仕事を求めて1
ところで、このお屋敷の鬼さんたちですが、これまでに私が顔を合わせた方々はいずれも住み込みで働いている鬼さんです。そして、一応の序列があります。
トップは当然リューサさんです。これは、当り前。
次席は同列で三人。秘書のイマさんカリさんと、専属医師のナユさんです。
他の鬼さんはこの三人の部下。もしくは、さらにその下という感じです。
一番部下が多いのがナユさんです。住み込みの鬼さんの中では最年長ですからね。
繁殖場の方に通勤の女鬼さんが二人と、臨時手伝いさんが二人。それから、屋敷外での薬局経営もしているそうで、その薬局担当者複数名もナユさんの部下。…リューサさんの薬の販売のお仕事ですね。
更には意外なことにコックのラクッサさんはナユさんの部下で、さらにメイドの二人はラクッサさんの下という位置づけ。
尤もラクッサさん曰く、ナユさんからの指示は殆どなくて全て勝手にやらせてもらっているってことですけどね。あんまり興味ない方面は、権限全委任ってやつですかね…。ナユさんらしい。
イマさんは、牧場と農場の生産部門の統括責任者です。生産部部長って感じですかね。
秘書って肩書ですけど、秘書っぽい仕事はあまりしていません。スケジュール管理はリューサさんが自分でしています。
ですが、部長よりも秘書の方が似合っているなんて、よく分からない理由で「秘書」ということになっています。これはカリさんも同じです。
イマさんの直接の部下は、牧場のキヅミさんと、農場のナルーさんです。その下にそれぞれ、通勤の女鬼さんが複数いるそうです。
カリさんは出荷部門と財務の責任者です。
農場のオッミさんが部下。他に、ニンゲンの出荷作業に当たる臨時出勤の女鬼さんもカリさんの部下です。
さらに、食事・清掃の仕事をナユさんから丸投げされてしまったラクッサさん。本来の上司はナユさんですが、経費面での交渉をカリさんに直接しなければならなくなり、半分カリさんの部下みたくなっています。
この辺りは厳密な縦関係でなく、緩い感じですね。
ということで(どういうことだ?)、お役に立つためには、さてどうしましょうかと放浪中の私…。
取り敢えずは、やっぱり、お料理なんですかね。で、まずはラクッサさんです。
ラクッサさんは、オンオフがハッキリしています。食事を作るのが仕事ですからね。その時間が「オン」。
調理関係以外の仕事は、部下であるメイドの二人に丸投げです。このあたり、上役のナユさんに似ています。ハハハ……。
オフ時間には何もない。ということで、彼女は前からよく私に付き合ってくれます。
人界の料理のことも良く聞かれました。が、それほど料理が得意だったということでもなく、既に話し尽くしてしまって話題がありません。後はそれまでそうだったように、私の妖語の勉強の先生みたいな状態です。
もう妖語はイイかな?とも思いますが、教えてくださるのを断るのもどうかと…。
オンの時間。さあ、ここからが本番だと意気込み、私はラクッサさんを手伝おうとします。
ですが……。
私、正直なところ、彼女ってそんな腕の良いコックだとは思っていませんでした。
ゴメンナサイ。大変失礼ですね。ホントにゴメンナサイ。
…いや、だってですね、可愛らしいアイドルみたいな容姿ですし、あの味噌汁の味……。
だけどですね。それ、間違いでした。
とにかく凄いんですよ。
アクロバット? サーカスか?って感じ…。
可愛いなんてトンデモナイですよ。カッコイイ!!
長い手足でクルックルッ舞う様に動き回り、複数の料理を一気に調理。
オマケに、使った鍋とかの器具も他の料理しながら綺麗に洗って片付けます。
作るのはリューサさんと私の分だけじゃないんです。他の住み込み鬼さんの分も、お昼に関しては通勤の鬼さんの分もありますから、かなりの量ですよ。
それを全く無駄のない動きであっと言う間に作り上げるのですからね。開いた口塞がりませんし、「手伝います」なんて入るスキは微塵もありません。
近づくと彼女の動線を遮断してしまい、かえって邪魔。全く近寄れない。
ですので、彼女を手伝うというのは早々に断念しました。
いや、凄すぎ。超人です。
あ、鬼か…。
じゃあ、「調理の鬼」ですかね。
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