7月 _φ(・_・ カリカリ
期末試験まであと1週間ちょい。クラスの雰囲気は少しピリピリしながらも、どれだけ勉強していないかを競い合う人がほとんど。
そんな中で、私の周りには努力している事を隠さない人が3人いる。
インテリイケメンの秋田くん、薬学部を目指している絵理、そして意外にもサッカー部の相川くんだ。
脇目も振らず、と言うわけでは無いけれど、休み時間もふと見ると教科書や単語帳をめくっている。
私も影響されて今回は結構頑張っている、つもりだ。
試験前のお昼休みはなるべく早めに美術室を出るようにしている。
絵理と一緒に教室に戻ったら、入口で秋田くんと相川くんが話しをていたので、邪魔しない様に通り過ぎようとした。
「ちょっと待った」
秋田くんから声がかかると同時に、相川くんに腕を掴まれた。
「ちょうど良いところに来たな」
見上げると相川くんがニヤリと笑う。
「な、なに?」
「今は面倒ごとはゴメンだよー」
絵理、よく言った。
「面倒ではあるけど、期末の為になると思うんだよ、乗らない?」
「今の勉強法に限界を感じているあなたに他には無い耳よりな情報が」
「うさんくさいよ・・・」
相川くんに至ってはどっかの悪質な販売員だ。
「高価な教材に意味はないって家訓なんだ」
「まあまあまあまあ」
結局腕を持たれたまま、促されて近くの席に座る事になった。
「今回の範囲の中で、それぞれ得意教科のミニテスト作ってみない?出題者の立場に立ったら何か見えてくるものがあるんじゃないかって話になってさ」
秋田くんからの提案はちょっと難し面白いものだった。
「あ、意外にいいかも」
絵理が乗った。
「問題を作るのって難しそうだね〜」
私にできるかな。
「まあ、モノは試しでさ。あんまり時間かけたくもないし、とりあえず3問くらい作ってみてよ」
「オレ、昨日作った数学の問題があるからあとで渡すわ」
「そう、元は相川が自分で問題を作ってるって聞いたからお互いやってみる事になったんだ」
「すごい、それは楽しみだわ」
「理数系の絵理はそりゃいいけど、私は恥さらしになりそうで怖いよ」
「斎藤さんにはもちろん英語期待してるよ」
秋田くんにさらにプレッシャーをかけられた気分で席に戻ると、相川くんが付いてきた。
「斎藤さん、今日解いてみて分からん様なら電話して」
「え、いいの?勉強の邪魔にならない?」
「人に教えるのって結構いい復習だと思うし」
相川くんと番号を交換する事になった。携帯のアドレス帳に男子の名前が加わるってちょっとテンション上がっちゃうな。
で、夜。夕ご飯を食べてから早速相川くんの問題を解いてみようとした。どうしよう、やっぱり結構難しい。
「もしもし?斎藤ですコンバンハ!相川くん今、電話大丈夫かなー?ちょっと教えてもらいたいんだけど」
ふーっと息をついた。
「あーあー、んんっ。よしっ」
練習完了。
電話してみよう!
TRRR
「も、もしも・・・
「もしもーし、斎藤さん!?お疲れー!やっぱ数学解けなかったー?」
「あ、うん、そうなんだ」
「どの問題だよー。バッチリ仕込むから俺に任せな」
「あはは、ありがとう〜。なんか緊張して電話したけど相川くんいつも通りでホッとしたよ」
「俺だってちょっとアガってるっつーの。でも電話待ってたから嬉しいよ。斎藤さんと話すのすごい楽なんだよな」
「そ、そっか・・・それは良かったデス。私も、かな」
「おー」
うう、なんか恥ずかしくなっちゃった。
「じゃあ、教えてもらっていいかな?」
「いいともー!」
結局、相川くんと電話で40分程話し続けた。
そして、なんとかかんとか英語ミニテストを作る事もできる様になり、問題作りと電話は期末試験当日まで毎日続いた。