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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
三章:新しい旅立ち
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二話:探索計画

 家に戻ってきたサイハテは、ささっと準備を整える事にした。

 とは言っても弾薬は欠乏し、銃火器は拳銃か散弾銃のみ。まともな小銃もなくどうやって準備すればいいのか、サイハテも頭を悩ませていた。

 唯一の遠距離戦が出来る武装と言えば、陽子の猟銃かハルカの57mm機関砲位だろう。

 だが猟銃は火力不足で、機関砲は火力過多だ。ソフトターゲットに使う武器じゃない。


「どうしたものか……」


 サイハテは悩む。

 正直、火力不足による失敗か、機関砲によって更地になった基地しか想像できない。

 自衛隊の弾薬庫は防弾コンクリート製とはいえ、流石に57mm徹甲弾の嵐に、老朽化したそれが耐えられるはずがない。


「えーっと、何を悩んでるの?」


 ずらりと並べた銃器の前で唸っているサイハテに、陽子が溜まらず話しかける。


「……45口径拳銃弾が二十七発、9mm拳銃弾が十五発。5.56mm小銃弾五発。20mm機関銃弾が二百ちょいに、57mm徹甲弾が六十、榴弾が百。どうみても弾薬と銃器が足りない」


 ヘリや戦車の相手なら出来るだろうが、ワラワラと湧いてくる怪物相手ではどうにも、小口径の弾薬が心許なかった。


「あー、どうも弾が少ないのよね……でもサイハテならなんとか出来るんじゃない?」


 陽子は随分と気楽な事を言ってくれているが、流石に怪物相手に刀やナイフで戦いたくないのである。


「無理なものは無理だ。ただの人間だぞ。俺は」

「………………そうだったわね」

「おい、なんだその間は」


 スーパーヒーローでも無く、サイハテはあくまでも人間だ。青いタイツとラウンドシールドで戦える奴とは違う。


「ともかく、銃弾が必要だ。この辺りに銃砲店ってあったか……」


 ワンダラータウンで銃弾を買う、と言う手もあるにはあるが、それは最終手段だ。

 黒色火薬を詰めた粗悪銃弾ならまだマシで、中には火薬が詰まってない銃弾も販売している場所だ。十中八九、痛い目を見る。


「良質な弾薬を売ってくれるトレーダー、先月来なかったものね」


 鹿島工業地帯から弾薬を運んでくるトレーダーは、目標地点付近で行方不明になったばかりだ。

 おかげで、ワンダラータウン内は弾薬の値が上がりまくっている。


「弾薬と銃器を補充できる場所……くっそ、俺には心当たりが基地しかないぞ」


 これがアメリカだったら、街中やショッピングモールに銃砲店があるので補充は容易だろうが、生憎、ここは日本だ。

 街中にそんなものはない。


「釘バットや鉄パイプで武装しろってか……?」


 それは一体全体どこの世紀末なのだろうか。両者とも拳より硬い為、打撃武器としてはそこそこ優秀な部類だが、人をぶん殴るようには設計されてないので脆いし、扱いづらい。

 せめて、自動小銃がないと、この世界では話にならないだろう。拳銃はほとんど使われない武装であり、現代の軍隊でもその効果は疑問視されていた。

 使わない武装ではないのだが。


「どうしたもんか……」


 サイハテは相変わらず悩んでいる。

 まさかここまで素寒貧になるとは、そして、自衛隊基地が危険だとは思わなかったと言えば、言い訳になる。


「いっかしょだけなら、こころあたりがあるー」


 奥から様々な機械群を抱えて出て来たレアが口を開いた。彼女の一か所だけと言うのは後どれくらいあるのだろうか。


「ただ、でぱちかみたいなばしょだから、ほーらくしてるかのーせーがたかい。それでも、いく?」


 デパ地下と聞いて、一気に不安になるサイハテ。何しろ、自分の知っているデパ地下に銃器が置いてあるとは思えないからだ。


「そこで弾薬と銃器の補充が出来るのか?」

「べーけーやみしょーにんが、べーこくからいろいろ、うりにきてたばしょ。ここらへんがかんらくしたとき、かれらはとりのこされていたはず」


 つまり、死体や銃器、はたまた弾丸と人生を終えた奴らが居る場所と言う事。レアの時代で日本は大分弱っていたらしい。


「この地図で言うと、どのあたりだ?」


 陽子が図書館から見つけ出した地図を、レアの前に置く。


「このあたり」


 レアが指を置いたのはワンダラータウンのすぐ近く、廃墟となった港街であった。

 波による浸水が進んでおり、大分危険なのだとか。


「……近いしな、一か八か。向かってみよう」


 危険だったら撤退すればいい。

 それに、目標物が地下にあるならば、地上戦はハルカに任せる事ができるし、車載機銃も役に立つだろう。

 だが、問題は地下である。

 相手が人であるなら未だしも、感染変異体が相手になった場合、火力が足りずに撤退と、更に火力を下げる羽目になるかも知れないのだ。

 これは、サイハテにとっては大きな賭けだった。


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