付き合ってる通り越して、もはや夫婦じゃん!って言う会話をする、付き合ってない、いとこの話
「総司、もう8:10分よ。起きなさい。」
その声で俺は飛び起きた。
「8:10分!?やばっ、遅刻じゃん!!
ってまだ7:30じゃねえか。全く、ビビらせんなよ、葵。」
遅刻かと思って焦った俺は、時計を見て少し安心し、嘘をついて俺を起こした極悪人の葵を見る。
「こうでもしないとあなた起きないじゃない。それにまだ7:30て言うけど、朝ご飯食べて家出るには少し遅いぐらいよ。」
もっともな正論を言う葵。
「いや、俺は朝飯いらないタイプっていつも言ってるじゃん。」
「朝ご飯は食べるべきだといつも言ってると思いますけど?」
ささやかな抵抗も秒殺される。このまま逆らうと、朝ご飯を食べる理由を延々と説明されるのである。
「はい、すいません。」
「どうせすぐ謝るんだから無駄な抵抗するんじゃないわよ、まったく。」
「はい、おっしゃる通りでございます。」
「もういいから、早く朝ご飯食べて、学校いくよ。」
「了解。」
朝のくだらない会話を終わらせる。
その後、朝ご飯を食べた俺たちは一緒に学校に向かうのだった。
「はーい、それじゃ調理実習始めるよー。」
今日の家庭科は調理実習の日だ。
ふむふむ、今日作るのはカレーか。まあ、料理初心者が多くいるであろう調理実習でするには妥当なところか。
まあ普段から料理している身としては楽勝だな。
それに、葵も一緒の班だしな。
「総司ー、包丁ってこう持つんだっけ?」
…前言撤回。やばそうなのいるわ。
「んなわけねーだろ。なんだ?お前は人を刺したいのか?ドラマでしか見たことねーわ、そんな持ち方。こうだよ、こう!」
恐ろしい持ち方をしていた班員の男子に教えてやっていると、
「あはは、たしかにちょっと不安だよね。私も料理なんてほとんどしないし。葵ちゃんと総司くんは一緒に暮らしてるんだよね?いつもどっちが料理してるの?」
もう一人の班員の女子から質問が飛ぶ。
「んー、どっちもかな。総司は朝弱いから朝ご飯は私が作ることが多いけど、それ以外は大体一緒に作ってる。」
それに葵が答えると、
『えっ?一緒に料理してるの(か)!?』
二人から何故か驚かれる。
「え、うん、そうだけど?それがどうかした?」
俺がそう返すと、
「え、二人は別に付き合ってるわけじゃないんだよね?」
困惑気味に質問される。
「そうだよ?」
「ええ、そうね。」
その質問に当たり前のようにそう答えると、
「普通付き合ってなかったら毎日一緒に料理したりしないと思うんだけど。」
そんなことを言われる。
「や、二人でした方が作業が早く進むじゃん。」
「二人でやった方が楽じゃない。」
俺と葵が揃ってそう返すと、
「いや、そう言うことじゃないんだけど…」
「マジかよ、お前らやべーな。」
何故か二人から若干呆れられてしまった。解せぬ。
そんな話をしながら調理を進めていく。
「あ、そういえば、葵。今日の夕飯どうする?」
じゃがいもを切りながら葵に話しかける。
「んー、そうね。夏だけど鍋にするのはどうかしら?」
鍋か。鍋なー。
「夏に食べる鍋もまた悪くないよなー。でも最近、野菜高いからなー、食材切ってぶち込むだけだから作るのは簡単なんだけど。」
野菜が高いのはほんと困る。
「あー、たしかにそうね。まあ、いつも通りスーパー行ってから考えましょうか。」
「だな!ってお前らどうした?」
夕飯の相談をしていると、班の二人がコソコソ喋っている。
(これで付き合ってないって嘘だろ!)
(ねー。付き合うどころか夫婦の会話だったよ。)
(それな。)
(まあ、でもこの二人尊いからそっとしておくか。)
(分かる!なんかお互い信頼しあってるって言うか、なんて言えばいいか分かんないけどいいよね!)
(ああ。)
『いや、なんでもないよ(ぜ)。』
二人がそう返してくる。
「それならいいけど。」
何故か微笑ましいものを見るような目線を感じながら、調理を続けるのだった。
ちなみにカレーはとても美味しくできました。