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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
二章:生きる為の道しるべ
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二話:変態と変態の理念

 食事の用意は陽子の仕事だ。

 だがしかし、現在は材料も道具もなく、すっかり日が落ちた後の廃屋で二人揃って糞不味いチョコバーを齧る羽目になった。


「不味いわね」

「ああ、不味い」


 ぼそぼそしてて、その割には固くて、口の中に残る甘さと、ギトギトした後味が最悪だった。

 それでも、サイハテはどこか懐かしそうな表情を見せた。


「昔、敵に山の中まで追い詰められてな。三週間、これで食いつないだ事がある」


 サイハテからこう言った話題を出すのは珍しい。なので、


「へぇ、それで?」

「手持ちのC4で地下水脈を爆破、下流の村ごと敵を薙ぎ払った」


 要するに大規模な土砂災害を起こしたのだ。

 テロリストもびっくりなサイハテに対して、陽子は複雑な表情を浮かべるが、彼は気が付いていない。


「中共人が環境破壊していてくれて助かった。でなければもう一月程潜伏期間が伸びていたな」

「……半分自業自得ね」


 木を伐り過ぎれば、いつかはそうなる。


「ねぇ、サイハテ」

「なんだ」

「あんたはさ。怖くないの?」


 その言葉には敵と戦うのが、とか、人を殺すのがとか、前に着くのだろう。

 その言葉にサイハテは水筒の水を啜り。


「怖いさ」

「じゃあなんで……」


 あんたは戦えるの?

 その言葉はサイハテの指に遮られた。


「最初に言っておくが、俺だって人間だ。人並み……か、どうかは知らんが恐怖だって感じるし、面白い事には笑ったりもする。だから敵と戦うのは怖いし、敵を殺すのは罪の意識だって感じる」


 その言葉を聞いた陽子は、目をぱちくりさせる。


「俺は憶病なんだ。痛い思いは嫌だし、殺されるのはもっと嫌だ。だから、嫌じゃない方を選ぶ」


 それは到底、夢に見たあの男の言葉ではなかった。意を決して、陽子は言葉を放つ。


「……それは嘘よ」


 それを聞いたサイハテの片眉が跳ね上がった。


「あ、あんたは!」


 勢いよく立ち上がった陽子は胸の前で両の掌を組んでいる。


「あんたは……」


 何かを言おうとしているのは解る、だが、言葉が出てこない。


「……ごめん、なんて言っていいかわかんない」


 自分は何を言おうとしたのだろうか、と陽子は考えてしまう。サイハテは戦う事しか知らないからそうなるしかない? いいや、サイハテは別の生き方だって出来るはずだ。


「多分、あんたにまだ人殺しをさせているのは……わた」

「それ以上言ったら怒るぞ」


 ゾッとするような、底冷えした声色に陽子の体は竦む。


「誰かの為だから、誰かのせいで、こんなのは全部嘘っぱちだ。俺は、俺の意思で敵を殺した。結局、自分に降りかかる全ての減少は自分のせいなんだ」


 全ては自分の意思。

 それがサイハテの知る答えだ。


「誰かの為にぃ? バカバカしい。そいつの為に何かしたいと思ったのはお前の意思だろ」


 吐き捨てるような言葉。


「誰かのせいでぇ? アホか、そうなる前に手を打てなかったお前が悪い」


 苛烈な人生を歩んできたサイハテの言葉は酷く重かった。


「時間が足りないだの、なんだの色々な要因があって出来なかったのはただ単に自分の運がなかっただけだ。それを何かのせいにする事だけはやってはいけない。その言葉だけは、吐いてはいけないんだ」


 陽子は目から鱗だった。

 彼女が生きていた時代は老人至上主義が横行する時代だった、何かとあれば若者のせいでー。若者がーと喚く老人が多かった。


「……なんで?」


 理解出来ないから聞いてみた。


「その言葉は、自分のいままでを否定する言葉だからだ。誰かの為に生きるなんて不可能だからな」


 それは、日本人が愛する思いやり精神を根っからばっさり否定する言葉だった。


「で、でも! 自分を否定しかできない弱い人はどうすればいいのよ!」

「人間に強い弱いはない。やるかやらないかの差があるだけだ」


 だが、陽子はその言葉を認めたくない。何故だろうか、そう例えば、童貞が恋愛観を語っているような……。


「……あ」


 唐突に出された間抜けな響きにサイハテは首を傾げた。


「その格好で納得しろと言われても無理よ」


 バニーガールサイハテは自分の格好を見て。


「なるほど」


 と相槌を打つのであった。







 早朝4時47分。

 太陽は山から顔を出し始めている頃、サイハテと陽子は行動する事にした。

 陽子は少しばかり露出が多いが、まだまともな格好だった。


「ねぇ、サイハテ、その格好はやめない?」


 対する我らが変態は相変わらずのバニー姿である、バニーサイハテである。


「ふっ、世界が俺の美しさに嫉妬するのか」

「単純に目障りなんだけど」

「ああ! 俺の美しさは美少女までも嫉妬に狂わせる!!」

「箪笥の角に小指ぶつければいいわ」

 鼻を鳴らす陽子に対して、サイハテはサイドチェストで答える。


「それで、ここは椿の海って呼ばれる湖で、ここは旧旭市あたりなのね」


 話を切り上げた陽子は昨日受けた説明を繰り替えす。


「ああ、ここから北西に20キロ行けばレアが居たラジオ塔があるが……湖があるからな。迂回するから時間がかかるぞ」

「そう、なるべく急ぎましょ。あの子が心配よ」


 その言葉に、ああと返事をするとサイハテは先行して歩き始める。


なんか投稿エラー多くないですか?

というか、なろう全体が使いにくくなってるような

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