終話
キャンプは滞りなく終了した。
余った食材は醤油漬けにしたり、干物にしたり、燻製にしたりとこれからの為に保存させてもらった。
それも、調味料の関係から微々たる量だが数日間は腹いっぱい食えるだろう。だが、問題は別の所から噴出してしまった。
時代は西条疾風と言う人間ではなく、ジークと言う偶像を求め出している。自分自身はいつの間にか、弱者が縋る偶像になってしまっていた。
そして恐らくではあるが、いつしか偽者が騙るのではないだろうか。自分こそがジークであると。
ワンダラータウンの廃屋で、西条疾風は考える。
嘗ては無辜の民が守れればよかった。自由と平和の守護者として銃を握る事に不満はなかった。
だが、時勢がそれを赦さなくなっている。人は力ある者へと集い、自らを守護しようとする……サバトが一大勢力となっているのは、単純に強いからだ。強ければ強い程、この時代では人が集まる。
何しろ、強くなければ人として生きれぬ場所と化してしまったからだ。守ろうとした日本がこうなって、悲しい気持ちもある。だが、だからと言って不貞腐れている場合でもない。
「……もう一度、やってみるか」
思わず口に出てしまう。
勤めは十二分に果たしたし、友の死も、既に無駄ではない。
それでも、日本には、弱い人間には、守護者が必要だ。
だから、もう一度……いや、今度こそ自分の意思で銃を握ってみようと思う。弱者が口を揃えて名前を呼ぶなら、名乗らなければならない。
「俺はジークだ」
短いですがエピローグと言う事で。
次章に続きます。




