1話 学生から神様に?
初めての小説です。
誤字や脱字があるかもしれませんがよろしくお願いします。
僕は鏡 仁、どこにでもいるような男子高校生。毎朝決まった時間に目を覚まし、少し雑用をやり終えた後に学校へ向かう。
雑用と一言ことに言っても朝食を摂ったり、顔を洗ったり、トイレで用を足したり、制服に着替えたり、何かと忙しい。
今日もまた、孤独な学校生活が始まるのかと思うと、すごく憂鬱な気持ちになる。
「はぁ......」
ため息と共に学校へ着くと急いで荷物を教室に置き、トイレの洋式便所に逃げる。
(やはり、ここは落ち着く)
しばらくトイレに籠っていると、朝のホームルームのチャイムが鳴った。
「キーンコーンカーンコーン」
僕はトイレから出ると早足で教室へと向かう。
(やれやれ)
間に合ったと思っていると、まわりから嫌みが聞こえる。
「あいつ、またトイレに籠ってたんだな」
「トイレ大好きくんじゃんよ」
「アハハハハハハ」
まわりの男女7人組のいわゆる陽キャグループが僕を笑い、蔑んだ目でクラスのやつらからも見られた。
まぁこれには、なれてしまったから正直どうでもいい。
「すいません、職員会議が急きょありまして、遅くなりました」
僕のピンチを救うかの如く間に入ってきた救世主が現れた。
そう、先生が来てくれた。
助かったと内心思い、一安心する。
そして、職員会議で話された内容をクラスの生徒に話し始めた。
最近、若い社会人が車を全速力で走らせ、信号機が赤になる瞬間を狙って止めるという遊びをしているので気を付けろという、なんともわけのわからない内容だった。
こうして、ホームルームも終え、いつものようにつまらない先生のつまらない授業を受けているとあっという間に下校時間となった。
いつも通り下校していると、目の前に友達と楽しそうに歩いている女子中学生が2人がいる。
2人は話に夢中になっていて前が見えていない様子だった。
すると、前から朝のホームルームで言われていた例の車が全速力で向かって来た。
だが、2人は全く見えていない。
信号が赤になったが2人は話に夢中で、赤信号を渡っている。
しかし、車の様子が妙に変だ。
スピードが下がるどころかむしろ上がっているの。
例の車なら止まるはずだと思った僕は変な直感が働く。
2人を後ろに引っ張り、僕はその反動で前にでた。いや、自分から出てしまったのだ。なぜか?それは、こんな世界にあきあきしていたからだ。
そして、車にひき殺されてしまった。
正直、痛みは一瞬感じたもののそれほど苦しい死ではなかった。
一度は考え、実行に起こそうとした死の世界。
なんだ、ここは......。
そんな僕の目の前には死の瞬間や葬式などの映像が流れている。
助けた2人は激しく泣いていた。
「何なんだこれは」
思わず口にしたが助けてあげた2人が泣くのは当たり前と言えば、当たり前だ。
見ず知らずのやつに命を助けられたが、目の前で死んでしまったのだから。
だが、なんの取り柄もない奴が見ず知らずの人を助けて命を落とすのも案外悪くないかもしれないと不覚にも思ってしまった。
そういえば、死んだ後ってどうなるんだろうな。
僕はふと疑問に思った。
「それより、ここはどこなんだ」
「ようやく、自分の人生の振り返りが終わったんですね」
僕の目の前に白い姿をした、いかにも天使のような容姿をした女性が現れた。
その姿はなんというか、一言で言うなら綺麗系美人といったところだ。
「あなたは、誰ですか?」
思わず口にする僕。
「私ですか? 私は死んだ人間の次の生き方を提示する天使アリア」
見た目と同じ様なしっかりと、すっと通る声で答える。
やっぱり天使だった。
一応、一芝居をうってみるか。
「天使って、本当にいるんだな。一つ聞きたいんだけど、次の生き方って具体的に何をするんだ」
僕の素朴な疑問にまぁ、仕方ないよね。説明するわといった感じで説明する。
「まぁ、人間にもう一度なる人もいるけどあなたは多分また死ぬ前と変わらない生活を送ると思うからやめた方が良さそうね」
天使の癖に中々嫌な事を言う奴だ。天使とは思えない言動だ。この時の僕はこの天使アリアなる存在に苛立ちを覚えた。
「他にないのか?」
「他には天国とか地獄とか、あっ、あと、魂を完全に無くしたりもできるわよ〜」
いかにもマニュアル通りの説明だ。こんな天使でもマニュアルには従うみたいだ。
自分よりも地位の高い天使がいるのだろう。色々な世界にもやはり上下関係があるのかもな。
「それだけしか別の生き方がないのか? 」
「まぁ、あるにはあるけど、あなたにはかなりのリスクがかかるけどいいの? 」
根暗孤独ぼっち陰キャ兼ゲーマーの俺に挑発とも取れる発言に僕は気になり、体を前に乗り出す。
「ちなみにそれは何なんだ? 」
「異世界転生って知ってる? 」
異世界転生。
僕が死ぬ前の世界ではアニメや小説、漫画、ゲームにまでなっている超流行の魔法のキーワード。
僕はこの時、まさかとは思っていたが……。
「それの、何がリスクなんだ? 」
「君は何一つ分かってないんだな〜。まず、異世界に転生するとその世界の平和を揺るがす邪悪な存在、まぁ、簡単に言うと、魔王的な存在を倒さないといつまでもその世界に閉じ込められるの。そして、その世界で命を落とせばあなたはもう二度と生き返らない。つまり魂ごと消えちゃうってこと」
簡単に魂ごと消えるなんてよく言えるものだ。だが、少し興味もある。
僕のゲーマー魂に火が灯る。
「そうか、でも、異世界転生の方が楽しそうだからな異世界にでもいっそ行こうかな? 」
「じゃあ、転生先は異世界でいいのね? 」
天使アリアの問いかけにうんと言う。
「ああ」
「ちょっと待ってね。さすがに何も無しで異世界ってのは危険すぎるから、生きていた時の言動や行動、人間性などの観点から総合的に評価して、それぞれの人にあった役職を与えてるの」
評価して役職が当たるのは平等とも取れるが、なにしろ現世の僕には人に誇れる様な事をした覚えがない。むしろ、評価は最悪な予感すらする。
「なら、僕の役職は何なんだ。教えてくれ! 」
催促する僕に答える天使アリア。
しかし、その答えは想像を絶する様な意外なものだった。
「そうね、あなたの役職は......神様だね! すごく珍しい役職だよ、これは! 」
神様って何だ?
僕は何でもできるのか?
しばらくの間僕は思考停止状態に陥り、沈黙がこの空間を流れた。
頭にクエスチョンマークがでている。
「一ついいか、神様って具体的に何ができるんだ? 」
神様とはいえ僕がいた世界では神話の話だ。
それに、そんなのは架空のことであって現実には見たこともない。
だから、実際にどんな能力があって、どんなことができるのか気になった。
「正直に言うと、まだよくわからないの! 」
天使アリアのその一言に僕は頭を悩ます。
「えっ、じゃあ、未知数な役職を与えたってこと? 」
「そうね」
「ヘタをすれば、何の役にも立たないってことじゃないか! 」
僕は思わずツッコミ芸人ばりのツッコミを入れ、天使アリアの頭を叩きそうになる。
そして、天使アリアからまた、興味深い事を聞かされた。
「でもね、過去に役職が神様だったことのある人がいたはずよ」
「その人は、今から行く異世界にいるのか? 」
「いるかどうかは、わからないわ」
「まぁ、他に行くあてもないしな。異世界とやらにも少し興味があるから役職がないようなもんでも正直構わない」
あんな酷い現実世界から逃げ出せるなら......。
役職が神だろうが何だろうがどうでもいいんだ。最悪、その世界で寿命が来るまで穏やかに暮らせればそれでも構わない。
余りにも不確定な情報が多い異世界だが、とりあえず面白そうということもあり僕は行く事を決意する。
「では、異世界に転送します。心の準備はできていますか? 」
「ああ、できてるさ」
「では、これからのあなたの活躍を心から祈っております」
僕の床の周りに魔法陣のようなものが現れた。円形で星をいくつもかたどったような魔法陣は幻想的なものを感じるほどに綺麗だった。
そして、異世界に転生したのだ。
ここは......。
現世で例えるとするならヨーロッパ風な街並みが特徴的だ。
それに、街を行き交う人々の中には世界史の授業で見たことのある中世の騎士たちと似たような格好をしているものもいる。
「本当に異世界にきたんだな」
そういえばあの天使アリアが言ってた役職ってどうやって確認するんだろうか。
僕は考えていると自分のズボンのポケットに何か違和感を感じ、触る。
すると、一見クレジットカードのようなカードが出てきた。
そして、書いてある文字を読む。
しかし、現世では見たこともないような文字だが、その辺は天使アリア達が自動翻訳機能を付けていたのだろうか?
何気なく読めていた。
異世界転生のお決まりだと僕はクスリと笑いながら思った。
え〜、何なに、名前、役職、スキル、身体能力、あとは、レベルと。
あれ、カードを確認したが役職が神様じゃなく市民になっている。
なぜだ?
これじゃあ、言ってることと全然違うじゃないか。あの堕天使め!
僕は心の中で天使アリアに裏切られ、はめられた感を感じる。
しかしまぁ、これはこれで穏やかに過ごせそうだからいいかもな。
僕は神様ではない事をすでにどうでも良く思えてきた。
だが、これからの生活に幸あれだな。
数多くある作品の中からこの小説を拝読していただき、ありがとうございます。
この作品が面白くなければ⭐︎を1つ。面白ければ⭐︎を5ついただけるとたいへん励みになります。
よろしくお願いします。