お肉…
主人であるリューサさんが手を付けるのを待ち、私も食べ始めます。
あら、美味しい! ブロッコリー、甘みがあるよ。野菜本来の味ね。
レタスもシャキシャキ。新鮮!
トマトもスゴイ。濃厚な旨味!
後の野菜は初めて見るモノ。この世界特有のモノかな。でも美味しいよ。
かけられているドレッシングも、爽やかな酸味でよくマッチしてます。
「どう? お味は」
「はい、新鮮で、とっても美味しいです」
「農場での獲れたてだからね。お口に合ったようで、何よりよ」
次に出て来たのは、スープですね。
洋風の食器に入っている、濁った感じの液体。
あ、あれ?
この浮いてる四角く白いの何? 豆腐に見えるけど…。
ワカメみたいなのもあるし、刻んだ葱も……。
「お味噌汁よ。体に良いって、最近流行りなの。
あなたの世界の物でしょう。是非、感想を聞きたいわ」
え、ええ~と、洋風の器とスプーンで、味噌汁ですか…。
これは何とも奇妙な感じですよ。
リューサさんは、私の方をジッと見詰めてきます。先に飲めってことですね。
仕方ありません。スプーンですくって一口…。
う、こ、これ、出汁が効いてないっていうか、入ってない? 単に味噌を溶いただけのような味…。
「どう、どう?」
えええっ……。これ、正直に不味いって言って良いのでしょうか。
それとも、美味しいって言った方が良いかな。どうしよう…。
でも美味しいって言えば、これからも、また同じの出て来ますよね。それは辛いな…。
ここは正直に言うべきですよね……。
「あ、あの…、私の世界のと比較しますと、ちょっと味が足りない気がするんですが…。
お出汁をもう少し濃くした方が、私的には美味しいかと……。
あ、いや、こちらの世界ではこれが普通なんでしたら、全然問題ないんですけどね」
リューサさん、我が意を得たりとばかりに頷きます。
「いや~、そうなのよ。美味しくないのよ、これ。
体に良いって、時々出て来るんだけどね。好きになれないのよね。
何?そのお出汁って。美玖は味噌汁を美味しく作れるの?
だったら、コックに教えてやって欲しいのだけど!」
いや~、良かった。リューサさんも不味いって思ってたんだ。セーフです。
「お味噌汁くらいでしたら簡単です。お手伝いさせて頂きます」
私の居た施設では、皆で一緒に夕ご飯の準備してましたからね。得意ってことでもないですけど、料理くらいは普通に出来ますよ。
それに、お仕事させてもらえるなら、私も安心できます。役立たずは、お肉ちゃん…なんて考えてしまって、不安になるんですよ。
さあ、次の料理は…。メインですかね……。
うっ……。
こ、これって、肉ですよね。分厚く大きなステーキ……。
いや、美味しそうですよ。とっても。見た目は、ね…。
で、でもですねえ…。
えっと……、何の肉なんですかね……。
不安の視線を送りますが、イマさんもカリさんも、そしてリューサさんも、知らん顔して何の説明もしてくれません。
別皿で一緒に出て来たのは、お芋さん?
サツマイモっぽいのが丸々一本。ふかし芋でしょうか。
これは、どうすればよいのかな?
もしかして、パンの代わりかな?
…って、いや、それよりも、肉ですよ肉!
これってば、絶対そうですよね。
だって、自分のところで生産しているんですからね。
普通、それって自分でも食べますよね。
つまるところですね、今私の目の前にあるのは、たぶん、・・・・。
リューサさん、ナイフでお肉を切り、フォークで口へ運びます。そして美味しそうに咀嚼し、ゴックン。
続いて手で芋を取り、一口大に割ってモグモグ食べます。
なるほど、お芋さんは、ああするのか……。
……あ、いや、だからね。そうじゃないんですってば!
このお肉…。私、共食いになっちゃうじゃない!
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