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草原の戦い

始めに動いたのは「血塗れ」ハックであった。

「集められらるヤツに声を掛けとけ!」

部下に指示を出してソファーにドスリと座る。

「奴隷をどう使う。いつ使うを決めねぇなんて甘い連中だ。ゴブリン共を葬って俺がこの街の王だ。」

奴隷を兵士にする事は予想できた。

だから会談前には購入を指示していたし、金額も想定通りだ。

「ふん。出し抜いてやる!」



「わかりやすいですねぇ。」

武器商人トーマスは笑顔を張り付けたまま呟く。

「ハックさんはこちらの予想通り。

ですが、マグリットさんは相変わらずわかりませんねぇ。まぁ、女心がわかれば苦労はしませんか。」

手にはいくつかの発注書。

「さて、利益はどうなりますかねぇ。」



「フフフ。男どもは焦ってるねぇ。」

歓楽街の主マグリットはワイングラスを傾け、吐息を漏らす。

グラスに口を付ける。

「フフフ。」

彼女が思惑を洩らす事はなかった。


奴隷を買い集めたハックは装備を与えて草原に布陣させた。そこで大規模な宿営をする。

普段草原で狩りを行う人々から苦情が入るが剣と兵力をちらつかせて黙らせる。

人々の反感を買っているが己が支配者になる事に比べれば些細な事だ。


炊事の匂いに惹かれゴブリンが襲撃するまで、それほど時は掛からなかった。草を掻き分けて続々と姿を現す。奴隷兵も死にたくはない。必死に抵抗するが蹂躙されていく。草原には途切れる事なくゴブリンが現れ続ける。

やがて奴隷兵達が息絶え、ゴブリン達の勝利が決まる。


矢が降り注ぐ。ゴブリン達の背後に回りこんだハック率いる軍勢である。二つ名を持つ実力者も30人を超える。ただし、ハックと同等かそれ以上の実力者はいない。確実にハック以下の実力者だけを集めてある。この戦いが終わった後に賞賛を受けるのがハック以外であってはならないからだ。


奴隷兵を餌に、戦いやすい草原にゴブリン軍を引きずり出す。それはここまでは成功していた。

ゴブリン軍の想定以上の数以外は。

ゴブリン軍は被害を顧みずに突撃を開始する。

矢を受け倒れ、後続に踏み潰される。

後続を巻き込んで倒れて混乱を引き起こしている所もある。


敵の攻撃はゴブリンナイトの一撃から始まった。

瞬く間に乱戦になる。

ゴブリンが吹き飛ぶ。

怪力右腕(かいりきうわん)

その二つ名に恥じぬ力を見せ、右腕にはめた巨大な手甲で薙ぎ払う。

爪拳(そうけん)

特製の魔物の爪を装備し、爪で防御し、敵を貫く。

すでに数体のゴブリンリーダーを葬っている。



「見事に小物ばかりを集めましたねぇ。」

城壁から見下ろす影が呟く。

「運用も間違っていますし。爪拳などは個人戦や奇襲戦こそが本分でしょうに。」

「これは・・・、ハックさんでは無理かも知れませんねぇ。あと2日欲しいのですが。」

戦いぶりを見極め、影は消えた。



ゴブリン達の数に押され、探索者はその数を減らす。乱戦の中で二つ名持ちも負傷し、後退する。

前線で粘る者ほど標的にされて命を落としていく。

ゴブリンナイトの突撃が始まる。

「情けねぇ!!」

大きな戦斧でゴブリンナイトを両断にする。

かつて英雄と吟遊詩人に吟われた姿がそこにあった。

「ハック様が出る!俺様に続けや!!」

ハックの出撃に戦況は変わる。

それはまさしく1人で戦場を支配する英雄であった。


戦いの熱に動かされ、ゴブリンジェネラルも咆哮をあげて出てきた。その姿は通常のゴブリンの倍はあり、大柄なハックと並ぶ巨体である。

手に持つ武器は異様である。

柄から先が四角の鉄の塊なのだ。鉄の柱を振り回すと言ったら想像できるだろうか。


一撃の打ち合いで互いに悟る。このまま打ち合えばどちらが勝つのかを。

ハックは舌打ちし、ゴブリンジェネラルは口角をあげる。

刃が欠けた戦斧を投げ捨て、背中に背負った両手持ちの斧を握る。

「うおぉぉ!!」

ハックが雄叫びをあげてゴブリンジェネラルに斬りかかる。速さ、力共に先ほどの比ではない。

高速の連撃を防ぎきれずゴブリンジェネラルから血が吹き出す。


「狂人の斧」


ハックの切り札であるマジックアイテムである。

短時間だが、使用者から理性を奪う代わりに身体能力を向上させる。

「ガアッ!!」

最早叫びも獣である。

技も何もない一撃、一撃。

ゴブリンジェネラルは手も足も出ずに身を固めている。それでも武器を砕かれる。


突如ハックの動きが止まる。

時間切れであった。

いつもであれば周辺に肉片しか残っていなかった。

今回は・・・・。

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