第百二十一話 渦巻く異変
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格納庫
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タスクが完了したためクロードはスタラジア帝国へ帰って来ていた。タスクが達成したはずなのに達成感は無かったのである。タスクの目的はあくまでテレジコ空域に空いた大穴の調査であり、待ち構えていたパディンを撃墜することでは無い。そのためタスクとしては大成功なのだが後味が悪いのだ。
……ふぅ、ひとまずは帰還出来たな。途中でホログラムは機能停止するし、パディンには逃げられるし、これでタスクが達成出来たとは思えないや。そう言うタスクだって割り切るべきなのかな。
……まあ、ひとまず無事帰還した事だし、タスクの報告をしに行きますかね。あ、そうだ。金の設計図を2つ預けられるんだったな。……預けるのはまた明日でいいかな。わざわざそのために出るのも面倒だしね。
通常のタスクはスタラジア帝国の門より出発し、同じ門に帰還する。そのためその道中にある鍛冶屋に寄り道がしやすい。しかしテレジコ空域のタスクはその出発の形式上直接格納庫へと帰還してしまう。そのため鍛冶屋に行くのがやや面倒なのだ。クロードは別に武器パーツに困っている訳では無いので今日鍛冶屋に寄るのは止めておくようだ。
教官室に行く前にルピウスにホログラム機能が壊れていることを言っておかないとな。……あれ? ルピウスどこに行ったんだ?どこにも居ないぞ?
格納庫にいるはずのルピウスが見当たらないのだ。こう言う時はたまにある。大抵どこかに出かけているか、格納庫の外にいるかのどちらかである。外にいるのだろうと思ったクロードは格納庫から外へ出てみることにしたのてある、そしてやっとスタラジア帝国に起こった気が付いたのだ。
……なんだぁ? これは。まるであそこで大規模な戦闘があったみたいじゃないか。
格納庫から外に出て見た景色はいつもの風景とは違うものであった。もっとも大部分は同じである。ただ駐屯所のとある場所に大きな穴が空いているのだ。どう見ても人間の手では空けられないサイズであり、騎士であるクロードにはそれがE・L・Kによってなされたものだと確信出来た。
何かが起こったに違いない。クロードの記憶にはあの穴の空いた場所に何があったかは分からないがどう見ても異質な光景と相変わらず見つからないルピウスの姿を思うと嫌な胸騒ぎがするのである。
……ひとまず、教官室へ行こうか。
クロードには情報が無い。何が起こったのか知るためにも教官室へ行くのが得策だと判断したクロードは足早に教官室を目指したのであった。
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教官室
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ややいい加減なノックをして勢いよくクロードは教官室の扉を開けた。教官室ではいつもと変わらずレオが座っていた。いつもと違う点を言うなら少しばかりレオの顔に疲れが見られるくらいだろうか。
「…………あぁ、クロードか。帰還したのだな」
「……いったい何があったんですか? それに、……ルピウスはどこに行ったんです?」
「……安心したまえ、ルピウスは無事だ。今は少し安全な場所に避難しているだけだ」
……避難? とりあえず誰かしらとの戦闘が起こったってのは当たりっぽいな。
「何が起こったのかは順番に説明しよう。……だがその前に君の報告を聞きたい。見る限りタスクは達成されているようだ。ならば報告が出来るはずだ。ひとまずそれを先にしておきたい」
……タスクの報告が先なのか。まあ、良いか。ちゃんと説明してくれるのなら順番はどうでも良いしね。
「それでは報告を聞こう。まずテレジコ空域の不審な大穴はどこに繋がっていたのだ?」
「……コールバの海の奥側にあるネミリア王国にほど近い場所でした」
「……なるほど、それでは次だ。周囲に不審な人影は無かったか?」
「……通過した際、待ち構えていた幹部パディンと戦闘になりました。パディンが言うには大穴は同じく幹部のベルウッドがこじ開けたものだと……」
「……なるほど、パディンと戦闘になったのだな。無事帰還したと言うことはパディンは撃墜したのか?」
クロードは無事に帰還し今こうして教官室にいる。レオがそう思うのは自然なことである。1つ息を吐いてクロードは頭を下げた。
「撃墜は出来ず、謎の機械に操縦が困難になっているうちに逃げられてしまいました」
「……なるほど、よく分かった。頭を下げる必要は無い、顔を上げたまえ。……報告することは以上だな? ならばタスク達成に何も問題は無い。よくぞ無事に帰還した。これはタスクの報酬だ。受け取るが良い」
《30000Gを手に入れた》
《ドラゴリキッドを手に入れた》
お、ドラゴリキッドが手に入ったか。これ結構便利な代物だよな。うん、嬉しい嬉しい。それにお金も結構手に入ったね。虹の設計図は無いけど金の設計図は2つあるからね。これだけ手に入ったのはかなり嬉しいや。
「さてクロード、君に順番に説明しよう。まず、いったい何が起こったのかだ。率直に言おう。……ネミリア王国がスタラジア帝国に攻撃を仕掛けてきたのだ」
読んでくださりありがとうございます。
どうやらネミリア王国はスタラジア帝国に攻撃を仕掛けてきたようです。……一体何のためでしょうか?




