一年目、夏 ⑤
調理麺の売れ行き。まずは順調な滑り出しと言えるでしょう。葵店長の提出してくれた宿題が思った以上にうまくいった形となりました。
私が葵店長、そして山口副店長、竹田さんに依頼した課題―調理麺を沢山売るにはどうしたらいいか。直営店が見事に応えてくれました。それを新店にて実践。ちょっと音和店だけを贔屓することになってしまいましたが、進展ですからね。手をかけ時間をかけるのは当たり前。駆け出しのお店ですからね。
まずは一週間前のお話から。
「昔っから図工は得意だったんですよ。そうそう、そこにのこぎりを当てて・・・はい、押して、引いて、押して、引いて・・・」
・・・今、竹を、のこぎりで、切っています。直営店に設置されているのを見て、「あ、いいじゃないですか」と呟いたら「じゃ、作ってみますか」となって、今に至ります。さすがに音和店のオーナーさんに作ってもらうわけにもいかず、聞けば1時間もかからないということでお願いしたら、安易に考えたのが誤りでした。場所は駐車場の隅っこ。どこで手に入れたかは知りませんが、竹を、私が、切っています。葵店長は隣でニヤニヤしながら見守ってくれています。もう、なんとなくお分かりですよね。お手製の流しそうめんディスプレイというのが直営店の答えでした。確かに涼し気、確かに目立つ。そして確かに売れています。が、まさか私が作るとはね。オーナー店で使うものを直営店に作成してもらうわけにもいかないので致し方ないのは承知しているのですが。こんなイネ科の脆弱な植物、小道具を使わなければ一瞬で切り裂けるのに。切れ味悪い刃物を使えというから汗だくで・・・とりあえず、うまくいったから良しとしますか。
売込み商品を目立たせるにはどうしたらいいでしょうか。お客さんに認知してもらうにはどうしたらいいでしょうか。代表的なものはPOPです。コンビニ以外でもスーパーやドラッグストア、書店等、ちょっと目を凝らせば気が付かなかっただけで、意外とそこらじゅうに貼ってあるでしょう。一昔前はパソコンで作ったものが多かったのですが、最近は手書きの方が主流かなと感じます。POPに優しさや温かみを求める理由は死神の私には理解しかねますが、パソコンによる作成、印刷が一周回って手書きのオリジナリティとスピードが重宝されるようになったのでしょう。お店によっては天井から吊り下げていたり、折り紙なんかで装飾したり。ひと工夫でその印象がとても強烈なものになりますね。他にもボリューム陳列やスペースの拡大という手法も王道ですね。調理麺で言えばオープンケースの棚を一本抜いて2段重ね、3段積みにすると見栄えが全く変わってきます。そこにPOPを張り付ければなお良しでしょう。
こういった販促は、やろうと思えばどこの店でも実践可能ですし(『流しそうめんフィギュア』は別として)、大なり小なりの効果は期待できます。ただし販売動向を見ながら発注修正、フェイスアップや声かけ等の売り切る最低限の販促行為が伴わなければ廃棄数の上昇ばかりが目立ってしまうでしょう。
直営店も音和店も滑り出しは上々。ただし、私の担当店でベストな滑り出しを見せたのは希乃店です。