何の肉?
リューサさんは、私の方を向いてニヤッとしてる。給仕のイマさんカリさんも、同じように興味深そうに見て来る。
た、食べなきゃ…、ダメよね…。こ、これ……。
食べないと、この世界で生きて行く気が無いって判断されて、私が、こんな風に食卓に並べられることになるのかも……。
私が食べるかどうか、絶対に試されている!!
……あ、いや、いや、いや、もしかすると!
ヒトのと見せかけておいて、別の肉なのかもしれませんよ。
だって、この鬼さんたち、私を怖がらせるようなことばっかりしてくるからね。
今回も、そう。きっと、そう。
それに、人肉って高級食材だって言ってましたよ。
私なんかに、そんな高級なモノ食べさせてもらえるはず無いじゃない。
うん、大丈夫よ。きっと!
う、ううううううううう~!!
た、食べるぞ~!!
フォークを刺し、ナイフを入れる。
あ、凄く軟らかい。
赤身肉。見た目、牛肉っぽい?
切ったのを目の前に持ってくる。中心部は赤っぽく、ミディアムレア。高級っぽいのが怖い…。
いや、これは、牛肉。
きっと牛肉。
高級な牛肉…。
恐々、口へ入れます。モグモグ咀嚼します。
軟らかい…。
う、これ牛肉の味じゃない……。ちょっと癖がある。
ううう……。
そ、そう、これは羊だよ!
うん、クセがあるから羊。きっとそう。
うう~ん、羊にしては、クセが弱めで軟らか。マトンじゃなくてラムなのね。子羊よ。それも、と~っても高級なヤツ。
二口目。うん、軟らかい。このクセも、嫌な感じじゃないね。
さすが、高級ラム。美味しい、美味しい!
「どう、お味は?」
「は、はい…。最高に…お…美味しい…です」
あ、あれ?
何で私の声、震えてるの…。
美味しいよ、この肉。これ、ラムですよね、高級な。
何のお肉か、訊きたいな。でも、その質問が出来ません。
なんで、その質問が出来ないのかな…。
えっと、「何のお肉ですか?」って、訊くだけのコトですからね。訊いても無作法じゃありませんよね。そんなで怒られたりしないよね。
で、でも……。
訊けない!
まず、全部食べちゃわなきゃね。残す方が無作法ですよ。
うん、美味しいよ。とっても!
こんな美味しいお肉、食べたことない!最高!!
お芋も…、お芋も食べちゃって……。
「あらあら、凄い食べっぷりね。そんなにお腹空いてたかな? お代わり用意しようか?」
「い、いえ!! 結構です、もう満腹です!
有難うございました。とっても、美味しかったです」
「そう、美味しかったの……。良かった」
リューサさんも、イマさんも、カリさんも、ニカッと怪しい笑み…。
こ、これって、やっぱり…、そう言うことなんですかね……。
お、お、お水、お水。
だめ。絶対吐いちゃダメよ。これからリューサさんが何を言っても…。
違うよね。きっと、怖がらせて楽しんでるのよね。
今、食べたのって、羊よね。
絶対そう! 羊と言って!!
「よかったわよ。我が牧場の最高肉を御馳走したからね」
「わ、我が牧場の…最高肉……?」
「そうよ~。潰したての15歳の女の子~。新鮮だから、ミディアムレアでね~。美味しかったわね~」
15歳…私と同年の、女の子……。
私、食べちゃった……。
込み上げてくる吐き気。必死に我慢します。
再度水を飲んで落ち着けます。
そうか…。そうよね……。
やっぱり、そうよね。
食べちゃったよ、私…。
食べちゃった…。人間の肉……。
食事はまだ終わりではありませんでした。デザートが出てきました。
緑色…。抹茶のアイスクリームですね。結構、和風っぽいモノ多いですね。
でも、味なんか分かりませんでした。
多分、とっても美味しかったんだと思いますけど。
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