ユニーク二万人突破記念:没エンディング
ユニークアクセス二万人突破致しました。(数か月前)
なので、没になったエンディングでも書かせていただこうかなと。
本編の更新はもう少しお待ち下さい。
彼が作った街を一望出来る小高い丘の上に、その彼の墓はある。
墓石に名前が刻まれただけの簡素な墓で、死体すら埋まっていない体たらくの、侘しく惨めな墓だ。彼の遺体は第三宇宙速度で、この太陽系を脱出しようとしており、最早彼が何かに利用される事は未来永劫ないだろう。
墓前の前で、南雲陽子は紙巻煙草を吹かしていた。
彼の隣に立っていた頃の、頼りない少女の姿ではなく、背も伸び、胸も膨らみ、顔立ちからは幼さが消え失せた、彼好みの女性となっている。
陽子は紫煙を吐き出し、口を開く。
「十三年」
語られたのは年月だ。
奇しくも、彼と出会う時までの年月が経過している。
「ねぇ、わかる? あんたが宇宙に消えて、それだけの年月がたったのよ」
愛おしそうに苔むした墓石を撫でて、どこかの誰かさんに似た女性にしては落ち着いた低い声で語り続ける。
「街もあの時とは比べ物にならない位、大きくなったわ。日本全国から人が集まってね、ここが新しい日本の首都になるんだって」
墓石から視線を外し、街を見つめると、隣に彼が立っているような気がした。
陽子の頭の中で生き続けている彼は、あの時と変わらない姿で、いつものように少しだけ嬉しそうに、はにかむのだ。
「あんたはうれしいんでしょ?」
想像の彼が、小首を傾げる。眉尻を下げて、困ったような大型犬の表情をしており、陽子はその顔も好きだった。
わざと拗ねて見せて、そんな表情をさせてしまった事もあったと思い出す。
「あんたの戦いは無駄にならなかった」
墓石から手を放し、あの時のようにしたり顔で言って見せる。
「倒れた仲間の望んだ未来が、倒した敵が得られなかった平和がここにある。外敵も多く、安寧とした毎日は送れないけど、街に帰れば一息つけるような、細やかな平和がここにできあがった」
それは、全てが壊れてしまった世界ではここにしか無いもので、彼--。西条疾風が死に物狂いで得て、集まってきた人間にあげてしまったものだった。
「あんたの望みは叶う。ジークなんて象徴が死んで、西条疾風なんて言う、ただの記録が生まれた。あんたと言う個人は歴史から消え去って、あんたの記録だけが人々の中で息づいている。サイハテが何を成したかった、サイハテが何を成したかは伝わって、あんたと仲間の死は記録として延々と残り続ける」
それはサイハテが最も望んだ結末だった。
記憶の中の彼はあの時と同じように満足気に笑って「それでよかったんだよ」なんて宣っている。
いつものサイハテだった、記憶の中ですら、彼は変わらない。自分の死なんてどうでも良さそうに、自分がどれだけ苦しんで、どれだけ痛い思いをして戦ってきたなんて、誰に知られるでもなく、忘れ去られても嬉しそうに笑っている。
「あんたは近い未来に忘れ去られて、歴史と言う記録の中に埋もれたその他大勢の一人になる。今ですら、あんたの事を知らないで、のうのうとあそこで生きている奴がいる」
墓石から手を放して、隣に並ぶ。
「わたしはそれが我慢ならない」
サイハテが聞いたら、驚いてひっくり返る位には冷酷な声が出た。
しばらくは風の音も止み、記憶の中にいる彼も押し黙り、長い時間が流れて、ようやっと口を開く。
「サイハテ、あの日。貴方と共に私は死んだわ。そしてわたしが生まれた」
どこぞの誰か達がよくやっていた、ガラス玉のような無機質な瞳を街に向け続けて、陽子は続ける。
「あんたの事を忘れて平和に生きたいと言うなら、わたしが思い出させてやる。その平和は誰が作って、お前達に与えたのか、教えてやる。のうのうと生きている奴等に口を揃えて、こう言わせてやる」
無表情で、背後に立っているであろう彼に向き直り、宣言する。
「西条疾風さえ居れば」
記憶の中ですら、彼の姿が見えなくなった。
こんな事を、生前の彼に言った覚えがないから、どんな反応するか分からないから、見えなくなったのだろう。
ところで、そう言われたサイハテは、どう反応するのだろうか。困惑するのだろうか、それとも今までの敵と同じように排除しようとするのだろうか。
もうそんな事を知ることも出来ない。
だからだ。
「……あんたの事、忘れさせない」
陽子は再び日本を戦火に包むつもりだ。
自分からサイハテを奪った復讐心が無いと言えば嘘になるが、それ以上に、サイハテが忘れ去れるのが嫌だった。
陽子は墓に背を向けて歩き出す。
彼の名を、未来永劫刻む為に。
このエンディングの条件
・陽子の好感度が最大値でない
・最終決戦でサイハテが死亡する
・街レベルを最大まで上げる
・つまり普通にやってるとこのエンド(ゲーム感)




