人材
リシリュー公国とガルガ公国からの賠償金は国庫を潤し、連れてこられた人に関しては荒れ地の開墾をさせたら故国に帰した。
人質は少年少女が多かったために「誠意は見せてもらった」として丁重に返却。それによりリシリュー公国とガルガ公国ではヤマト王国に対する心証は改善しているらしい。
あとは小鹿範満への恩賞とコスタ連邦、パラス王国への対処が残っている。
小鹿範満には太刀と金貨を200枚を与える。
そういえばミカサ王国の時からの人達にはあまり酬いていない。金貨500枚と酒を届けさせよう。
パラス王国に対しては攻め込むに値するだけの大義名分がない。しばらくは何もできないが、敵だという認識だけは持っておくべきだ。コスタ連邦は内乱中で戦力をヤマト王国に向ける余裕はない。
そしてヤマト王国にも他国に攻め込む余裕はない。
つまり、内政と外交しかできる事がないのだ。
あとは花達迷い人の育成か。
迷い人についてオルファンにはある仮説がある。
この世界では迷い人は珍しい。だが、自分や花は公には迷い人とはされていない。サーザン王国の迷い人は2人は死んで、2人はも危なかった。
意外と迷い人は多いのではないか。迷い人として有名になれる人が少ないだけではないのか。
迷い人として覚醒する前に死ぬ人が多いのではないか。
「奇貨おくべし」
ヤマト王国は人手が足りないため、変わった奴隷や一芸に長けた人物を求めている。そんな情報を流した。
その情報により集まる有象無象。そのほとんどがただの売り込みであり、人材足り得る人はいなかった。
だが優れた者はいた。犯罪奴隷ジェイロック。稀代の詐欺師であり、優れた話術の持ち主だ。彼の話には皆が引き込まれ、彼が話せば浮浪者すら身分を隠した王族へと変わる。彼を連れてきた奴隷商人には希望する金額の10倍を支払った。
「隗より始めよ」
をリアルで実践する。
ジェイロックには奴隷の身分のままで「弁士」と言う新しい役職貰い、月に銀貨50枚を給与とした。月給約50万円を貰う奴隷の誕生だ。
犯罪者であり奴隷であるジェイロックさえ優遇される事を内外に示した。
それからだ。奴隷商人の訪れる数や回数が増えて、連れてくる奴隷の数も増えた。己を売り込む者も多彩になった。
暗殺者や詐欺師、盗賊や殺人鬼もやってくる。
優れていて、今後犯罪をしなければいい。
山賊団が丸々士官してきた事もある。
「蛮将」「賊将」の名前で役職を与えて給与を与える。危険な任務を任せる事で民の不安と不満を解消させた。
そして拾い物とも言える優秀な者もいた。
暗殺者「名無し」。幼い少女かと思えば妖艶な娼婦になったり、老婆になったりする。女かと思えば豪快な男性騎士にもなる。変装の技術よりも空気と言うべきか。目線や呼吸、手足の動かし方。それだけで印象を変えてしまう。相手の印象に残らないように振る舞う事もできてしまう。
暗殺者「カルマ」。絶世の美女の姿をしているが男か女かは解らない。カルマの名は500年前からあるらしく、ある時は王の愛人、ある時は武人、ある時は暗殺者として史書に名が残っている。よく解らないがそういう存在なのだ。目の前で不思議な武技を見せ付けられた以上は信じざるえない。
ちなみに「名無し」と「カルマ」の性別を確かめるべくオルファンは果敢に挑んだ。男か女かはわからなかったが極上の天国であった。
最後に「バラーキ」。筋骨隆々の男で大斧を使う。戦いが好きで敵国に潜入して大量殺人をしてしまったために国を追放された危険人物だ。追放後に彼の屋敷からは大量の敵国兵の遺体が見付かった。捕虜にした敵兵を毎夜殺していたのだ。そんな彼も戦争では名将だった。危険を承知で雇用する。
こうして名無しとカルマの存在は表に出ないまま、ヤマト王国は1万の将兵を手に入れた。
バラーキ大蛮将を筆頭にゲル大賊将、チニ大賊将の3人の下に数人の将もいる。早速働いてもらうつもりだ。
そして本命である迷い人だが、新たに5人を発見した。皆が迷い人として知られないまま奴隷となっていた。仮説が当たったのだ。