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腐りきった二人の関係

作者: MOZ

 多少胸糞悪い描写が続くかもしれませんが、最後まで読んでくれるとスッキリすると思います。


 途中でオチが予想できても…気にせず読んでくれると嬉しいです。




 今日もあの人は帰ってこない。


 時刻は夜の20時を回っている。この時間から私は料理を始める。あの人が帰って来るのはいつも21時過ぎ、もっと遅くなることもある。だから私はあの人が帰って来る時間に合わせて夕食の支度を始める。


 あの人の勤めている会社はいわゆるホワイト企業だ。遅くても17時半までには全ての仕事は終わる。家に帰るまでは30分ほどの時間しかかからない。つまり帰ろうと思えば、18時までには帰って来るはずなのだ。


 空白の3時間。その時間の間に彼は全てを済ませているらしい。今日は一体どこで誰と会っているのだろう。


 一度、探偵を雇って調べようかと思ったこともある。だけどこれは私たち夫婦の事だ。第三者に介入されたくないという気持ちもあった。いや、もうあの人は第3者と毎日会っているのか。


「うっ……」


 思わず胸の奥から何かがこみ上げてきたが、なんとか堪えられた。落ち着け、大丈夫、大丈夫だ。


 こんな状態になったのはもう1年も前のことだ。それまではいたって普通の夫婦…いや、そうでもなかった。こんな状況になったのは私のせいだ。私のせいなのだ。


 私のせいなのだから私は何も文句は言わない。私はそう…最後にあの人が帰ってきてくれればいい。あの人の帰る場所であればいいのだ。


 私は今日も料理を作る。まだまだ慣れていないが、それでもあの人のために作り続ける。インターネットで調べた料理だが、十分美味しくできているはずだ。同じ料理ばかりだとダメ、毎日毎日違う献立を考える。


 朝食だってあの人のために精のつく料理を考えなくてはいけない。あの人は毎日頑張っているのだ。そんなあの人を応援しなくてはならない。


 部屋の掃除だってそうだ。あの人に汚れていると思われちゃダメだ。あの人は綺麗好きだから汚れているのを見るとすぐに気にしてしまう。


 家事炊事の全てをこなしている。昔の私なら考えられないだろう。愛する人のために全てをこなすなんて考えられなかった。しかし今では全ての家事が楽しくてしょうがない。


 今日も玄関の開く音がした。あの人が帰ってきたのだ。笑顔で出迎えなくては。


 第3者が私たちの関係を見たら、非難するだろう。だけど私はこれでいいのだ。私たちにはこれが最善なのだ。だから誰が何を言おうとこの関係が終わることはない。





 妻と出会ったのはもう3年以上前になる。出会ったのは私が一人で旅行中のことだ。とある山の中の景色の良いところを観光していたところ、妻が足を挫いたらしく、座り込んでいた。私は大丈夫かと声をかけ、肩を貸してやった。


 どこにでもありそうなちょっとした出会い。そんな出会いだったが、私が恋に落ちるのには十分だった。一目惚れというやつだ。こんな気持ちになった女性は彼女が初めてだった。


 それから私はすぐにアプローチをした。なんとかその旅行中に連絡先を手に入れた私は、事あるごとに彼女と会う約束を取り付け、4ヶ月後にプロポーズした。


 電撃結婚というやつだ。彼女も嫌な気はしなかったらしく、すぐに結婚が決まった。私としても彼女を逃したら次にいつ結婚できるかわからなかった。両親もそれに気がついていたらしく、泣いて喜んでくれた。


 お互いに結婚式は身内だけの小さなものでいいという話で決まり、簡素な結婚式を執り行った。結婚してから1年間、それは幸せな時間を堪能した。私にもこんな幸せがあったのだとそう思った。家族に祝福され、仲睦まじく暮らす日々。そんな日々が永遠に続けば良いと願っていた。


 しかしそんな結婚生活も長くは続かなかった。私には断言できる。私に非はなかった。しかし妻は、もうこの結婚生活に飽きてしまったのだ。


 分担していた家事炊事は、私が全てやることになった。食事も一緒にすることすら少なくなっていた。妻はイラストレーターの仕事についている。在宅業なので一日家から出ないことの方が多い。


 仕事時間も妻の好きに決められる。だから食事の時間くらい一緒にしても問題はない。しかし妻は私といるよりも絵を描いている方が好きな人間であった。


 しかし私は妻を愛していた。いつか私に振り向いてくれると信じていた。だけどそんな生活が半年、一年と続いたある日、私は悟ってしまったのだ。


 妻はもう私を見てくれないと。今、私の役割は妻の部屋を掃除し、料理を出すだけの家政婦と同じ扱いなのだと。いや、家政婦の方がだいぶマシだろう。なんせ最後に妻とまともに喋ったのはいつのことになるだろうか。


 私は怖くなった。こんな生活が死ぬまで続くのかと。こんな惨めな思いを一生するのかと。嫌だ、それだけは嫌だ。せっかく掴んだと思った幸せが、そんな簡単に崩れ去るのだけは嫌だ。


 今でも妻を愛していないのかといえば、愛しているだろう。いや、この愛しているという気持ちも本当にそうなのかわからなくなってきた。女性をこんなにも愛したのは妻が初めてであった。


 私は…私は安らぎを求めた。こんな惨めな気持ちを安らげるために私は外に出た。





 あれが帰ってきた。いつもは18時には帰ってきて、飯を作るはずなのに今日はもう22時を過ぎている。私もいつもなら腹が減ったらカップラーメンでも食べるのに、今日に限って切らしている。だからあれが飯を作らないと食べるものがないのだ。


 すると唐突に玄関の開く音がした。あれが帰ってきたのだろう。全くどこで何をしていたのやら。


「おい、何してたんだよ。飯ないんだけど。」


「あ、ああ…今作るよ。」


 なぜか酷く驚いた様子だった。何を驚く必要があるというのだろう。そういえばこれと喋ったのっていつぶりだっけ?まあどうでもいいか。


 あれが私の隣を通って台所へ向かう。その時、ふっと匂いがした。香水の匂いだ。私は香水が嫌いなのであれも香水はつけていない。つまりは…そういうことなんだろう。


 浮気だ。どっか外で女と寝てきたんだろう。その時私は別に悲しくも怒りもなかった。ただ、そっかと思っただけだ。


 あれも男だ。私と最後に寝たのはどれだけ前だったろう。正直思い出せないし、思い出す気もない。きっと溜まりにたまったものが出てきたんだろう。


 正直、浮気されて怒るほど、この男に何か思っていなかった。出会った時は多少の気持ちはあったのだろう。結婚生活というのも経験したことなかったのでそれなりに楽しいものだった。だけど、さすがに赤の他人の男と1年以上暮らせば嫌にもなる。


 普通の結婚生活を送れている人を私はすごいと思う。なぜ、赤の他人の男とそんなに仲良く暮らせるのか不思議だ。よく愛さえあれば乗り越えられるとか言うけど、そんなの嘘だろ。もし本当ならば、私はこれを愛していなかったことになる。


 いや、愛していなかったか。出会った当初は好きくらいの感情はあったかもしれない。しかしそんなものはまやかしだ。いっときの気の迷いというやつだろう。そんな気の迷いの間に結婚してしまったのだから、愚かという他ない。


 しかしそんな結婚生活も今日で終わりだ。あれもさすがにこんな私と一緒にいるのは辛いだろう。今日で楽にしてやろう。飯作る人間がいないのは困るが、まあなんとかなるだろ。


 あれが作った飯を食う。久しぶりに一緒に飯を食べた。1週間ぶり?もっとかな?


 さて、いつ切り出そうか。別にいつ切り出すのを心配しているとかそういうことではない。飯を食いながらなので、食べ終わるまで喋るのが面倒なだけだ。だから食べ終わった瞬間、私は切り出した。


「今日女と寝てきたでしょ。香水の匂いしてる。」


「え!」


 あれは慌てて服の匂いを嗅ぐ。これだけ匂ってよく気がつかないものだ。まあ自分についた匂いというのは気がつかないものらしい。


「別に咎める気は無いよ。ただあんたも、もう疲れたでしょ。離婚届、持ってきたらすぐに書いてあげるから。もう終わりにしましょ。それがあんたのためにもなるし。」


「寝てない…」


「は?」


「女と寝てない…」


 こいつ…まさかここまできて、しらを切るつもり?というか私と別れたく無いって思ってるんだ。気持ちわる。


「いや、別にあんたのこと非難する気は無いわよ?浮気したのだって、この結婚生活ならまあ、ありえない話じゃ無いし。だから正直に認めな?ね?」


「女と寝てない。」


「あ!そういうことね!浮気で離婚すると慰謝料取られるから、それの心配してるのね?大丈夫、流石の私もそんな鬼じゃ無いから。あんたと私の通帳は別にしてあるからそれをそのまま分けましょ。家財もあんたのものは持っていっていいから。」


「女とは寝てない。」


「いい加減にしろよ!寝てない寝てないって!もうバレてんだよ!そんな香水の匂い振りまいて、なんかよそよそしければ分かんだよ!女と寝てないんなら何と寝たんだ!あ゛ぁ!ババアは女に入らないってか!それともそんな香水の匂いしている犬や猫とでもヤってきたのか!どうなんだ!言ってみろ!」


「男と寝た。」


「へ?」


「バーで出会った男と寝た。もう疲れたんだ。もう寝る。」


「え?ちょ……え?」


 え?ちょっと待ってよ。え?どういうこと?え?なんで?なんでそういうことになった?


「え?」





 昨日、あんなに怒った妻は初めて見た。しかしあれは浮気に怒っていたのではなく、はっきりしない私に怒っていたのだろう。そういう性格の持ち主だ。だからこそ惚れてしまったのかもしれない。


 今日はまっすぐ家に帰った。玄関が開くと、妻が走ってこっちに来た。急いだせいだろう。頰は紅潮し、息遣いも荒い。それとなぜか目の下に隈ができている。


「お、おかえり…昨日のことだけど。」


「夕食の支度をするよ。通してくれるかい?」


「う、うん。」


 私は逃げた。本心を打ち明けるのが怖かった。私をさらけ出すのが怖かった。食事の後も、昨日掃除をしていなくて汚れていた部屋を掃除して、風呂に入り、また寝た。妻とは別室で寝ているので聞かれることもないだろう。


 しかしこんな状況もいつまでも続かない、明日は覚悟を決めて話さないといけない。話してしまったら、きっと幻滅して離婚ということになるだろう。もうそれでも良いのかもしれない。もうこの関係も終わりにしてしまおう。


「おかえりなさいませ、あなた。お風呂にしますか?食事にしますか?」


 玄関を開けたら妻が四つ指をついて出迎えてくれた。これは夢だろうか。それとも何かやばい薬でもやったのだろうか。こんな妻は今まで見たことない。それとなぜか昨日よりも目の下の隈が大変なことになっている。


「あなた?どうかなさいましたか?」


「え!いや…そ、そうだな。風呂に入るよ。」


「わかりました。ではお背中を流させていただきます。」


「え!」


 俺の目の前にいるのは一体誰だ。こんな乙女みたいな女は知らない。妻はもっとガサツで、俺に冷たかった。


 妻に本当に背中を流してもらった後、急かされるように風呂を上がり、食卓に着いた。食事も用意されていたが、さすがに手作りではなく、出前のカツ丼だった。


「そ、それじゃあいただきます…君は食べないの?」


「私は大丈夫。昨日から食事が喉を通らないから。」


「そんなに嬉しそうに言われても…」


「そ、それよりも…その…お話を…」


 ああ、やはりか。どうやら妻はショックで食事が喉を通らないようだ。さすがにこのままではいけないだろう。いい加減話さないといけない。


「その…バーで出会った人と…」


「バーね!バー…いい響きだわ…そ、それでどんな人と出会ったの?」


「電車で1時間かけて来た大学生と」


「う、嘘!大学生!しかもわざわざそのバーまで来たの!」


「ま、まあそういう人たちが集まるとこだから。私も昔から行っていたし…」


「ちょ…ちょっと待って!昔から!ど、どういうことなの?」


「私は…元々ゲイなんだ。男の方が好きなんだ。」


 ついに明かしてしまった。私が彼女に出会ってから明かさなかった秘密を。彼女も動きを止めてしまっている。…というか呼吸も止まってないか?


「普通の結婚は無理だと思っていた。女性を愛することのできない私では、結婚は無理なのだと。だから両親も私が女性と結婚すると聞いて、泣いて喜んでいたんだ。君は…中性的な顔立ちだから、女性で初めて好きになれた人だったんだ。だからその出会いをなかったことにしたくなかった。」


「グッジョブ私!!」


「だ、大丈夫かい?」


「気にしないで!続けて!」


「あ、ああ…だけどこのことを知った君は私のことを幻滅しただろう。…いや元々君にとってはそんな関係でもなかったか。今日、少し会社を早く出て離婚届をもらって来た。まだ私の名前も書いてないけど、今日でこの関係を終わらせ」


「ダメダメダメダメ!離婚届なんて要りませーん!そんなものは破ってやる!なんなら食ってやる。あー美味し。これで離婚はなしね。それよりもその大学生との話を聞かせて。出会ったところから。」


「た、食べちゃダメだって!それは食べるものじゃ…ほんとに食べているし。飲み込んじゃったし。だって君が離婚しようって…」


「そんな一昨日言ったことなんてもう忘れましたー。忘れちゃったなー、なんのことかなー、私もう分かんない。そんなことよりその大学生の話聞かせて!」


「え、ええ…じゃあまずは物色するために…」


 事細かく話を聞いていく妻に私は全てを正直に伝える。しかし口説き文句を聞いたり、どんな体位だったかを聞くのは勘弁して欲しい。流石に私も恥ずかしいことはあるんだ。


 それと私の話を聞きながら飯をかっこむのはやめて欲しい。私の話で飯を食べないでくれ。食欲が止まらなくなっているじゃないか。冷蔵庫に入っている昨日の残った夕飯から、私が用意しておいた昼飯まで今食べているじゃないか。


 そしてそんな幸せそうな表情をしないでくれ。そんな表情をされたらもっと話してしまうではないか。私たちにも、幸せな関係が築けると夢見てしまうじゃないか。


「あなた、ごめんなさい。あなたの話を聞いていたらなんだか体が…」


「え!ちょ…」


 やめてくれ。もうやめてくれ。流石にそんなにされたら私の体が持たないからやめてくれ。ちょっと待って、もう出ないから、もう何も出ないから、もうやめ、あ、あぁ〜〜…






 そして物語は冒頭に戻る。


「あなた!お帰りなさい!」


「ただいま。今日も疲れたよ。」


「今日はどんな人と出会ったの?大学生?それともおじさま?」


「今日は双子をいっぺんに行ったよ」


「まさかの双子!私の想像をいともたやすく超えてくる。そこに痺れる憧れるぅ!あぁ…今日も私は幸せだわ。あなたと出会えて本当に幸せ。」


「その言葉を2年前に聞きたかったよ。あの頃は本当に辛かった…」


「もう!そのことは散々謝ったでしょ。それに今日は私もあなたを驚かせることができるわ。」


「どうしたの?まさか私の体験談を君がまとめて漫画にしたやつがアニメ化でもする?」


「くっ…流石に私の作品はR-18だからアニメ化は難しいわ。ドラマCDが限界よ。ってそうじゃなくて、あなたが飛び上がって喜ぶことよ。」


「へぇ…それは楽しみだ。是非とも教えて欲しいな。」


「それはね…ふふふ、デキたみたい。」


「デキたって…まさかそんな…じゃあ私はお父さんになるのか!」


「私はお母さんね。」


「本当か、本当になのか……。やったぞぉぉぉ!はははは、ありがとう。本当にありがとう。」


 私たちの関係は始まりからおかしく、一度は完全に終わり腐りかけた。しかしよく言うではないか。どんなものも腐りかけが一番美味しいのだ。私たちの関係はこうして腐りかけた今を続けることこそが最善なのだろう。こんな毎日を続けていこう。


「だからあなた。明日も浮気して私を喜ばせてね?」


 しかし生まれた時から腐っているようなこの妻だけは、一度どうにかした方がいい。誰か、この腐ってしまった妻をどうにかしてくれ。



 


 いかがでしたでしょうか。身近に腐女子がいたので腐ったまま結婚したらこんな感じなのかなぁと思いながら描いてみました。まあ流石にここまでの腐女子はなかなかいないと思いますが。なんせ寝取られBLなんてレベル高いでしょ。


 男性の方で読まれた方の中には不快に思った方もいるかとは思いますが許してください。なんせキーワードでBLとか描いたらすぐにオチが予想付いちゃうんで。まあ世の中にはそう言う性的趣向の方もいらっしゃいます。そう言うものだと受け入れてください。


 あ、ちなみに私はごくごく普通の一般人です。そこだけは間違えないように…


 それと面白いと思った方はブックマーク登録と評価をお願いします。高評価になったら続編書くかもしれません。正直書ける自信はありませんが…



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