第百二話 荒ぶるモンスターたち
ぱっと見で3体ほどトライアイズが見えるな。それにその奥にいる奴も動いているからモンスターだろう。絶対こんな数多くモンスターがいるのはおかしい。ベルウッドに会うまでに戦闘は出来るだけ回避したかったところなんだが、面倒だけど討伐しながら進むしか無いね。
まず一番手前のトライアイズ目掛けてクロードはクラウンレーザーを撃ち込んだ。こちらに気付いたトライアイズは殺気立った表情でこちらを鋭く睨みつけている。心なしか速度も上がっている気がするがクロードはトライアイズの剣幕にも怯まずに最小限の動きで回避しながらダメージを重ねていった。
最小限の動きには理由がある。あまりに大きく回避すると他のモンスターに見つかる危険性が上がるからである。前回の戦闘で少なくともトライアイズはそれほど厄介な相手では無い事が分かっている。
ただしそれはあくまで1対1の状況に限るのだ。
今のようにどこかしこもモンスターでいっぱいの状況で他のモンスターも戦闘に巻き込んでしまえば一気に状況が混沌と化すのだ。そうなるとベルウッドを撃墜するどころか出会う前に撃墜されてしまう。それを避けるためにも多少のダメージは承知の上で最小限の動きで回避しながらの戦いになるのだ。
……よし、まずは1体トライアイズを討伐。ドロップアイテムは……残念だけど放棄だ。回収して要らない戦闘が始まると面倒だからね。とにかく表示されている場所までの最短ルートに被っているモンスターのみに絞って討伐して行くぞ。
続いて視界の先に映るトライアイズが別の方向を見ている間にこっそり通り抜けるとその先のトライアイズとクロードは戦闘を始めた。多少のダメージは承知の上で、そう頭では理解しているがやはり回避出来るものは回避したくなるものである。トライアイズの滑空攻撃を回避したその時戦闘をしていないトライアイズと目が合った。
……うぉ! 気付かれたか。2対1は正直厳しいぞ。すぐにどちらかを討伐してしまわないとしんどいね。
2体のトライアイズの猛攻をいなしながらクロードはレーザーを撃ち続けた。1体に集中してレーザーを撃った事が良かったのだろう。1体のトライアイズが光に包まれて消え去った。先に戦闘していた方が限界になったに違いない。1対1なら問題無く戦闘出来る。滑空攻撃を避けながらもう1体にレーザーを集中させた。
こいつで3体目のトライアイズだな。表情こそおっかないが特に行動パターンは変わっていないか。これなら楽に戦えるや。2対1の時間が短くて良かったよ。予備動作を2匹とも見ておくのはかなりしんどいからね。……お、討伐完了。それじゃあ進もうか。
遠目ではどんなモンスターかもあんまり見えなかったけど。……羽の生えた馬だな、うん。名前は知らないけど多分ペガサスとかそんな感じの名前はついていそうだね。見た事無いモンスターを複数相手にするのはちょっと厳しいんだが、なんとか1対1にならない?
クロードが進んだ先に羽の生えた馬が2頭ほど空を駆けていた。そのモンスターの名はスカイペガサス。天空を駆ける天馬である。普段は1頭いるかいないかレベルの遭遇率のモンスターがクロードの目の前で2頭並んで空を駆けているのだ。
……動きの規則性からしてバラして戦うのも、戦うのを避けるのも無理っぽいね。ならさっさと1頭倒すことに専念しようか。出し惜しみは……無しだ。
クロードは【レーザースパイラル】を発動させると手前側のスカイペガサスを狙って通常射撃を続けた。狙っているのは角のある頭部である。理由は簡単、何となくそこが急所な気がするからだ。
……これ効いているのか? 攻撃が来ないから効いているとも取れるし、中々倒れないから効いていないとも取れる。お、何かの予備動作かな。……落雷⁈ おっかない攻撃じゃないの。
……ん? もう1体どこに行った?
スカイペガサスの落雷攻撃を何とか回避したクロードだったが、その間に1体見失ってしまったのだ。小さく旋回するようにしてもう1体を探すとすでに先程見た落雷攻撃の予備動作に入っていた。慌ててその場を離れようと左に旋回すると今度は目の前で角をこちらに向けてスカイペガサスが突進を仕掛けて来ていたのだ。
マジかよ⁉︎ 避けられるのか⁈ ……アクィラの速度が速くて良かったよ。全く、複数相手にするとこれだから困るよ。……しかもどっちを集中して攻撃していたか分からなくなったじゃないか。……あ、でも奥側の奴の頭部に何個かレーザーの痕が見えるぞ。なら攻撃していたのは奥側の方だな。
【レーザースパイラル】の貫通効果により奥側の方を攻撃していたと判断したクロードはまっすぐ突っ込むようにして距離を詰めると再び先程まで攻撃していたらしきスカイペガサスに狙いを定めた。もう既に【レーザースパイラル】の効果は失われているが討伐にそこまでの影響は無い。攻撃を再開してから2発目のレーザーが当たった瞬間にスカイペガサスは光となって消え去ったのだ。
残る相手はもう1体のスカイペガサスである。複数相手なら手間取ったが、1体ずつ相手にするならさほど難しいモンスターではない。1体になってから一度も攻撃を被弾せずにもう1体のスカイペガサスも討伐したのであった。
読んでくださりありがとうございます。
モンスターの数がかなり増えていること、そして殺気立った表情をしていることから何か裏があるようですね。ベルウッドは一体何をしたんでしょうか。そして目的は何なのでしょうか。