ダンジョンの悪党
オルファンの機嫌は最悪だが、誰かに当たり散らすわけにもいかない。部屋で座禅を組んで瞑想をしている。いや、思考が迷走している。
落ち着かないせいか考えも纏まらない。
よし、昼間だが飲みに行こう。
この都市の歓楽街は昼も夜も関係ない。客となる探索者が昼夜の区別なくダンジョンから出ては酒を飲むからだ。
女達がいる店もあるが、そんなのは後だ。安い肉料理を温いワインで流し込む。値段が安いため、探索者達に人気の店だ。今日も色々な探索者達で賑わっている。銅貨10枚あれば定食が食える。そんな店だからこそ駆け出しの探索者や金無しの探索者が集まる。そんな連中は口が軽い。食事の席でペラペラと余計な事を話している。それ、話しちゃいけない情報だよ?
だがそんな話を聞きながらの酒も楽しい。
青銅の剣を腰に下げた駆け出し風の少年少女のグループもいる。4人共剣を装備って役割って知ってるのかな?村から出てきて初めてダンジョンに潜るようだ。目が希望に輝いている。初々しいねぇ。
それなりに楽しい時間を過ごせた。重い気分も幾らかは晴れた。オルファンはゴブリン相手に成長は見込めない。ならばダンジョンに潜るしかない。
する事は決まっているのだ。ならばするだけだ。
宿に戻り、夕方からダンジョンに潜る。
オルファン自身が前衛で剣や槍を振って先を急ぐ。戦士マッシュがいるダンジョンに比べれば楽な気がする。質より量といったダンジョンだが、探索者が多いためにそれが利点となっていない。そのためか最も攻略が進んでいるダンジョンでもある。
20階層を過ぎても多くの探索者達に出会う。
実際にダンジョンを攻略していく探索者。アイテムでの補助やマッピング、食事の準備などをするサポーター。予備の装備品や荷物、ドロップアイテムを運ぶポーター。役割がはっきりしているグループが多い。特にポーターは扱いが酷く、最近は雑用とまで言われている。
わずか3人で20階層まで来ているオルファン達は彼等からすれば目立つのだろう。
「薬草、売ってやろうか?」
「持ちきれないアイテムを買ってやるぜ!」
など声を掛けられる。気のいい奴等が多い。
だが、中には悪意のある連中もいる。
通路の前後から来るグループにより囲まれた。
「兄さん、金と女を置いていきな!ダンジョン内は自己責任だ。どうなるかはわかるよな?」
ゲスな連中だ。女の泣き叫ぶ声も聞こえる。奥でも悪さをしているのだろう。クレアとヌーラの肩に手を置いて身体強化魔法を掛ける。
振り向いても連中は笑っていた。こちらが逆らうとは思っていないようだ。
「ウィンドカッター」
風の魔法で数人の首を飛ばした。
「クレア、ヌーラ。生ゴミの掃除をするぞ。1人も逃がすな。」
悪党の悲鳴があがった。
「なんだよ!!なんで抵抗するんだよ!!」
「お、俺達に逆らったら死ぬぞ!」
弱い。弱い。
このダンジョンのように数だけのようだ。走りながら斬っていくがモンスターの方が強いだろう。
奥には裸で男達から逃げ回っている女性達がいた。
いや、あれは遊ばれている。男達は裸の女達に追い付かないようにして追い回している。
さらった女をなぶっているのか。死んでいる男達は女を護ろうとしたのか。
後ろでは戦闘というより蹂躙が続いている。クレア達の心配はいらない。
ここにいる男の何人かは強い。だが!素っ裸で少女を襲おうとしていた男の後ろに一気に移動する。
首を全力で折った。武器も持たず、隙だらけだ。
「ボス!!」
今殺したのが悪党の親玉だったようだ。
「悪党ども。自分で死ぬか、俺にころされるか選べ。」
頭が悪いのか、素手で攻撃してくる連中が多い。
一方的な虐殺となった。
殺した悪党は51人。
助け出せた女性達は38人。
すでにボロボロにされている女性もいた。
地上に連れ帰る前に光魔法で怪我を治し、水魔法で汚れを落とさせる。同時に闇魔法も使って簡単な洗脳もしておく。
「俺が助けたんだ。安心しろ。必ず地上に連れて帰る。それまでに地上に帰ったらどうしたいかを考えるんだ。」
皆に何らかの布を纏わせて地上に帰還した。
ダンジョン内は自己責任とはいえ、大規模な救出だったために地上は大騒ぎになった。
すでに死んだ事になっていた女性もいた。
これは数日は後始末かなぁ。