第百十三話 そこに段差は無い
そろそろ試運転は終わりで良いかな。それじゃあまず闇水晶の欠片から採取していきましょう。特定の採取ポイントから手に入るんだけど、それの出現確率が微妙に低いからとりあえず鉱物の採取ポイントをしらみ潰しにしていきますか。
《ガラクタ×2を手に入れた》
……次。お、これはちょっと期待出来るぞ。
《闇水晶の欠片×1を手に入れた》
良いね、予想通り。
《ガラクタ×2を手に入れた》
次。
《ガラクタ×3を手に入れた》
はい、次。
《ガラクタ×2を手に入れた》
……。お、微妙に紫がかっているように見えるぞ。……気のせい?
《闇水晶の欠片×1を手に入れた》
……よし、気のせいじゃ無かったね。ええと、3ヵ所目くらいかな。体感的にはまだマシって感じだな。思ったより順調に手に入ったよ。ひとまずこれで納品に必要なアイテムは全部揃ったな。いつでも帰還出来るように納品は済ませておくか。
クロードは先に納品を済ませておくようだ。慣れた手つきで鉄×1と闇水晶の欠片×3、エリーダブナ×3とトレントの樹液×1を全て納品したのである。
……よし、これで大丈夫だな。それじゃあロックファルコンを討伐するとしますか。ええと、MAPを見る限り、今エリーダ高原にいるロックファルコンは3体かな。出来れば手近なところにいるもので済ませたいけど、……多分この辺りってエルダートレントもいたよね。
さすがにエルダートレントを相手にするのは面倒だな。この辺りはなるべく避けて奥の方のロックファルコンを狙って進みましょうかね。
注意深く周囲を見渡しながらクロードはエリーダ高原の奥へと進んで行くことに決めたのである。クロードの判断は決して間違っていない。納品を済ませた場所から一番近いロックファルコンがいる座標を目指せば間違いなくエルダートレントと遭遇するのだ。よってエルダートレントとの戦闘を避けるために狙う対象を変えたのは正解である。
しかしクロードはあることを忘れていた。そもそもクロードはエリーダ高原の奥まであまり進んでいない。何しろエリーダ高原で行ったタスクは納品タスクか、ロックファルコンやエルダートレントの討伐タスクくらいである。そのため必ずしも奥に行かなければいけない訳ではない。当然のことだが、エリーダ高原の奥にはエルダートレントとは別のそれなりのモンスターがいるのである。
そろそろ目で確認出来るくらいだと思うんだけどなぁ。夜だからあんまり見えないや。……お、あれだな。それじゃあサクッと討伐していきますか。
クロードはレバーを握りしめて通常射撃を撃ち始めた。久しぶりのノーマルバレットの操作だがクロードはやり方を忘れてはいなかった。リロードのラグを出来るだけ小さくしたその通常射撃はヴァッシュMk−IIの高い攻撃と相まってかなり早くにロックファルコンを討伐したのである。
お、討伐だな。案外早かったね。それじゃあドロップアイテムを回収してからもう1体の討伐に行きますかね。
《石の翼膜を手に入れた》
ええと、こっちに行くとエルダートレントに遭遇しちゃうからあっちの道を進んで行けば良いかな。お、この段差を降りれば近道になるね。MAPには表示されて無いけどこの段差くらいなら問題なく通れるでしょう……⁈ 揺れた?
ロックファルコンが案外早く討伐出来たことから早くタスクを終われると言う焦りからだろうか。それともコールバの海のようにエリーダ高原にもMAPには表示されない秘密の近道があると信じていたからだろうか。クロードはMAPにないルートで進もうとして足を踏み入れた。……その瞬間大きく足元の地面が揺れているのに気付いた。
そもそも秘密のルートなら何らかの表示が出るはずである。そして出ないのなら秘密のルートでは無いと言うことだ。ではクロードが足を踏み入れた場所の正体はなんだったのだろうか。揺れる足場からすぐさま飛び降りたクロードは、突き刺さるように感じる視線の方向にライトを当てた。そこには背中を踏まれ睡眠の邪魔をされたことに怒っている大きなムカデに似た顔が照らされていた。
「クロード! 何怒らせているのさ!」
ホログラムから叫ぶようなルピウスの声が聞こえてきた。クロードにこのモンスターを怒らせるつもりは微塵も無い。ただ近道だと思って進んだ先が道ではなく目の前のモンスターの背中だったというだけである。
「てっきり段差かと思ったらモンスターだったよ……。こいつはなんてモンスターだ?」
「このモンスターの名前はマイルピード。かなり防御が高くて中々ダメージが与えづらく、非常に厄介なモンスターだよ。」
マイルピードか、……名前からはどんなモンスターかさっぱり分からないがとにかく防御が硬いってことは分かった。でもこっちも攻撃には自信があるんだよ。なんて言ったってヴァッシュMk−IIは俺が今持っている機体で最大の攻撃力を誇る。武器パーツこそノーマルバレットだが、ここは1つ我慢比べと行こうじゃないか。
出来るだけ続けざまにした通常射撃がマイルピードに向かって放たれた。そして間も無く防御がかなり高いとルピウスが言ったのが一瞬でクロードに伝わって来た。何しろ放った通常射撃を全て弾き手ごたえが皆無なのだ。
……いや硬すぎない? アサルトシャークとかラブルゴーレムとか硬いモンスターは何種類か相手にして来たけどこいつは別格で硬いぞ。そうなるとスキルで攻撃して行くしか無いのかな。……おおっと⁈ ……見た目から想像出来ないほどこいつ速いぞ。
読んでくださりありがとうございます。
もちろん奥に行けば行くほどモンスターは脅威になります。先に言っておきますが、このマイルピードはステータスの暴力です。エリーダ高原における最も厄介なモンスターになります。