5話 新たなる目覚め
しばらく街を歩いていると、何やら古い建物が見えてきた。石レンガでできた建物に手入れがされてないこともありただの植物が覆っている。
まさか、あれが装備屋なのかと思い、思わず聞いてしまった。
「エルシー、もしかしてあれが装備屋なのか? 」
「そうよ。見た目は古いけど、かなり良質な装備を販売してるの! 」
「そうか」
一応、反応はしたがあまり入りたくはないと思うが、エルシー行きつけの装備屋だからな。多分、いい店なんだろう。
そして、店内に入った。
「いらっしゃい。うちは、あまり親切な店じゃなくてね。外装と内装が古くてきたないんで」
「おじさん久しぶり、エルシーだよ」
「あぁ、エルシーかい。しばらく見てないと思ったらずいぶん綺麗になったじゃないか! 」
「おじさん、ありがとう! 」
「で、今日は何の用だい? 」
「私の仲間の仁にね、装備をオーダーメイドしてほしいの! 」
「そうか~。なら、わしが客だと認めたものにしか装備を作らないのは知ってるな? 」
どこの世界にもいるよな。
自分の認めたやつ以外何もしない頑固な奴が。
「うん、知ってるけど。どうして? 」
「わしの装備は昔、皆んなに装備をしてもらい、安全に魔物の討伐をしてもらうために販売していたんだが、わしの装備にケチをつける奴がいたんだ。そして、実際に魔物討伐の際に装備が壊れ、大怪我をした事件がおきたんだ。そして、装備屋としての地位や名誉、そして、お金も失ったんだ。それからは、わしが信用した人にだけしか販売しないと決めた。それと、装備の品質を最高峰にすると決意した。だから、わしが認めた客にしか作れない」
そんな事があったのか。
本当にアニメやゲームの世界みたいだ。
しかし、それは過去の話であって誰に対してもそんな対応をしていればいくら質のいい装備を作ろうと評判は余りいいものではない。
「わかりました。では、何をすれば認めてもらいますか? 」
だが、僕はこの頑固なお爺さんの言うことに従わないとこれからの冒険者人生が即終了になりそうなのでこのお爺さんの要求する条件とやらを満たそうと思う。
「では、集会所に貼っている魔物の討伐クエストを受け、クリアしてきてくれ。そして、その証を見せてほしい」
「具体的にどんな魔物を討伐すれば良いんですか? 」
「きついかもしれんが、トロピオンを3体
討伐して欲しい」
「トロピオンって何ですか? 」
「なんだ仁、知らないの?」
トロピオンなんてものは聞いたことがない。
何てったって異世界には来たこともなかったからだ。
「トロピオンは魔物の中では雑魚になるけど、群れで活動するから、少し厄介なの! 」
魔物:トロピオン
説明
あまり強くはないが群れで行動するために初級冒険者にはかなり厄介。
容姿としては草食恐竜の中でも角やコブがあるものを想像するとわかりやすいらしい。
「ヘェ〜、知らなかった。でも、大丈夫だろう。ちなみに、それは、1人で討伐すればいいんですか? 」
「さすがに1人は危ないと思うから、エルシーと一緒に討伐してもらう」
「わかりました。では証を持ってこれば、装備を作ってくれますね? 」
「もちろんだ。わしが、認めた客には最高峰の装備を作らせてもらう! 」
こうして2人は集会所に向かった。
★
集会所に着き、クエストを受付けで受けようとしたが、受付けの女性に、今の時期はかなり危険なので、気をつけてくださいと言われた。理由としては、産卵の時期なので、かなり危険だそうだ。
だが、装備を作ってもらえるならば….。
関係ない。
「さて、討伐に行くぞ~!」
クエスト内容:トロピオン3体の討伐クエスト
報酬:トロピオン1体につき大銀貨3枚
僕達はトロピオンの生息しているサーファリアル近くの森へと向かう。
しばらく歩いていると、トロピオンを一体いるのを発見した。
しかし何か妙だとは思ったが、何も言わなかった。
そして、エルシーは銃を構え、狙いを調整している。
「まず1体目は私が倒すから、残りは仁が頑張って倒してね」
「わかった」
しかし、その時はまだ気づいていなかったが、僕には戦闘手段がない。
それに気づいたのはしばらく経ってからの事だった。
「ぴゅんっ、ぴゅん」
エルシーがトロピオンの頭部を撃ち抜いた。
銃声が聞こえるが狙撃銃だからか普通の銃とは音が違う。
「よし、1体は倒したわ」
エルシーはオーダーメイドの銃で確実に仕留める。
残りのうち、1体を歩きながら見つけた。
そして、近づいている時にふと、気づいた
のだ。
そう、僕は丸腰だという事に。
そして、一旦考えを改め戦おう、と戻ろうとしている時、後ろに、3体目のトロピオンの気配を感じ、振り向くと本当にトロピオンがいた。
あまりの恐怖に体制が崩れてしまった。
それと同時に、気づいてなかったトロピオンがこちらに向かってくる。
そして、僕は2体のトロピオンに囲まれてしまったのだ。
そして、攻撃をされそうになった時。
僕は自分に力が欲しいと願う。
すると、僕に金色の光が落ちてきた。
まるで、雷に打たれたように。
そして、目を閉じながら攻撃をはね返せと願った。
目を開けた時。
僕に攻撃をした、トロピオン2体は血を流し、死んでいた。
僕自身は打撃をしたわけでも何でもないが打撃をしたかのような死に方で死んでいた。
その時は、一体何が起きたのかはわからなかったが、それを見ていたエルシーはカウンター魔法で攻撃をはね返したと言っていた。
トロピオン3体の討伐クリア
報酬:大銀貨9枚
そして、クエストをクリアした僕達は集会所に戻った。
そして、トロピオン討伐の証と大銀貨9枚を
貰った。
「お金の分配についてだが、どうわけようか? 」
「そうね、成果報酬制。つまりは、自分が倒した数で分けよう」
「わかった。じゃあ、僕は大銀貨6枚だな」
「うん」
こうして、お金の分配について両者が納得したうえで装備屋に向かった。
「おじさん、クリアしたよ〜! 」
とエルシーが言った。
「本当か? 」
「本当です。僕が2体。エルシーが1体。そして、これがトロピオン討伐の証です」
「すごいな〜! しかし、今の時期は大変なはず。どうやって討伐したんだ? 」
まるで出来もしない無茶苦茶な事を僕にやらせたみたいな発言だな。
「エルシーは銃で討伐。そして、僕はカウンター魔法で討伐を」
討伐方法を話した後は話が早かった。
「なるほど。よし、わかった。仁だったな、お前にオーダーメイドの装備を作ってやる! 」
「あ、ありがとうございます! 」
嬉しい反面、複雑な気持ちだ。
まぁ、今はそれよりも、敵との戦闘に支障がないように色々と揃えなければいけない。
しばらくの間、装備を作るのにサイズの寸法やどういう装備にするかを聞かれていた。
待つ事3時間。
完成したぞ。
「仁、お前は魔法を使って倒したと聞いたから、魔法を使いやすく、なおかつ、防御力の高い装備にしたぞ! 」
黒を基調としたローブが特徴的なこの装備はいかにも魔法使いと連想するほどの仕上がりとなった。
「めちゃくちゃかっこいいですし、着心地が最高です! 」
「そうか、嬉しい事言うじゃないか! 」
「それと、これはいくらになりますか? 」
「いくら、お金がある? 」
「金貨2枚と大銀貨15枚、銀貨7枚です」
「なら、大銀貨2枚と銀貨5枚だ」
「わかりました」
会計を済ませ、装備屋を後にした。
にしても、すごくいい装備だ。
後からエルシーに聞いたのだが、あの装備の価格は割安だそうだ。
つまり、あの装備屋のお爺さんは実力を評価し、サービスをしてくれた優しい人だと言うことが分かった。
「そういえば、仁って魔法を使えるんだね」
「みたいだな」
なんでかはわからないが、カウンター魔法が使えて良かった。
「でも、良かったね。戦闘手段が見つかって」
「そうだな。なんとか見つかって本当に良かった」
こうして、会話をしながら今夜泊まる宿屋に向かっていた。
装備や魔法、そして何より、戦闘手段が見つかって本当にホッとした。
だが、自分の意思で魔法を使ったわけではなくピンチにたまたま発動したと言った方が正確でこれからの敵の戦闘は少し不安がある。
それでも、この調子で他の魔法も使えるようになるといいなと思った。
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