スタートライン
3月、俺は家から遠く離れた土地の高校の寮のドアを叩いた。まだ春休みの学校はグラウンドの野球部の掛け声と音楽室の窓から響く音色で包まれていた。来月には入学式を控えている。深く深呼吸をして高鳴る鼓動を落ち着かせた。そして小声で「よし」と呟き、入学式を少し楽しみにしながら時間が過ぎていく時計を眺めていた。
4月、入学式当日。正門の前の坂の下で心を落ち着かせて坂を登っていく。正門をくぐり、靴箱で靴を脱ぎ、教室の席に着いた。まだ見ぬ先生が来るまでの少しの時間、後ろの人に肩を叩かれた。「始まして、俺は藤崎和也、きみは?」俺は少し戸惑いながらも「俺は深町凌雅、よろしく。」と少しぎこちない笑顔で言った。「凌雅君はなんかの部活の特待生?」と聞かれて、「違う」と答えた。この高校は様々な部活が全国的に有名な超スポーツ校だから聞かれて当然の質問だ。和也は「俺も特待生じゃないんだよね、この高校でやりたいことがあって一般入試で来たんだ」と言った。俺は気になって聞こうとしたが、先生が来て、入学式の説明をし始めた。入学式では素晴らしい吹奏楽の演奏を聴き、長ったらしい校長の話を聞き、教室に戻った。俺は和也の話の続きが気になって、すぐに聞き直した。すると和也は「この高校に駅伝部を作りたい。中学じゃあまり成績を残せなかったけどどうしても高校でも続けたかったんだ。」と言い、続けてこう言った。「凌雅君って特待生じゃないんだろ?一緒に駅伝部を作らないか?」それに聞いて、俺はすぐに首を縦に振った。「でも手続きとか顧問とかどうするの?」と聞くと、「もう入学前から校長とある程度話は通している。あとは部員の人数だけだ。」とすぐさま答えた。聞くと、部員を7人揃えることらしい。俺は心配になった。ただでさえ部活の盛んな高校で一般入試の人は少ないのにそんな簡単にあと5人も集められるのか。でもこんな初日からそんなことを口に出すのは気が引けたので言わなかった。