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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

立てば爆発、座ればドカン、歩くだけでも大迷惑

作者: 二ノ宮

 ドゴォォオオォオオオオオ!!!


 それは、激しい爆発だった。この草原に空気を切り裂く激しい衝撃を生み出す。無論、ただの爆発ではない。スキルを「爆弾」に極振りした俺の起こす爆破は並みのものではない。


「くらえやぁ!」


 懐から取り出した“ハイパーボム”はゲーム序盤である今、決して作れていいものではない。飛びかかってくる黒狼ブラックウルフは3体。その群れの中心にハイパーボムを投げ入れると激しい爆発と共に「127」「122」「134」とそのダメージが頭上に現れる。

 もちろん一撃。しかもオーバーキル。ぶっちゃけSTRに全部スキルを振るよりダメージが出ていた。


「ぐわぁああ!」


 後ろで爆発と叫び声聞こえた。多分俺の仕掛けた地雷のせいだろう。あ、PK表示が出た。スマン……。でも爆弾一発で死ぬお前が悪いんだ……。


「てめぇ! 俺の仲間を!」

「なんで分かったんだ?!」

「ぐわあああ!!」


 また地雷で吹き飛んだ。仲間のカタキを撃つべく飛びかかってきた一人のプレイヤーは街まで戻されてしまう。なにしてんだ……。

 呆れながらぼけっとしていると、PK経験値がピピピッと音を立てて加算される。


「もうレベル13だよ……」


 6時間前に始めてログインしたばかりだというのに既に平均値を優に超えるであろうレベルに到達している。PKするつもりはないのだが、周りの奴らが勝手に俺の地雷を踏み抜いていくのだから仕方がない。俺は悪くない。

 しかしながらPKされるプレイヤーを見るというのも心苦しいのでもう少し奥の方の森で戦闘することにした。


 5分ほど歩くと、そこまでまだ人が多くない森にたどり着く。ここにいるやつは上手いか、何らかの手段を使って俺くらいのレベルの奴かの二択だ。


「よし、《地雷ランドマイン》」


 まずは敵MOBに見つからないように逃げながら周囲に数個の地雷を設置。そして、えーっと、あ、いたいた。

 近くにいた適当なモンスター。あれは「ボーンサーペント」か。骨の蛇みたいだな。

 そいつに向かって“ミニボム”を一個投げつける。ドカンッという小爆発と共にダメージを与え、ボーンサーペントのヘイトを取った。

 スルスルと動くその骨は飛びかかってきたかと思うと、ドォンと爆発を起こす。地雷を踏んだのだ。一撃で骨をバラバラにし、その衝撃音で周囲のモンスターのヘイトもこちらに向いた。


 ドォンドォンドォン!!


「うわぁ、すげぇ」


 周囲から飛びかかってくるモンスターが次々に自殺していく。俺は地雷原の中心で体育座りして周りを眺めているだけで良い。いったいこんなスキル考えた奴は誰なんだ……。


「ぐわああ!」


 そしてたまにプレイヤーも吹き飛ぶ。かわいそうに……。「爆発には近づいちゃいけません」ってお母さんに教えられなかったのかな……。


 そんなことをしていると「ピコン」と通知音が鳴った。


『兄くーん。そろそろお昼食べよーよ』

『はいよー』


 妹のシノが呼んでいた。もうそんな時間か。

 周囲に敵MOBがいないことを確認。空中を薬指でスライドするとコマンドが表示される。そこからログアウトボタンを押下すると意識が少しずつ遠のいていき、気がついたときにはVRベッドの上にいた。


「体が全然痛くない……。やっぱ最新のやつはすげぇな」


 最新のハードウェアはベッドまで一体型のVR機器。従来のものよりもヘビーユーザーにとって親切な設計になっていた。

 6時間前にサービスが開始した「Ultimate Skill Online」。現在のプレイヤー数は12万を越え、最近のVRMMORPGでは一番の盛り上がりを見せていた。アホみたいに多いスキルから5つを選択し、自分のものに出来るシステム。それにより他人とプレイスタイルが被りづらいというのがユニークスキル感があって良かったのだろう。


「さてと、姉を起こしに行かないと」


 12:13を指すデジタル時計を確認し、姉を起こすことにした。多分妹は一階で昼飯を作ってるだろうから、こっちは兄の役目だ。


「ねーさん入るぞー」


 ノックもせずに姉の部屋に侵入。小奇麗に並べられたインテリアはいつもの通りキッチリとした印象を与える。


「さて、それでは」


 俺は水の入ったペットボトルの蓋を開ける。飲む? いや違う違う。


「おじょぼぼぼぼ!」


 健やかで綺麗な寝顔をしている姉の顔にぶっかけた。溺れそうになっているけど関係ないね。これが一番いい起こし方なのだ。


「すぴー」

「水にも耐性がついてきたな……」


 姉さんは死ぬほど寝起きが悪い。なのであの手この手を使って起こす方法をこれまでに考えて来た。

 全部脱がす、水ぶっかける、鼻に洗濯バサミ、腹を踏む(ゲロったので一回しかやっていない)、粗挽きコショウを口内にブチ込むなどいろいろ試した。


「しょうがない、担いでいこう」

「ぽえ~」

「おもっ……!」


 コイツ、見た目に反して重い……。身長150くらいしかないくせに……。

 階段を下りて一階へ行くとシノ……もとい四野実がいた。


「あ、兄くんお姉ちゃん起こしたんだね」

「起きてるように見えるか?」

「ぐーすかんぴん」

「貧乏みたいな寝息立ててやがるぞ……」

「ハッ!」


 姉さんはカッと目を見開いた。1秒前まで寝ていたというのが嘘かのようにキリッとした目になる。


「ご飯ですか!」

「そうだよ」


 結局いろいろ試したが飯の匂いを嗅がせるのが一番効果がある。食い意地のきたな……食欲旺盛な姉さんはもうすでにガツガツとご飯をかきこんでいた。

 あの整った顔でアホみたいに食う姿は何故か学校では人気なのだ。


「兄くんはなんレベルになった?」


 エプロンをつけた四野実が味噌汁をもりながらUSO(ゲーム名の略)の話題を振ってきた。


「15だよ」

「え……チーター……?」

「アホかよ。んなわけないだろ」


 四野実も席について「いただきます」というと、また今度はスキルの話題になった。


「私は“STR”、“DEF”、“大剣”、“踊り”、“強化”の5つだよ」

「ガチガチの前衛系って感じだな」

「兄くんは?」

「“爆弾”、“隠密”、“DEX”、“AGI”、“錬金”。ちなみにここまでスキルポイントは爆弾にしか振ってない」

「えぇ……なにそれ……。んじゃぁあの草原で起きてた草原爆発事故って兄くんのせいなのかな?」

「爆発事故?」

「うん。確か30人くらいが地雷を踏んで吹っ飛んだんだよね。そこで彼女と一緒にプレイしてたユーザーが地雷と一緒に彼女の地雷を踏んで振られたからその周辺は曰くつきの土地になっているっていうね」

「どこでそんな情報見れるんだよ……」

「USOのまとめスレとかSNSかな」

「はぇ~」


 ずずっとわかめの味噌汁を飲んで体を温める。まとめスレか、そういえばそんなのもあったな。サービス開始前に既に第89スレまで行ったんだっけ……。


「え、もしかしてつまり俺話題になってる?」

「うん。少しね。“勝手に地面が爆発するバグ“っていうスレも立ってるし」

「えぇ……」


 まぁ……目立つのは仕方ないか……。あの爆発結構派手だしな……。


「それで、午後は一緒にやるんだよね?」

「そうだな」


 妹とは午前は別行動、慣れてきた午後は一緒にやろうという話になっていた。飯を食べ終わるとすぐにまた部屋に戻ってログインを開始。


 先ほどいたフィールドエリアにスポーンする。周囲に敵は……いないか。

 あ? 16レベル? 1レベル上がってるんだけど。もしかしてこれログアウトしても地雷が消えるわけじゃないのか。


 ともかく俺は一旦街エリアに戻るために転移石で帰還。妹を広場の噴水前で待つ事にする。すると周囲が何やらざわつき始めた。


「あれが爆弾魔か……?」「え!? 近づくと他人の地雷を踏みやすくなるっていう……?」「あぁ……近づいたやつは一生彼氏彼女ができないらしいぞ」


 話に尾ひれつきすぎだろ。ウナギかよ。いやあれは長いだけで尾ひれではないか。


「おーい、兄く~……じゃないクロ~」

「シノか、おせぇわ」


 シノが手を振りながらこちらに来る。このゲームはキャラメイクが存在しないため、すぐに分かった。リアル顔バレするが、今の時代そんなことを気にする奴はあまりいない。ちなみに仕組みは分からないが声も同じである。


「ログインしてから1分くらいしか経ってないでしょ……」

「そんで姉さんは」

「いまログインするんじゃないかな……いや、あれじゃない?」


 青いローブを着たシノが指差すと、噴水の反対側に初期装備の女が立っていた。姉さんだわ。なんかナンパされてるんだけど……?


「はい。はい。いえ、私は別の用事がありますので」

「いーじゃん。俺たちならレクチャーできるからさ、一緒にやろうぜ」


 うわぁ。どこにでもあんなのはいるんだなぁ。


「ルシア~」

「あ、クロくんとシノちゃんではありませんか」

「ではありませんかじゃないわ。ほら、行くぞ」

「おい待てよ」


 姉をナンパしていた2人組の片方の革の鎧を着た男が腕を握ってきた。明らかに喧嘩腰である。


「なんすか」

「その人には俺らが先に声かけたの。邪魔しないでくれる?」

「うーん。あ、そうだ」


 俺はくるりと踵を返して、ルシアの手を引いて走り出す。街の入口まで一直線。


「おい待てやぁ!」

「なんのつもりだコラ!」

「あぁん、クロ~待って~」


 シノを置いてきてしまった。まぁいいや。俺は後ろを振り返る。


「はっはーんアホが! 俺のレベルは16だぞ! てめぇらの雑魚AGIで追いつくわけねぇだろがバカ野郎が。やっぱナンパするやつは頭も悪いんだろうなぁ。かわいそーー!!」

「なんだとてめぇ!!」


 一層怒りを増した男は俺を追ってくる。わざと少しスピードを落としてフィールドエリアに出ると、直後、すぐ街の塀沿いに右側に回った。


「よし」


 壁際。完全に追い詰められた。状況的には。


「馬鹿にしやがって。許さねぇぞコラ」

「あぁん、はいはい帰っていいぞ」


 壁に寄りかかって、手をプラプラと振り、挑発的な態度を取る。


「なんだとてめぇ!」


 殴りかかってくる男。そしてその拳が俺の目の前に来たとき。


「ぬわーーっ!」

「たーまやー!」


 ログアウト前に仕掛けておいた地雷を踏み抜いた。見事に吹き飛び、デスペナを置いて強制送還。


「お、お前……! あの爆弾魔……?」

「いや、わからん。あとその後ろ地雷あるぞ」

「ひっ!」


 男が反射的に前に飛び退く。


 ドォォォオオン!


「かーぎやー!」


 脅しを利用して踏ませた。あぁ無常……。地雷はこちらから攻撃できない代わりにレベル差があれば一撃で吹き飛ばせるので強い。


「さ、ルシア、シノんとこに戻るぞ」

「はぁい♪」


 街へ再び戻る。歩いていると周囲では俺を奇異の目で見る奴がチラホラいるので何かちょっと変な気分になる。とっとと装備変えようかな……。


「シノ~、行くぞ~」

「はぁ、もうどこ行ってたの? あの男の人達は?」

「二度と彼女ができない体にしてやった」

「……? ホモ……?」

「違うわ」


 噴水広場を後にしようとすると、目の前に別のプレイヤーが立ちふさがった。フードを被った女だった。なんでこんなに絡まれるの……?


「キミがクロくんだよね、ちょっといいかな?」


 ニコリと笑ったその女性はこちらを知っているようだった。そして何故かシノが固まっている。


「そうっすけど……。どうしたシノ」

「え、あ、クロ……! この人のこと知らないの……?」

「全然」


 顔も見たことがない……わけじゃない気がしてきた。なんかどこかで見たことあるような……。動画サイトだったかな。


「僕はコトリだよ。Youtuberの。知らないかな?」

「あー、聞いたことはあるかな」


 多分。知らんけど。


「登録者数80万人じゃまだそんなに有名じゃないかぁ。それでさ、僕とパーティ組まない?」

「でも俺に近づくと彼氏出来なくなるらしいよ」

「いや迷信でしょ……」

「あ、あのあの、コトリさん、いつも見てます……! 応援してます……! この前の動画も大変面白く今後も頑張って頂ければなにとぞご幸甚に存じ上げるとともに……」


 シノが限界オタク並の早口で喋りながらコトリさんにペコペコ頭を下げている。あー、なんか聞いたことあったのはシノがたまに名前を出すからだわ。


「んー? キミは、シノちゃんね。よろしくね」

「あ、はは、は、はい!」

「まだよろしくしてないんだけど……。まぁいいか。ルシアもいいだろ?」

「はい。私は現在ログインしたばかりで何もわかりませんのでそちらに合わせますよ」


 ということでパーティを組むことになった。

 そして周囲はなんか更にざわつき始めた。「嘘だろ……あのコトリさんと……」「すげぇ……なんだあいつ……」「ほら、あの爆弾魔だよ……」「しかもその横に居る女の子すげぇ美人じゃね!?」「レベル1だし、俺声かけてこようかな……」「やめとけよ、彼女できなくなるぞ」


 その彼女できなくなる呪いはなんなんだ……? いや、まぁいい。


「よし、とりあえずルシアのレベル上げをしよう。フィールドにれっつごー」

「わかりました」

「おっけー」

「あわわわわわ」


 コトリさんとパーティを組んだ事実がまだ受け入れられていないような顔をしているシノだった。しかし外に出ると活躍はするもので。


「《月薙ムーン・ブレード》!」


 大きな両手剣を回転させながら、切り株型のモンスター「キリモン」に斬撃を加える。STRに多めに振っているらしく、そのダメージは58と高い。


「ふふっ♪」


 そしてシノの視界の外から迫る黒狼ブラックウルフを、ルシアは鎖分銅で捉えた。ぎりぎりと締め上げ、抜け出せなくなったそいつに、コトリさんが遠距離から弓を撃ち込む。


「おーすごい連携」

「コ、コトリさんの弓はやっぱり強いですねぐへへへ」

「そうだね。ありがと」


 狩りながら分かったのだが、コトリさんは弓道をやっている人だそうだ。全国レベルの腕前で、顔が良く、ゲームをよくプレイする女子高生ということで動画投稿者として有名となったらしい。

 そして5分くらい狩ったところで。


「クロ……何もしてなくない……?」

「バレました?」


 俺はここまで一度も攻撃していない。だからといって、なんとなくサボっていたとかそういうわけでもない。


「僕もその爆弾見たいなぁ」

「まぁ隠すもんでもないしな」


 懐からハイパーボムを一個取り出す。そしてそれを近くにいたキリモンに投げつけた。ドォォン! と爆発音と共に一撃で吹き飛ばす。


「えぇ……」

「すごい破壊力ですね」

「爆風に巻き込まれるだろうから攻撃してなかっただけだよ。ほっ」


 また一個取り出して投げる。着弾の瞬間に爆発するので少しくらい狙いがズレても爆風で倒せる。


「キミの爆弾は危険だな……」


 そこに表示される100を超えるダメージに3人は驚愕していた。というかぶっちゃけ言えば元々俺は気づいていた。


 これ、パーティプレイできないな。


 ということに。爆発はパーティメンバーさえも巻き込む。地雷も正確な位置を覚えてもらうのは無理があるだろう。ついでに俺と組むと彼女ができなくなる。

 複数人いればヘイトも分散し、複数体を爆弾ひとつで仕留めきれなくなる。単純に一人の方が楽なのだ。


「こういうわけだから、俺は一人の方が……」

「うーん。じゃあボス行こっか!」

「……え?」





「なんでサービス開始して一日も立たないのにボスのダンジョンを知ってるんだ?」

「ほら、僕はファンがいるから、その人たちが教えてくれるんだ」

「なるほど。MMOで知り合いの多さは強いな」

「私まだ4レベルなんですけれど」

「大丈夫じゃね。死んだらその時だわ」


 とは言ってもルシアはとんでもないプレイヤースキルを持っている。他のVRMMOでもムチや鎖鎌などのピーキーな武器を好んで使用し、誰よりも上手く扱っていた。正直爆弾が使用できないという条件なら、1対1で戦えば負けるだろう。このレベル差があっても、だ。


「さて、準備はいいかな?」

「準備してきてないけどな」

「はは、それもそうだね。じゃ行こうか」


 ボス部屋の重い扉開ける。周りにプレイヤーは誰ひとりとしていない。恐らく俺たちが初挑戦のはずだ。

 暗い部屋の中に4人が入ると後方でガチャンと扉が閉まる。同時にぼうぼうと音を立て、部屋を取り囲む蝋燭に次々と灯りが灯っていく。

 視界が明るくなると、その奥に斧を装備した牛頭、二足歩行の巨大なモンスターが確認できた。


 !WORNING!


 黄色いフォントと共にボスである証が表示される。


「グォォォオオオ!!」


 牛頭のモンスターの雄叫びとともに、ボスの名前がその頭上に表示される。奴の名前は“ルイン・アズバジルザ・ミノタウロス“というらしい。

 そして取り巻きとして、周囲に数体の赤狼レッドウルフが出現する。未知のモンスターに心が躍る。俺は懐から爆弾を取り出す。


 取り出す?


「あ、やっべ」


 ハイパーボムが切れた。あれは街で素材を買って作るものだ。スキルではない。アイテムである。つまりあの高火力の爆発は使えないのである。


「スマン。爆弾ないわ」

「えぇ?! 何してんのクロ?!」

「ま、やるだけやろうか。僕は周りを倒すから、三人はボスを!」


 そう言って距離をとり、取り巻きの赤狼レッドウルフたちに射撃。ひとりでヘイトを回収してくれる。


「よし、こっちも行くぞ!」

「素手じゃん……」

「頑張るしかありませんねぇ」


 3人でミノタウロスの前に出る。と、俺は踵を返し逃走!


「《地雷ランドマイン》」「《地雷ランドマイン》」「《地雷ランドマイン》」「《地雷ランドマイン》」「《地雷ランドマイン》」


 とりあえずそこらに地雷を散布する。


「グォォォオオ!」


 ミノタウロスは雄叫びを上げると最初にルシアに斬りかかった。それに合わせヒュンっと鎖分道を投げ、斧に絡ませる。それをわざと下に引き、振り下ろしを早くした。すると、斧が岩を砕き地面に突き刺さる。


「やぁっ!」


 その隙をシノが突く。ミノタウロスが斧を持っていた右手に斬撃を加えた。


「はぁっ!」


 俺も殴ってみる。ダメージ! 3! うん、ダメだな!

 再び大きく距離を取るために逃走。俺は地雷でしか使い物にならん……頑張ってくれ……。


 ドゴォンッ!


「お」


 適当に仕掛けておいた地雷を見ていたのか、コトリさんはそこに誘導するように戦っていた。赤狼(レッドウルフ)が地雷を踏むと爆発し、吹き飛んでいく。

 あぁいうことが上手い人がいればパーティを組んでもいいのだろうか。いやでも俺のメイン火力別に地雷じゃなくて爆弾だしなぁ。


 そう思いながらMPがなくなるまで地雷を仕掛け続けた。

 と、つまりはMPが切れたらやることがなくなる。さて……殴るか!


 鎖分銅が絡んだ腕を振り回され、動きが制限されたミノタウロスだが、ボスはボスである。残った腕を振り払うと、シノが大きくノックバックを受けた。頭上のHPバーが大きく削れる。


「あ、ポーションあるわ」


 ピンク色の瓶をコマンドのアイテム欄から取り出すと、それをシノの方に投げる。すると、HPバーがゆっくりと回復。シノのHPが再び満タンになる。


「クロ、ありがとう!」

「ヒーラーならできるか……あ、いやポーションも残り2つしかないわ」


 ミノタウロスは鎖分銅を巻かれた腕を思い切り振り回す。すると、それを持っていたルシアが危機を察知してその手を離してしまった。


「まぁ。どうしましょう♪」

「ニコニコしながら言うんじゃねぇ……」


 まずい状況になったが姉はいつものニヤケ面を崩さない。

 これ火力が足りないんじゃないか? 赤狼レッドウルフは継続的にポップし続けるし、こちらを助けることはできないだろう。

 相手の残りのHPは800もある。そもそもルシアはレベルが足りないし、火力ではないし、シノだけでは削りきれないだろうし。やっぱり挑むの早すぎたって~。


「って嘘ぉおお!」


 姉が持って行かれた鎖分銅が頭をかすめた。あれが取られたせいで、あいつが腕を振り回すだけである程度のリーチのある攻撃が発生する。斧と鎖分銅の攻撃を前に回避することしかできない。


 ……いや、違うな。回避だけでいいのか。そうだわ。


「っしゃおらぁ!」


 近づいて一発殴る。同時にすぐに逃げる。だがヘイトは取った。


「こっち来いやぁ!」


 逃げる俺に突進をしようと低い姿勢になったミノタウロス。そして、肩をいからせて真っ直ぐにこちらに走ってきた。ドスンドスンと音を立てて猛進してくる様子は高速道路を走る2tトラックがこちらに迫っているかのような感覚だった。

 だが、その突進は俺には届かない。


 ドドドドドドドドゴォォォ!!


「っしゃぁ踏んだな!」


 実はあの地雷。重ねて仕掛けることができるのだ。同じ場所に重ねがけし、その一箇所を踏ませるだけで大ダメージを与える。更にその衝撃で大きく上に吹き飛び、背中から落下することで追加ダメージを与えることができる。


「さようならー!」


 背中から石畳に打ち付けられたミノタウロスはHPバーを0にして、光となって消えていった。


 !Victory!


 空中にクリア表示がされる。やっぱこのスキル強いわ……。レベルも上がったし、スキル全部振ろう……。そしてこれからも愛用していくことにしよう……。

 そう思ってスキルポイントを全て爆弾にブチ込む。


『新たなスキルを習得しました』


 メッセージウインドウとともに、そこに新たなスキル名が表示された。


 ドォン!


「え? 何?」


 横に表示されたメッセージウインドウを確認するためにそちらを向くと足元が爆発した。俺はハッとしてそのスキルを確認する。


『新スキル:立てば爆発、座ればドカン

効果:歩いたり座ったりするたびに爆発が発生する』


「……いらねぇわ!!」


 アホか。何がこれからも愛用していこうだ。いらんいらん!


 ボスを倒して次の街に行くと、スキル変更ができたのでさっさと爆弾スキルを捨てた。


 そして、一瞬だけスレで有名になった俺も、だんだんとその話題が消えていった。その後、足元が爆発するのはクソすぎると言って爆弾スキルも下方修正(?)が入り、誰も使わないマイナースキルとなった。


 しかし、俺の埋めた地雷はきっとまだどこかに埋まっている。どこに仕掛けたのかなんか覚えていない、そいつを踏んだ奴が彼女や彼氏が出来なくならないように祈ることしか俺にはできない。


 それ以降も、初期の街周辺でたまに地面が勝手に爆発するバグが報告されるのだが、俺のせいなのだろうか。


「ぐわぁあ!」


 そしてその地雷も最後の一個が踏まれた。踏んだのは俺だった。


「彼女、できるかなぁ……」

「何言ってるのー?」


 振り返ると、コトリがいた。


「クロの彼女は僕でしょ」

「そうだな……」


 立ち上がり、草原を見つめる。彼女と長く一緒にいられるように、彼女の地雷は踏まないようにしないとな。


続かない短編。


もし、あなたがなろう小説をたくさん読む方でしたら、よろしければ以下の基準で評価の方をお願いします。


ストーリー、文章共に平均より良い→☆5

ストーリー、文章いずれかが平均より良い→☆4

ストーリー、文章いずれも平均的である→☆3

ストーリー、文章いずれかが平均より悪い→☆2

ストーリー、文章共に平均より悪い→☆1


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