可愛くない義妹の詳細は語らず
いち
私って物語の悲劇のヒロインみたいじゃない?
両親は子供の頃に私を置いて姿を消した。
父の2つ下の叔父は優しかったが女に騙され5年の労役を課せられ、遠い鉱山にいった。私は7歳、一人で待てる年数でも年齢ではなかった。
叔父が私を次に託したのは、また3つ下の弟である。その叔父は、優しい人であったが金にだらしがなく、何者からか「逃げないとっ」と、ある日叫びながら帰ってきたと思うと急いで私を匿って行方を眩ました。私は12歳、取り敢えず持たされた食糧が無くなってからだと思い、過ごした。
下の叔父の隠れ家で一週間ほど過ぎた頃、頭の軽そうな女が叔父から「手紙を貰ったの」と言って迎えにきてくれた。
叔父の友達は生傷が絶えない人で、何故かと言うと彼氏がヴァイオレンスな人であるからだった。傍で見るには怖く、痛々しかった為に、「孤児院に行きたい」と言った。
私は14歳、女は別れを惜しんでくれたが、男の私を見る目が不快になってきた等とはとても言えず、良心的な衛兵を紹介して家を出た。
次に教会の孤児院を頼った。しかし結果的には孤児院には3ヶ月も居なかった。
バザーに出ているときに、通りかかったお貴族様に「君のような子を探していた」と言って引き取られたからだ。
別れの前の日、院長と牧師様は「新しいお父様に寄付を入れさせろ」という事を回りくどく長々と2時間程説法いただいた。
引き取られた家は、お貴族様ではあったが、どうやらお金はないらしい。
家についた初日に半年年下の義妹に言われたからだ
「ようこそお義姉様。少しの間ですが、仲良くしてくださいな」
「こんなみすぼらしい子供を我が家に入れるなんて…」
「お前…しょうがないだろう。お前がアリーを嫁がせたくないと言うから…」
「当たり前ですっ。田舎の変態爺なんかにこの子を渡せるものですか!まだ14歳なのに、婚約したらすぐ来いなんてっ」
「・・・・・」
どうやら私は養子の申請が通ったら、すぐに婚約する事になるらしい。田舎の変態爺と。
これって人身売買と何が違うの?おーいここに犯罪者がいますよ。
しかし新父の話では、貴族の養子縁組は珍しくないらしく、審査は入るが家に迎え入れ約1年程たったら問題なく婚約婚姻なんかも家の名前で出来るらしい。
私としては家に入った年数じゃなくて、子の年齢に合わせて法を改訂していただきたい。切に。
それから1年と2ヶ月、お貴族様の侍女頭の横の部屋に住み込みで貴族の娘をやることになった。
一通りのマナーは見て盗めと言われるまま侍女として義妹に付き働く日々。淑女達のお茶会で優雅な陰口の叩き方を学び、人の関係図と勢力図を実地で覚え、紳士達の甘過ぎて支離滅裂な口説き文句へのスルースキルを垣間見た。
そして私は、当初の目的通り借金の型として田舎爺のもとに連れていかれることとなり、1つ鞄に私物を詰め、南西にあるミドナムに向かっている。
正直、馬車が休憩で止まったときに逃げ出したいと思ったが、新父が送り届けてくれるらしい。
何というありがた迷惑。
途中で泊った宿屋では新父の従者と御者が交替で出入り口に立っていた。
日中の休憩時も、新父が私から離れず。3人は完璧なフォーメーションを組んで脱走を阻止してきた。
御者から「旦那様、見えて来ました」と車内に声が掛けられた時、私は敗北を悟った。
…………まあ、……いい。
まあ、良いことにしよう。私はまだ15歳。
まだまだこれからも長々と生きていくのだ。その中に1つでも良いことがあると願って生きていくのだ。
今日や明日が、嫌な時であろうと仕方なかったと思うことにしよう。
ため息が出るが、此れは私の人生だ!
車窓から外を見たら、広い丘の上にのっぺりと広がるようなお屋敷が見えた。塀などはない。
お屋敷の向こうには森のように影が深い木々が見えた。
近付いてくるとのっぺりと見えたのは横に広がるの構造だからだと分かる。物見のような塔が無く、横長の長方形の2階建てだ。
正面から見ると、1階から出入りできる箇所が数部屋あるようだ。
その内のいちばん大きな玄関らしい扉の近くまで馬車は向かうらしかった。
次なる住まいへと着いたこの日、私はまだ15歳。明日の朝には16歳になるという日だった。
悲劇のヒロインがでっかい屋敷に着いちゃったぞ?
それこそ新父の家よりも数倍広くて歴史のありそうな屋敷だわ。
新父に続いて馬車を降りた。大切ではない義理の娘はエスコートもされず、ただ5歩後ろを着いていく。
びしっと白髪をオールバックに決めている、執事っぽいおじいさんが、案内してくれたのは、玄関横のでっかい応接間だった。
新父と同じ年代くらいのおじさまが挨拶をしている。
「遠いところをようこそ。ミドナムへ」
「遅くなってしまってすみません。約束通り娘をお願いいたします。さ、ドリー挨拶して」
「……初めまして、閣下。イライム子爵家が長女、カミンドルともうします」
私は深く頭を下げて挨拶をする。
「やあ、これは活発そうなご令嬢だ。私はライオニヤ。一応ライラルドの侯爵領地を任されている。これからよろしく頼むよ」
「……はい。」
どんな目で見られているのか確認するのが怖くて顔が上げれなかった
「あ、あの、それで、お約束の…その」
新父が辿々しくも厚かましく催促するがライオニヤは気にするでもなく執事を呼び手続きさせた。
その上、晩餐に誘ったが新父は急ぐ用事があると言って、すぐに帰っていった。
思い付いたので書き始めてみました