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5月 o(^ω^)oファイト

中間テストが終わった。

もう一度言う。終わった。

高1の頃からやばい気はしてたけど、もう数学について行ける気がしない。

さっきのテスト返却の時の、塩谷先生の視線が怖かった。


気を取り直して。

あと2週間で体育祭だから美術部は非常に忙しい。

文化部が何の用だと思われるかもしれないが、体育祭に使われるプログラムとかポスター、応援旗などのイラストや製作を生徒会や先生から依頼されるのだ。

最近はパソコンのイラストレーターで絵を描いたりもするんだよね。


「あー!もう無理ムリ!私には絵の才能なんかないんだよーぅ」

真菜恵の泣きが入った。


今は2人の新入部員も一緒に応援旗を描いていて、2年生の私達がそれぞれ一つずつ、4枚のデザインをすることになっている。

この学校の体育祭は、各学年の数クラスを集めて4チームを作る。それぞれに色があり、その色に合わせて絵を描くことになるんだけど真菜恵はちょっと追い詰められた様だ。


「私どうして、青を選んじゃったんだろ。何も浮かばない!モチーフも無い!」

「龍とか」

小万智が提案する。

「去年も青は龍だった」

「馬とか」

「だめだよ、馬は私が黒で使ってます」

絵理が焦って訴える。

「あ、鷹とか!」

「それは一昨年のモチーフ」

「誰も覚えて無いんじゃない?」

小万智の案がことごとく却下されてる。


ふむ、私も考えてやるか。手元でメールしながら参加する。

「ウサギはー?」

「あいつ亀にも負けるじゃんか、却下」

「カエルー」

「例え先輩がカエルになっても私はあれにキスできる気がしない!無理!」

「んじゃ柳とかー。ユウレイー」

「美也は真面目に考える気無いよね・・」

「そんな!」

まあそうだけど。お、メール返信ありだ。


「真菜恵っちはー、相談する相手を間違えてるんだよーん」

真菜恵にメール画面を見せながら、ニヤリと笑ってやる。

「ええっ!?」

「先輩が食堂で待ってくれてるから、行っておいで〜」

小万智と絵理もメールを覗き込んでニヤリと笑う。

「先輩に彩色になったら手伝ってって伝えといて〜」

「今日は帰って来なくていいからね〜」

「家には帰れよ〜」

真っ赤になった真菜恵を、みんなでやんやと追い出した。



翌日、朝のHRで体育祭の競技参加者を決めるように言われた。

「後は、クラス委員に任せるわな」と言って秋田くんの肩を叩き先生が教室を出て行った。途端に、秋田くんから呼び出しがかかったのは、もちろん初日のメンバー私と絵理、貝原美帆ちゃん、相川くん、阿刀田くん。


「丸投げされたんだけど」

「ほんとひどいよね、あれ」

絵理と秋田くんが頭を抱えている。

「とりあえず話したいんだけど、今日の昼休みか放課後いける?」

「あ、放課後は私達クラブが今忙しくて」

「俺もちょっと急ぐんだ」

ということで、昼休みにみんなで食堂で話す事になった。


昼休み私達はお弁当、男子は定食を食べながらミーティング。

「どうせなら、勝ちに行こうかと思ってさ。どうやって決めるのがいいと思う?」

「立候補にすると結構みんな尻込みしちゃうよね」


うーん、と悩んでいると、男子3人の話が盛り上がり始めた。

「この間、体育で50m計測しただろ?それ手に入れてさ、足速いやつピックアップしよう」

「無理に押し付けるのもまずいけど」

「やらざるを得ない様に持っていけばいいんじゃない?」

「最初にまず上位5人くらい発表してさ」

「野郎は女子にちょっと盛り上げてもらったら何でもやるよな」

「女子は秋田くんとかに頼むよって言われたら引き受けちゃうよ、きっと」

とは、美帆ちゃん。

あれ?ってくらいスムーズに段取りが決まっていった。いいチームだな。


食堂から教室へ戻る時に、なんとなくみんなの後ろを歩いていると、相川くんが横に来て話しかけてきた。

「斎藤さんって美術部だろ?」

「うん、そうだよ」

「今忙しいのって、やっぱり応援旗の絵描いたりしてんの?」

「うん、結構力入れてるし、大変なんだよあれ」

「そっか。あのさ、去年俺赤組だったんだけど、赤組の旗がすっげーカッコいい獅子の絵だっただろ?今にも跳びかかりそうな」

「あー、はあ」

「旗が最初にバッて広がった時めっちゃ感動したんだよな。それまで体育祭とかだりぃって全然やる気なかったけど、なんか、燃えるっていうか」

「ほーぅ」

「なんだよ、ノリ悪いな。え、あれ?」


振り返ってくれるな!

私、今真っ赤だ。そしてニヤニヤが止まらない。手で口元を隠しながらも答える。

「それ、私の絵だよ。去年先輩少なくて私も描くことになって」

「マジ?あの絵?すっげ!尊敬するわ!」

「私も、すごい、嬉しいよ。そう言ってもらえるなんて」

「今年も斎藤さん描くの?何色?」

「私達のクラスも入ってる白組の絵担当する事になったよ」

「白?何の絵描くの?」

「それは言えないな」

「エロいやつ?」

「違うよ!!」

相川くんはまたぶははっ、と笑ってすごく優しげな笑顔になった。

「めっちゃ楽しみにしてるから、頑張って」


そうして、準備も滞りなく進み。

体育祭当日。

青空の下で一気に広げられた、飛翔する白鷺を描いた旗の前で私達はハイタッチを交わした。

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