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女騎士

ダンジョン内において土魔法は使用しにくい。

ダンジョンに穴を開けて下に行くのを防ぐためとも言われるが、ダンジョン内では土魔法は制限を受ける。その知識はあった。

だが、ダンジョン内で試した事はなかった。


「守り人の隠れ家」

地に両手をついて皆を覆うドーム状の構造物を作成する。魔法名なんて適当だ。イメージを固めるためのものに過ぎない。魔力が一気に空になるが、魔力が満たされるスピードの方が早い。そのおかげで何とか構造物を完成させた。魔力炉がなかったら壁を1つ作って限界だったかな、これは。

ドームの中にはモンスターも一緒にいるが問題なく排除できる。

「なんでもっと早くやらなかった!!隠れてたら苦労しなくてすんだんだぞ!!」

一部の探索者から非難の声があがった。やはりか。

「馬鹿野郎!!魔法ってのは切り札なんだ!!限りある魔力をどう使うのか。それを使わせちまった俺様達が問題なんだよ!!」

暴風のピーカーが探索者達を一喝する。

「兄ちゃん、休んでな。俺様のとこにも魔法使いがいるがファイヤーアローを数発撃てば終わりだ。

無理すんな。」

心配りもできている。


だが、オルファンが休むより優先するべき事がある。キッカの心のフォローだ。心が折れかけている。キッカより弱いヌーラの方が生き残る意思があるようだ。だが、何と声をかける?騎士なのだから戦えると思っていた。戦場の心得があると思っていた。どうフォローするべきかがわからない。

「クレア、彼女達を頼む。」

結局は人任せだ。自分が嫌になる。

自分は彼女達をしっかり見ていたか?

ゲームを攻略するかのように、効率を求めていなかったか?いや、この世界ではそれは正しい。だが、それを嫌悪していたのは誰だ?

本当に自分が嫌になる。


天井にモンスターが当たる音が止んだ。

「様子を見てくる。」

そう言って1人だけ外へと出る。外はモンスターで溢れていた。モンスターが残した粗悪な剣を拾う。

「悪いが八つ当たりだ。すまない。」

有り余る魔力で無理矢理剣に魔力を纏わせる。

暴力が現れた。


動くものはいない。

モンスター達は全てアイテムに変わっている。

「凄いな。戦闘音が聞こえたから出てきたが・・・。全部兄ちゃんがやったのか。」

どうやら内側からドームを壊して出てきたようだ。

「・・・。」

今は答える気分ではなかった。

「おっと。相手の手の内を探るのはマナー違反だな。」

それで切り上げてくれたから助かる。

今回はここまでだ。修行を切り上げよう。



借りている宿に戻ったがどうするべきか。今は3人を休ませている。クレアに関しては問題はないだろう。ヌーラはレベルアップで強くなる自分に酔っている傾向はあったが、決して無理はしていなかった。どう成長するかはわからないが、生き延びる才能はありそうだ。

問題は女騎士キッカか。

村の暴れん坊の女がそのまま領主の騎士となり、自分より強い相手を知る事も、死の恐怖を知る事もなかった。そして今回疲労で戦えなくなったタイミングで死の恐怖を感じたわけだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:キッカ

称号:

レベル:9

状態:奴隷(主人:オルファン)

スキル:剣 レベル1

加護:


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


命令で聞き出したキッカのスキルだが想像以上に酷かった。レベルはダンジョンに潜る前は4だったそうだし、金属鎧の防御力にだいぶ助けられていたのではないだろうか。これで自分が1番強いと言っていたのだから驚く。

まずは休ませる事が大事だがその後はどうする?キッカが子供ならオルファンが教え諭し導けばいい。だが、キッカは大人だ。子供扱いは反発するだろう。普通の奴隷と同じように「戦え」と命じて終わらせるのは御免だ。

どうしたらいい?


答えが出ないまま夜が明ける。

「嫌だ!俺は戦わないぞ!!部屋からも出ねぇ!」

そんなキッカの声が聞こえてきた。

その時、歴史が動いた。異世界ニート誕生の瞬間だ。・・・。

いや、どーするの?

女性達の部屋からは喧騒が聞こえてくるが、女性達の部屋に勝手に入るわけにもいかない。


奴隷とは契約である。奴隷は主人の命令に従って行動する義務がある。対して所有者は奴隷が義務を果たす限りは、奴隷の命を保障をする義務がある。だから奴隷が義務を放棄した時は殺してもいい、というのが一般的な考え方だ。多くは所有者に有利に解釈されている事が多いのだが。


そんな中で堂々の義務の放棄宣言だ。しかも宿中に聞こえるような大声で。奴隷の反逆ともとれる言動が周りにもバレたわけだ。何も罰しないという訳にはいかなくなった。オルファンが駄目な主人と見れれば、その奴隷も出来損ないの奴隷扱いを受けるからだ。

通常なら廃棄処分だ。うん、処刑とも言う。それ以外でも鞭打ちなどが妥当か。

だが、オルファンに女を斬る趣味はない。さらに今回は周りにも罰したと見せ付けておく必要もある。

「キッカ!!任務の放棄は許さん!!追放処分にする!」

奴隷契約のままでの追放処分。本来は服すら剥ぎ取って追い出さなければならない。

「貴様の醜い体など見たくもない!!服も鎧も剣も持っていけ!!神殿なり都市外なり好きな所へ行け!!」

剣や鎧は売れば金になる。神殿に行けば簡単な労働と引き換えに食事を貰えるはずだ。かなり甘いが処罰と主張はできる。本来の追放は死を意味するのだから。

だが、キッカは神殿には駆け込まなかった。暴力で好き勝手できていた故郷を目指す。あそこでなら働かずに搾取して生きていける。自分より強い者は魔物でもいなかったのだから。

その日以降、キッカの姿を見た者はいない。

ただし商隊を襲おうとして斬り殺された女山賊がいたが、その名はわからなかった。

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