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架け橋の館
月明かりの降る夜に、館の影は切り裂くように光を殺す。蝕むように空間を侵す。
洋館は木々に囲まれていた。洋館を扇ぐ風は、悲鳴を上げるかのように跳ね返り、木々へと襲い掛かる。
空間が、酷く暴力的だった。
「触れるな」、「近寄るな」と、言外の圧力を一帯に撒いているのである。
洋館は長らく人が住まうことを拒んできたのか、生活感といったものが全く感じられないほどに、静寂が上書きを重ねていた。床には埃が溜まり、壁や天井には蜘蛛の巣が、我が物顔で張り巡らされている。
その洋館の或る一室。光は射さず、闇が全てを喰らい尽くす中、充血した瞳の群れが蝋燭の灯火のように揺らめいて──




