5月 閑話
体育祭、結果としては私たちの白組は2位だった。数クラスの得点が一緒になっているから仕方ない。
けど、学年でのクラス順位は1位になったのだ!
私たち個人も結構頑張った。
棒引きでは阿刀田くんが大活躍で、自分のチームの棒を陣地に引き込むやいなや、他のチームも手伝って全勝していた。
秋田くんは障害物競争で隣のコースの人を先に行かせて利用しつつ最後に追い抜かしていたし、リレーでは相川くんが爽やかにゴールテープを切っていた。
絵理は長身を活かして走り高跳びでいいところまで行って、美帆ちゃんは短距離走も速かったが、なんといっても個別の応援で男子のやる気を引き出していた。
私も玉入れでかなり貢献できたと思ってる。
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体育祭が終わると美術部では恒例の写生会だ。
1年生が1人増えて3人になったので、女子7人でちょっと離れた植物園もある公園に出かけた。
「じゃ、それぞれ好きなところで好きなもの描いてねー。集合はお昼頃メールしまーす」
真菜恵の合図でバラバラに描きたいものを探すことになった。
私は公園に入った時から目をつけていた、小高い丘の上の大きなクスノキを目指した。
シートを敷いてクスノキを眺めていると、小万智がやって来た。
「ここから公園全体を描こうかと思って。お邪魔するね」
ふふ、と笑った小万智は、美術部で一番女らしいと思う。
クスノキを眺めてるうちに大体構図も決まって、シャッと下書きを描いて木の写真を撮って伸びをした。
「美也ちゃん終わったの?」
「下書きだけね」
「私も、大体描けたかな」
2人並んで公園を見ながらボーッとする。時々サーっと通る風がものすごく気持ちいい。
「そういえば、相川くんとは仲良いの?」
「何!突然」
「体育祭の時美也ちゃんと喋ってるの見たらすごくいい雰囲気出してたなーと思って」
「えー、まあ、よく話す方かな。私、男友達とか少ないし」
「前にサッカー部のマネージャーの話、したでしょ?あれ、クラスの友達がただ一緒に歩いてるのを見たからそう思ったみたい」
「そうなんだ」
「だから、遠慮とかいらないと思う!」
えらく力がこもった応援されたけど。
「今はそんなんじゃないし!それより、小万智って秋田くんの事どうなの?」
「秋田くんはイケメンだと思ってる」
「それだけ?好きとかじゃないの?」
「うん。1年生の時、いいな〜って思ってたんだけど、友達にもし2人が結婚したらあきたこまちだねって言われてなんとなく冷めちゃった」
「そうか」
お昼にみんなで集まってご飯を食べて解散。美術部のゆるーい写生会は気に入ってる。