第1村人
夜営場所の選定、準備、料理など全てを万見仙千代がしていく。
食事が終わってもする事がない。
「お疲れでしょう。お休みください。」
疲れてはいる。しかし、現代人は夜型である。
「まだ眠れないよ。仙千代から寝てくれ。」
「いえ、主様より先に寝るわけにはまいりません。」
どうやらこちらが寝るまで寝てくれないようだ。
リュックを枕に横になる。
するとあっと言う間に眠くなる。
思っていた以上に疲れていたようだ。
「おやすみ。」
その言葉を言うのがやっとだった。
目が覚めると仙千代がいた。
その脇には昨日はなかった獣肉。
「おはよう。寝た?」
「おはようございます、主様。少し休ませて頂きました。」
本当に寝たのだろうか?
「その肉は?」
「野犬でしょうか?群れで襲ってきたので追い払っておきました。レベルもわずかに上がりました。」
その横でグースカ寝ていたわけだ。
・・・。
1日で死んでもおかしくなかったなぁ。
今日のガチャをする。
C「本多忠純」
「徳川家康の家臣。本多正信の三男。武勇に優れ大坂夏の陣で活躍した。短期で粗暴であったため家臣に殺された。」
・・・。
具現化して大丈夫か?
仙千代に相談したら意外な事を言われた。
「主様は関所の通行料は何人分お持ちですか?」
つうこうりょう?
そんな物知らない。
だが、ゲームでも街への入場料を取られるゲームもあった。
とは言え身の安全が第一だ。
「具現化」
鎧に身を包んだ髭面の男が現れる。
「本多忠純じゃ。貴様が主人か。」
甲高い音が響く。
仙千代が抜刀していた。
忠純は槍で防いでいる。
まったく見えなかった。
「主様に対して無礼である。斬るぞ。」
「儂は大御所様や秀忠様、親父殿以外に仕える気はない。だが合力はしてやってもよい。」
鋭い眼光で見据える仙千代。
汗を流しながらも見返す忠純。
「裏切れば斬る。」
そう言って刀を収める仙千代。
「あぁ、力は貸してやる。」
上から目線の忠純。
何も出来なかったよ。
朝食をとった後、道を北に進む。
森から離れた所に街か村があると考えたからだ。
ある程度の広さがないと農業はできないからね。
1時間程歩いた所で剣戟の音が聞こえてきた。
草原で3人の男女が狼と戦っている。
いや、離れた所でも数組の人々が狼と戦っている。
「先を急ぎましょう。」
「巻き込まれたら面倒くせぇ。」
2人が先を急かす。
助けなくて良いのだろうか。
いや、自分には助ける力はない。
戦う力もない。
この2人の意見に従うべきだ。
駆け抜けて行くと少し高台があった。
そこで休む。
「狼の群れを討伐しているのでしょう。
しかし、人側の指揮官が見えません。
狼は群れで狩りをします。個々で戦うのは愚かです。」
仙千代が指差しながら説明をしてくれる。
「俺なら主を探すな。そいつを狩ればいい。」
忠純も豪語する。
そうしていると数ヶ所で悲鳴があがる。
戦っている側面を襲われているようだ。
「人側の負けですね。狼が来る前に行きましょう。」
促されて先を急ぐ。
30分で村に着いた。
わずかな木の柵に囲まれたのどかな村だ。
中央に井戸と広場がある。
宿は2軒だけ。食事はなしで1人1泊銅貨5枚だ。
もちろん3人相部屋である。広さは3畳程。
藁の上に布を敷いて寝るだけである。
食堂を見ると定食が銅貨5枚から10枚。
銅貨1枚が100円感覚だろうか。
仙千代が処理した獣の皮や肉を売る。
銅貨50枚になった。捨てた牙や爪も売れたようだ。キャリーに括りつけた武器は売れなかった。
この村では需要が少ないという事だった。
狼オルファンから貰った硬貨は磨いてもいないし分別もしていない。
つまり今の財産は銅貨50枚である。
宿泊費が銅貨15枚。安い定食を夕食に3人で銅貨15枚。朝食に銅貨15枚。
残りが銅貨5枚。
あれ?詰んだ?
稼ぐ必要がある。
そうしないと明日の宿泊すらできない。
畑仕事をしている夫婦がいる。
「だぁ!ばぶ!」
独特の赤ん坊言葉が聞こえる。
ふと狼が見えた。
我が子と赤ん坊が重なる。
気が付くと赤ん坊に覆い被さっていた。
「主様!!」