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第百七話 ネグロプロシオン


【ネグロプロシオン】……? ……さっきの【ネグロブラスト】と似た名前だが似たようなスキルなのか?一体なにを……、機体を中心にエネルギーが集まっていくな。……まさか!


 ジョニアを中心としてエネルギーが集約し始めた。集められるエネルギーは近くにあるものを全て巻き込みながら赤黒い小さな球体を形成していた。球体が形成される過程でジョニアは操縦席近くの部分を除いてボロボロと崩れていった。


【ネグロプロシオン】。それは機体の著しい消耗を天秤にかけ通常では出せないほどのエネルギーを集約させ放つベルウッドが出せる最大の火力を誇る大技である。つまりベルウッドはジョニアを撃墜させるのを代償にクロードの撃墜を狙ったのだ。


 しかしその捨て身の攻撃が放たれることは無かった。


 極限まで消耗したジョニアがついに【ネグロプロシオン】を発動しようとしたその瞬間、飛んできたレーザーに撃ち抜かれた。装甲の消耗は限界を迎え朽ち果て、行き場の無くなったエネルギーは誰もいないテレジコ空域の底目掛けて発射された。


 撃墜を代償にしてまで放とうとしたベルウッドの大技は不発に終わったのだ。極限までに細くなった勝ち筋を最後まで掴もうとしたクロードがこの勝負を制したのである。


 



 機体を中心にエネルギーが集まっていくな。……まさか! 自爆か⁈ ……それなら回避は無理だな。だとしたら集まっていくエネルギーがデカすぎる。


 集約されていくエネルギーを見てクロードは静かにそう悟った。一応ジョニアの正面からは外れている。しかしそれもあまり意味は無さそうだ。何しろ目の前に広がる光景からクロードが想起した言葉は“自爆”。そして集約されたエネルギーの規模からすれば範囲外まで退避を試みても間に合わないと思われたのだ。


 食らえば確実に撃墜され、回避は間に合わない。そしてベルウッドは負けないから最高幹部なのだと、それを教えてやると言って発動させたのだ。


 ならば【ネグロプロシオン】は著しく機体が損傷したとしても撃墜まではいかないのだろう。つまり発動すればギリギリ撃墜を免れたジョニアが残る寸法である。


 逆に言い換えれば限界までは機体は損傷すると言うことだ。つまり発動される本当の直前。そのタイミングでダメージが入れば撃墜可能と言うことである。最早その判断が正しいかも分からなかったが、クロードはそれを信じてただ無言でレバーのスイッチを押し続けていたのだ。


「……慌てて来てみれば、もう戦闘は終わっているのかい?」


 聞こえて来た声に振り返るとそこにはアクィラが漂っていた。声の主はラッケルである。ラッケルにもタスクから戻り次第向かうよう伝えておこう。そんなようなことをレオが言っていたことを今さらながらにクロードは思い出していた。


「……はい、終わりました」


「そりゃすごいね。僕はてっきり君が苦戦しているだろうから急いで向かったのに、間に合わなかったとはね。それじゃあ僕はこいつを連れて帰るから君もゆっくり帰還すると良い」


 ラッケルは撃墜された衝撃で未だ動けずにいるベルウッドに近づくとそのままスタラジア帝国へ転送されて行った。それを見届けたクロードもまた表示されたウィンドウに従ってスタラジア帝国へと帰還したのである。


――

教官室

――


 無事にタスクを終えスタラジア帝国へと帰還したクロードは、そのまままっすぐ教官室へと訪れていた。ノックをしてから入るとすでにラッケルも教官室へと来ていたようだ。クロードが入って来るのに気付いたラッケルは笑顔でクロードを出迎えたのだ。


「お、帰って来たね。クロードのこともバッチリ報告しておいたよ! 僕は連れて帰る以外何にもしてないから僕の分も報酬を貰うと良いよ」


「え、良いんですか?」


「もちろん! ベルウッドを連れて帰っただけでランクAの報酬を貰ったら僕が教官に怒られちゃうよ。遠慮なく貰っておきな」


 ……へぇ、……まあくれると言うならありがたく貰っておこう。報酬が豪華になったのは嬉しいな。これはかなり期待して良いよね。それじゃあタスクの報告するとしますか。


「……クロードか、タスクの報告だな」


「そうです」


「……確かにタスクは完了している。危険なタスクだがよくぞ完了してくれた。依頼者としてもスタラジア帝国の騎士としても深く感謝している。……そして」


 教官であるレオにそこまで感謝されるとは思っておらずややクロードはむず痒さを感じていた。それほど感謝されるぐらいのことをしたのだと改めて感じたのである。


 だがその言葉の途中でレオが言い淀んだのである。何か不備があったのだろうか。そうクロードが思った瞬間レオは咳払いをして再び口を開いた。


「ベルウッドがテレジコ空域に現れたとの緊急事態に私もやや取り乱していたようでな。タスクを終えて帰還した君の報告も聞かずに新たにタスクを申請させてしまっていたのだ、申し訳ない。今から渡す報酬にはその分の報酬も含めてある。受け取るが良い」


《ルブールの極化書を手に入れた》

《50000Gを手に入れた》

《ペレグリンが使えるようになった》


 読んでくださりありがとうございます。

 ギリギリの所でしたが何とか【ネグロプロシオン】は不発に終わり、クロードがこの戦いを制しました。かなりの難易度のタスクでしたから報酬もかなり豪華です。

 そして前回達成していたタスクも含めて渡されるようですね。レオは報酬を渡していないことを詫びていますが、実のところを言うとクロードは報告をしてませんのでレオに落ち度はありません。つまり悪いのは……。以後気を付けます。本当すみません。

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