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死神の経営コンサルタント  作者: 遥風 悠
9/17

一年目、夏 ④

 只今の時刻、午前0時。場所はとあるマンションの屋上。密会という奴ですね。死神同士、私と竹田さんの。珍しいこともあるものです。一体、何用でしょうか。

「どうですか、調子は?」

「与えられた仕事をこなすだけ。死神の時と何も変わりません。」

相も変わらず冷静沈着。寡黙。()めず(おく)せず、というのでしょうか。その性格は人間界で暮らし始めても変わりなし。それでいて性格正反対の葵店長と息ピッタリなのだから奇妙なものです、人間族の相性というのは。ちなみに竹田さんは、死神としても大変優秀でした。何故下界に落とされたのか。

「・・・・・・」

「どうしました?何か用事があるから私を呼び出したんですよね、こんな夜更けに。あまり長居はできませんよ。誰かに見られたら面白くないですからね。」

「米山の爺さんに、また・・・死神の炎が出ました。第4段階。おそらくは、もう―」

視線を合わせることなく無表情のまま、淡々と話す竹田さん。

「そう・・・ですか。」

flame of death。かつて竹田さんは米山さんの炎を消して、現役の死神に目を付けられました。無論、悪いのは竹田さんなので致し方ないのですが。ただ今回はもう、無理でしょう。死神の力を持ってしても延命は難しい。寿命です。まさか、ねぇ。死神としても私のほうが先輩ですが、さすがに―

「毎日お酒を買っていきますか?」

「ええ、例のカップ酒を。飽きもせず、他の商品に切り替えることもなく。もう温めることは少なくなりましたが、毎回フタを開けてから渡します。震える手で受け取って、フラフラ歩いて、おいしそうにすすりながら帰っていきますよ。」

感情が込められることなく、起伏なく棒読みに近い音程で報告をくれます。けれども左拳がギュッと握られているのが目に入り、私は反射的に視線を外しました。性格上、死神には向いていないのでは。

「残念ですね・・・」

嫌な沈黙が続きました。

「どうして私に?」

「独身、独り暮らし。親族なし、友人なし。」

「調べたんですね。米山さんのこと。」

「・・・商圏調査の一環です。今の所、日に2度3度は店に酒を買いに来ます。時に深夜、早朝にも。天候、気温も関係なし。来なくなったらどうしますか?」

あなたが死神でいられなくなった理由が分かった気がします。

「米山さんの住まいは分かりますね。」

「はい。爺さんの足でも歩いて5分程度。ボロアパートの1階です。」

「配達の注文を受けたことにしなさい。店に見えなくなったら宅配を口実に訪問して、状況を確認すること。鍵は開けられますね。」

「問題ありません。」

「古いアパートであれば防犯カメラは設置されていないと思いますが、一応確認して下さい。人を呼ぶ必要があれば警察に連絡すればいいでしょう。」

「なるほど。ふぅ~。悪知恵が働きますね。」

「褒め言葉として受け取っておくわ。」

「谷口さんに相談して正解でした。おやすみなさい。」

 竹田さんが人間界に堕とされた理由。それは、死すべき宿命(さだめ)にあった人間を生かしたこと。私の罪は継続されるはずだった生を絶ったこと。

 ― 余談でした ―


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