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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
三章:新しい旅立ち
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五話:崩落

 廃墟の中は薄暗い、透化金属によって光源は大きく取られてはいるものの建物自体が海中に没している為、少しばかり幻想的な暗さとなっている。

 そんな中、サイハテは一人で探索を続行していた。

 拳銃下部にダクトテープで括り付けたフラッシュライトの明かりを頼りに、奥へ奥へと進んでいく。床にこんこんと残っている丸い足跡はどれを見ても古い物ばかりだ。

 それでもクリアリングは忘れない、その行動は全て杞憂となり、探索の途中で嫌な現実と対面する羽目になった。


「むっ」


 遠目からも見えていたが、やっぱり崩落だ。鼠の通る隙間もない。

 襤褸切れが並ぶ元衣料品売り場のど真ん中、天井が崩落して通路ごと床をぶち抜いており、吹き抜けから階下を除くとご丁寧に二階の通路を埋めてしまっている。

 今更だがこのショッピングモールは全館吹き抜けで出来ており、ショッピングモールの壁に沿って足場と店舗が並んでいる。こうなると足元にも通路がある一階を抜けるしかないのだが、一階はすっかり海の底だ。


「むむっ」


 余談だが、サイハテは未来の機械は解らない。

 排水システムを見つけても復旧は元より、起動方法すら解らないだろう。ああ言った機械は悪戯防止なのかそれとも簡略化によるコスト高をカットする為なのか複雑な起動方法になっている。

 つまりは、レアをそこまで連れて行かねばならず、元よりこう言った状況下……即ち、敵が潜んでおり、その戦力が未知数の場合で戦力の分散は愚の骨頂だ。


「むむむっ」


 だが、分散するしか方法はない、ここで引いてしまったら装備の更新も出来ず、目標を達成する事も出来ない。

 亡霊とやらが元自衛隊基地に居座っている限り、銃器を買う事も出来ないだろう。

 武器を鹿島工業地帯に買いに行く、と言うのも無しだ。

 地形の問題からワンダラータウンから北に出発してサバト勢力圏の成田付近を通らなくてはならない。

 サイハテは前回の戦闘で力を示し過ぎたばかりか、多数の目撃者も残してしまっている。あの付近を通ったら間違いなく戦闘になるだろう、サイハテは徒歩ならまだしも、あのデカイジープを隠しながらの行軍には向いていない。

 道中の危険度から、徒歩で向かう事も厳しい。陽子とレアも居り、これから厳しい旅路が予想される中、彼女らを無駄に消耗させるべきではなかったのだ。


「むむむのむっ」


 ならば、致し方ないだろう。

 レアには悪いが海水浴に付き合って貰うしかない。


「と、言う訳なんだ」

「いや、どう言う訳よ」


 戻って開口一番にそう言ったら陽子にツッコまれる。

 仕方がないのでサイハテは説明の為に話す事にした。


「かくかくしかじか」

「まるまるうまうまと言う訳ね、本当にそれで解ると思ったの? ちゃんと話しなさい」

「……はい」


 流石にこれ以上は怒られそうな気がしたので、陽子のスカートを捲りながらサイハテは話す。


「三階の奥に進んでみたんだが」

「いや、ちょっと、なんで私のスカート掴んでるのよ」

「落ちて来た天井が床をぶち抜いていて進めなくなっていた」

「ちょ! 捲らないで!」

「二階の方も落ちて来た瓦礫で塞がれていてな」

「はーなーしーてーーーー!!」

「一階の海中部分を通過しないと通れないだろう、赤か」

「ちょっと! 顔ちかい! なんでそんなマジマジと……!」

「そこでレアを背負って向こうまで泳いでみようと思う、Tバックは早いんじゃないか?」

「私の勝手でしょ! パンツ三枚しかないの! ってそうじゃない!!」

「どうだ、ついて来てくれるか?」

「お尻を撫でるな! いい加減にして!」

「危険な行程になると思うが、頼む。クンクン、これ柔軟剤使っただろう?」

「頬擦りするなぁー! 臭いを嗅ぐなー!! 尻が柔らかいのは当たり前だーーーーーー!!」

「俺のケツは硬いぜ?」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 鼻が穴に!?」


 猟銃のストックでガスガス殴られながらの説明だ。

 流石のレア博士もドン引きである。


「ふーっ! ふーっ! ほんと! サイハテってサイテー!!」


 スカートの端を抑えて涙目でこちらを睨む陽子に、サムズアップして見せる。


「サイハテは一週間トイレ掃除!!」

「君達の排泄物の除去とか、ご褒美かな?」

「……さいじょー、さすがにそれは、しんだほーがいー」


 最近は大人しくしていたので、溜まっていたのである。

 何はともあれ、レアは着いて来てくれるようだ。物凄く不安そうな眼差しを向けられたが、サイハテとしては心外だ。


「レア」

「…………………………………………なぁにぃ?」


 凄く嫌そうな返事をされる。


「安心しろ」


 ぽむっと彼女の頭に手を置く。


「俺はゆりかごから棺桶まで行ける男だ」


 そう教えてやったらレアは凄い速度でハルカの背後へと隠れる。いい身のこなしだった。


「やっぱり、ぼく、いかない」


 撫でられた頭を手で払いながらの言葉だ。

 流石にその行動はサイハテと言えども傷つく……事はなく凄く楽しくなっている。


「場を和ませるジョークだ。そら、行くぞ。大体、出てくる穴には興味があるが、出てきた物には興味は少ししかない」


 ハルカの背後に手を回して、レアの襟首を掴んでサイハテは動かなくなったエスカレータの方へと向かっていく。

 レアはズルズルと引き摺られながらも、


「たぁ~すぅ~けぇ~てぇ~……」


 間延びした救援要請も忘れなかった。


変態!変態!変態大人!


この変態行為は友人(女)にアドバイスをいただきました。

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