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キヅハの話…

 追い出されるように牧場を後にした私に、付き添ってくれたキヅハちゃんが申し訳なさそうに言いました。


「ごめんなさいね。キヅミさんってば、ぶっきらぼうで…」


 いえいえ、そんな。私の印象では一番鬼さんらしいですよ。


「悪い鬼じゃないんですよ。すっごく優しいの。世話しないなんてウソウソ。いっつも誰か病気になっていないか、ニンゲン間のトラブルは無いか、気にしてるのよ」


 あら、意外です。


「優しすぎるのよね。だから、その後のことを考えるとね。特定の子と親しくしちゃうと辛くなるの。だから、ニンゲンにはわざとあんなツッケンドンな態度をとるのよ」


 あ~あ、そう言うことですか…。なんだ、鬼さんって、やっぱり、とっても優しい……。


 その後、キヅハちゃんが詳しく補足説明してくれました。彼女っておっとりして見えますが、かなり頭の良い切れ者みたいです。


 で、以下、その詳細です。

 牧場の女の子たちは、広大な敷地で12の集落に分かれて暮らしています。

 食肉に適す年齢に達するまで育てるには時間も手間もかりますし、食事代も…。

他の牧場では成長促進剤と高カロリーな飼料を大量に与えて年数短縮し、劣悪な環境に詰め込んで、無理やり増産しているってことが多いようです。

 ですが、リューサ牧場ではそんなことはしません。食料は人間たちに自給させ、のびのび生活させているのです。これは、広大な土地があればこそのことですね。

 食料を人間が自分で作っているのですから食料費が掛かりませんし、余剰食料は他へ売ることも出来ます。(足りなければ農場から補填だそうです)

また、働いているのですから健康で美味しい肉になります。結果、天然に近い高級品として高値で売れるのです。

 飼われている人間たちにしても、豚小屋のような汚いところでムリヤリ成長させられるだけではありませんから、幸せでしょう。その後の運命を無視すれば……ですけど。



 これら飼われている人間たちの首輪には発信機が内蔵(私のも、だよね……)されて、逃げ出さない様に管理されています。

まあ、外にウヨウヨしている河童の恐怖を知っていますので、逃げ出すことはないそうです。中に居れば、食べ物にも困らず安全に生活できるのです。


 リューサ牧場・農場の人間たちが話している言語は、私と同じ日本語です。ここでは「人語」と呼ばれています。この世界の言葉が「妖語」です。

 基本的に妖語は人間には教えません。人間には人語で話しかけます。

これは、あまり妖語を教え込むと不都合があるからですね。自分たちの運命を知られて反乱・逃亡されても困りますから…。

 この点でも、私は完全に特別扱いですね。



 部屋に戻り…。もう一度、整理してみます。

 赤首輪のままであれば、私は一ヶ月もしないうちにセックスさせられ、妊娠して三つ子を出産。以後、毎年四つ子か五つ子を出産させられ、30歳くらいまでは生きられますが、それで力尽きて出産時に死亡。私の遺体はお肉ちゃんとして、ここの鬼さんたちの食卓に……。

 う、ううう~ん、これは、嫌ですよね。

 但し、私の場合は通常とは違い、もう少し良い待遇になりそうです。あ、これは、あくまでそういう可能性が高いということでありまして、希望的観測かもしれません……。


 次。赤首輪が嫌だと言えば、リューサさんはニッコリ笑って白首輪に変えてくれるでしょう。そうなれば、今の私は出荷適齢期です。即座に殺され、解体・出荷です。

 殺され解体されるって、どんなかな。昨日の恐怖体験みたいな感じでしょうか?

 痛いのは嫌ですよ。昨日みたいに痛みを無くす薬って投与されますかね?

 鬼さんって結構優しいから、そんな気遣いはしてくれるかもしれません。

 ……でも、やっぱり殺されるのは嫌だよ~!!


 「知らぬが花」なんて言葉があります。知らない方が幸せな事ってあるんですね。

気付かないうちにサックリ殺してもらえるなら、それはそれで幸せかもしれません。

 でも、私は知ってしまったのです。ある意味、これ、とっても残酷です!


 そして、ここまで知ってしまった以上、やはり、中途半端ではいけませんよね。

あと一つ、見ておくようにナユさんから言われた場所。そこも見る決心をしました。



 早速イマさんカリさんを探し、この決心を伝えました。

話しかけると、最初二人は嬉しそうな顔をしていましたよ。今朝から無視してましたからね。

 でも、すぐにスゴイ困惑顔です。


「美玖、本気か? 私の仕事はニンゲンをバラスことだぞ。美玖には、あまり、見せたくない」

「そうだぞ、美玖。お前の見る様なモノじゃない。とっても残酷だぞ」


「いえ。大丈夫です。見たからといってイマさんたちを軽蔑したり嫌ったりしません。私が覚悟を決めるためなんです。私は、この世界の人間が知らないことを知ってしまいました。中途半端って良くないと思うんですよね。こうなったら、全部を知りたいです。ぜひ、見せてください」


 二人は困った顔のまま見合います。

 屠殺は毎日ある訳ではありません。いくら広大な牧場といっても、そんなにたくさんの飼育は出来ません。たいてい月に六人程度。これでもかなりの頻度なんだそうです。

 次の予定日は明日。ちょうど二人処理するとか。私は、この二人の現場に立ち会わせてもらうことにしました。


お読み頂きありがとうございます。

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「美玖、負けるな!」「美玖、ガンバレ!」とお感じ頂けましたら、評価・感想・いいね、お願い致します。

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