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すいれん  作者: 右川史也
第三節 段々と冷えこむきせつ
25/29

第25話 クリスマス・イヴ

 箱根旅行から程無くしてのクリスマス・イヴの日。

 明日香は、慎太郎に呼び出され大学に来ていた。


 以前から、この日は慎太郎の部屋で二人静かに過ごそうと決めていた。しかし昨日のお昼に連絡があり、明日香は大学構内のあの屋外テーブルに(おもむ)く。


「急にごめん」


 慎太郎がそう言うと、途端に重い沈黙がその場を包み込んだ。

 構内に他の人の気配は全く無い。沈黙は当人たちで破らねばならない。


 急な予定の変更と彼の態度に、明日香は不穏な空気を感じずにはいられない。

 内心怯え、今ある沈黙からは恐ろしさすら感じる。

 だが、彼が言うまで待つ――と明日香は決めていた。


「手術の話、恭子さんから聞いた」


 重く響く彼の言葉に、明日香は「うん」と静かに応える。


「本当に手術受けないつもり?」

「うん」

「それは俺のため?」

「……」


 明日香は答えなかった。

 すると、彼は更に質問を重ねた。


「俺がナオヒトだから?」

「……」


 明日香はまたも答えなかった。


「俺は、明日香は手術を受けるべきだと思う」


 明日香は何も答えない。

 ――その代わり、問い返した。


「慎太郎は、私の傷――蓮の様な傷が治っても、私を好きでいてくれる?」

「……」


 今度は彼が、何も答えなかった。

 彼には答えられなかった。


 それが答えだった。


「……そう」


 明日香は慎太郎の答えを理解した。

 そして、質問に対してようやく、真っ直ぐと力強く答える。


「手術は受けない。私には……慎太郎が居なきゃダメなんだよ」


 自分がそう答えると彼はわかっていた――そんな気がした。


 そして同じ様に、明日香にも彼が出す答えが分かってしまっていた。


「……少し距離を置こう」


 それ以上の言葉は無く、再びその場所は沈黙に満ちた。

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