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時戻りの二人の友情と隠された恋心 -04-

「私、カフェテリアって、初めてです」


 アケーシャはそわそわと周りを見回す。三度の人生で一度も訪れたことのなかったカフェテリアに、興味津々だ。今までに見たことも食べたこともないメニューにも驚きを隠せない。


 それ以上に、周りに生徒たちもアケーシャの登場に驚いているのだけれど。


 アケーシャとミモザは今、一緒にカフェテリアで昼食を取ろうとしている。アケーシャにお願いをして、価格設定の低いカフェテリアだ。


「え? 本当ですか? ここのカフェテリアが、ってことじゃなくて?」

「はい、いつも公爵家の料理人が作ったものを食べていました」


 この学園には、カフェテリアの他に、選ばれた貴族にしか使用できないサロンがある。

 アケーシャはそこでいつも昼食を食べ、余った時間は勉強に費やしていた。


「わたしなんて毎日のように来ていますよ。そっかあ、せっかくなら、もっと豪華な料理が出るカフェテリアにすれば良かったですね」


 気が利かなくてごめんなさい、と謝るミモザに、アケーシャは幸せそうに笑った。


「私は嬉しいです。食べることが好きなので、知らない料理を食べられると思うとわくわくします! 実は王都の街の屋台にもとても興味があって、一度食べてみたいと思っていましたから」

「本当ですか! 今度一緒にいきましょうよ。わたし案内しますよ」




 それからの二人は急速に仲を深めた。

 人生をやり直している、という特異な経験をしている二人が仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。


 周囲の生徒たちからは「どうしてこのお二人が一緒にいるの? どういうご関係なの?」と噂され、遠目から様子を伺っている者もいた。


 中には、ミモザではなく、直接アケーシャに聞いた者もいた。



「アケーシャ様、あの男爵令嬢のミモザ様とは、どの様なご関係なのですか?」


 今日もまた、ミモザと昼食を共にする約束をしていたため、カフェテリアで待ち合わせをしていた時のことだ。


 周りの視線が、一気にアケーシャに集まる。


(友達、よね? 初めての私のお友達。ふふ、とても嬉しいわ。……だけど、どうしてかしら? 口に出すのがとても恥ずかしいわ。でも、早く答えなきゃ!!)


「私たちは、お、お友達ですぅ……」


 ただ友達だと答えるだけなのに、まるで初めて恋人を紹介する時のように、顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに、呟くことしかできなかった。


 運良くその場に遭遇した者はみな、男女問わず驚きの声を上げた。


「えっ、氷の姫に、表情が?」

「氷の姫が可愛すぎる!!」

「無理、悶絶しそう」

「俺も、お友達認定されたい」

「俺は、下僕でもいい」


 一瞬にして周囲は騒めいた。その日のうちに、非公認ファンクラブが出来上がったという噂で持ちきりだった。


 アケーシャはミモザと共にすることで、少しずつ、周囲の生徒たちとも仲を深めるようになっていた。




 しかし、その状況が面白くないのは、ダニエルだった。


「ミモザ嬢、どうして話を聞いてくれないんだ!?」


 今日もまた、ミモザはダニエルに捕まっていた。思うようにいかないことで、ダニエルには少しずつ焦りが出始めていた。


 今もカフェテリアに向かう途中の廊下で、人目も憚らず、一方的に話し始めたのだから。


「アケーシャ様という婚約者がいらっしゃるのに、あまりわたしに構わないでください。あらぬ誤解が生まれてしまいます」

「だが、俺はミモザ嬢と話したいんだ」

「わたしなんかより、もっとアケーシャ様を見てあげてください。とても可愛らしく笑うんですよ?」

「……ああ、そうみたいだな」


 ダニエルの前ではアケーシャは笑わない。だけど、他の生徒の前では、楽しそうにする姿を目撃するようになった。それにはダニエルも気付いていた。


 アケーシャの人気がでれば出るほど、王太子妃に望む声も強くなる。そうすると、ミモザを王太子妃に迎えることが難しくなってしまうかもしれないからだ。


「わたしは、絶対にアケーシャ様が悲しむことはしたくありません。失礼します」


 ミモザは頑なにダニエルを拒んだ。どれだけ心が痛んでも、過去のアケーシャを思うと、その痛みも我慢できた。


 ダニエルが立ち去るミモザの後ろ姿をずっと見つめていても、決して振り返ることはしなかった。



「アケーシャ様、お待たせして申し訳ありません」


 カフェテリアにようやく着いたミモザは、先に待っていてくれたアケーシャの元へと小走りで駆け寄る。


「大丈夫ですよ。だけど、ミモザ様は何かあったみたいですね。大丈夫ですか?」

「え? どうしてですか?」


 思わず、ドキッとしてしまう。先ほどもまた、ダニエルに捕まっていたなんてできることなら言いたくない。


「今にも泣き出しそうなくらい、とても悲しそうな顔をしていらっしゃいますよ?

 もしかして……」

「気のせいですよ! きっとお腹が空きすぎて、限界だからじゃないですか!」

「それは、多分違うと思います……」


 わざと明るく振る舞うミモザに、アケーシャは何があったのかを確信する。だけど、強くは出れない。


「いいんです。そういうことにしておいてください! それ以上言うと、アケーシャ様のお皿の上を、グリーンピースだらけにしてあげますからね!!」

「え、いや、それは本当にごめんなさい」


 そして、周囲がざわついた。


「氷の姫は、グリーンピースが嫌いなんだって」

「え、意外すぎて、可愛い」

「俺が代わりに食べてあげたい」

「この世からグリーンピースを無くそう」


 グリーンピース撲滅運動が始まりそうだったので、それに気付いたアケーシャは必死で止めた。


 




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