は不可能となればルピウスが避難しなければならないのも必然となる。そこまで考えてクロードは通信が途絶えたことは仕方ないことであったと結論づけた。
「それで、調査タスクは上手くいったのかい? さっきも言った通り僕は途中までしか把握してないんだよ」
読んでくださりありがとうございます。
ベルウッドはネミリア王国に連行されたようです。しかし最高幹部とはいえベルウッドを連行するために攻撃を仕掛けてくるとは。彼らの目的が分からないだけに不気味ですね。




