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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
三章:新しい旅立ち
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終話:新しい旅立ち

 全治半年の重傷を負ったサイハテは、驚く事に三日で全治二週間の軽傷まで復帰した。

 砕けた骨は繋がり、骨まで達する切り傷も動いても問題ない位までには、塞がってきている。

 この結果を見たレアが、サイハテは本当に人間かどうか疑ってしまう位の、回復速度であり、今日も元気に高速でラジオ体操している彼を見て、あんぐりと口を開けていた。


「生まれつき、傷の治りは早いんだ」


 どうにも、強化人間としての特性ではなく、西条疾風個人の特性らしく、見舞いに来た本山サクラも呆れたような表情で、サイハテを見ている。


「はー、ジークは相変わらずだねぇ。そのまま死んどけばよかったのに」

「テメェが死ね」


 悪態を着いた彼に、サイハテが襲いかかった。

 重機のようなパンチに、サクラは一撃で沈黙する。

 どうでもいいが、何故殴られて嬉しそうな表情なのだろうか。サイハテは基本的に容赦がない、一般人ならば死んでもおかしくない威力でぶん殴っているのに、彼は鼻血を垂らす程度のダメージで済んでいる。


「やっぱ容赦ないや、ジークはこうで無くちゃ」

「………………………………」


 嬉しそうな彼に、流石のサイハテも呆れているようだった。


「んでさ、話は変わるけどさ。明日には発つんだろ?」


 鼻にティッシュを詰め込みながら、サクラは尋ねる。


「ああ、陽子が戦闘中毒になった。早めに戦場に戻らないといかんからな」


 流した汗で汚れた包帯を交換しながら、サイハテは答えた。


「だったら、一つ情報をやるよ。海岸線を通るのはやめときな。サバトの第二連隊が防衛線築いて、ジークを待ってるよ」


 サクラの言葉に、サイハテは眉間に皺を寄せる。

 高々一個人の為に、連隊を運用してまで防衛線を築くとは、奴らは一体全体何を考えているのだろうか。


「君は来た道を通って、新天地へ行くのさ。当然、向こうにも罠があるが、連隊と切った張ったするよりはマシ。そして、ジークが目的の場所に着いたら、ボクからプレゼントがあるってわけよ」

「お前からのプレゼントぉ? 前みたいな厄介ごとじゃないだろうな」

「相変わらず、人を信用しない奴だね。君は! じゃあ、もう一つだけ教えてやるか」


 サイハテの疑いに、少女のような見た目と、少女のような声で起こってみせた彼だが、そこは長い付き合いなので、信用されるように、もう一つ情報を渡す事にしたようだ。


「罠を張っている奴はサバトのグラジオラス。そして、ソイツはジークの逃げられない過去だ。存分に思い出に浸ってくるといいよ。殺されなければねぇ!!」


 煽るような文言を吐いたと思ったら、彼は大きく飛びのいて、自分のトレーラーに乗ってしまう。小さな体だと言うのに、とんでもない身体能力だった。


「楽しみにしてるよジークぅ。彼女を見たとき、君がどんなに苦しんでもがくのか。君は答えを出さなくちゃいけない、過去の罪を清算しなくてはならないんだ! それじゃあねー!! お大事に!」


 見舞いに来たのか、煽りに来たのかさっぱりわからないサクラは、そう言い残すと、武器満載のトレーラーに乗って去っていった。


「あーーーーーー!!」


 そして、家の中で安静にしているはずの陽子から、悲鳴に似た怒声が響き渡る。


「あいつ、私のガウスライフル盗んでいった!! ……いたたたた」


 ドアから身を乗り出して叫んだせいで、傷に響いたのか、蹲る陽子から視線を外して、トレーラーの方を見つめると、陽子のガウスライフルをひらひらと振って、逃げていくサクラの姿が見えた。

 確かに、受信所で様々な武器を手に入れたと言っても、うちの最大火力を盗んでいい訳がない。後で殺そう。


「……とにかく、明後日の朝には出発しよう。あまりここに長居していると、あいつが催促に来かねない」


 奴は武器と厄介ごとしか運んでこないので、とにかく今は出発の準備を整えるべきだった。

 いろいろな不安が残ってはいるが、ワンダラータウンとはそろそろおさらばするべきだ。サイハテは大きくため息を吐くと、準備の為に、ジープの荷台に弾薬や銃器を積み込む作業へと戻る。

 全ては新しい旅立ちの為に。

三章これにて閉幕!


だけどエピローグがあるんだ、本当にすまない。

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