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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
一章:放浪者の町
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十八話:友を目指して

お久しぶりです皆々様。

当方事故で入院しておりました。現在リハビリの為に通院中の為、非常に短い小説になりますが投稿させていただきました。

 百合の悪夢(ナイトメアリリィ)は転がった手榴弾を拾いつつ、サイハテが消えたエレベータの方向を見やる。

 手榴弾は物の見事に火薬や信管が抜かれており、完全な金属の塊となっている。これでは追いかけて使うにも、相手にぶつける位しか使い道がない。

 悪夢は、それを手で弄びながら微笑む。


「……フフフフフフフフフフフ」


 昔見たドラマとは違う人間性、イケメン俳優が演じていた彼とは大違いの野性味溢れる男だったことが印象に残っている。

 弱々しい雰囲気など微塵もない、鍛え上げられた肉体はまるでギリシャ彫刻、嘗てのスパルタン達にもあれ程の益荒男はいなかっただろう。あれに抱きしめられるのは、女としても一つの目標と言える位に魅力的な肉体であった。

 そして何より顔立ちだ、整っているが故に彼の無表情は恐怖でしかない。だが、あの整い方だ、普段笑わないのもいい、彼に微笑んでもらえたら、腰を抜かすかも知れない。


「素敵だわ」


 今回はただの遭遇戦、悪夢の百合も、彼を探しに来た訳ではなかった。

 と言うか、彼は死んでいるはずなので生きているとは微塵も思っていなかったのだ。だから悪夢の百合はここに来た。

 目標は、永い眠りについた彼、だが。


「あっちもほしいわね……」


 本物が居るなら、そっちも欲しくなってしまうのが乙女心と言うものなのだ。百合は通信機を何もない空間から取り出すと。


「私よ、男と女の子がエレベータで地上へ向かったわ。女の子の方を捕えなさい」


 と、言い放ったのだ。










 エレベータが地上に着く、長い揺れのせいで、体から平行感覚がずれつつあった。


「んー、随分と深い地下に造ったのね、あの施設」


 陽子が大きく伸びをしている横で、サイハテは自動小銃の調子を見ている。

 あの保存ガスでも経年劣化は避けられないのか、整備をほったらかしにした小銃のようながたつき具合になっている。

 ただちに故障はしないが、整備をしないとその内痛い目を見るだろう。


「…………………………」


 突如、サイハテの視線が扉へと向く。

 すると爆音と衝撃ともに扉が弾けて、陽子の体が宙に舞う。


(ドアブリーチャー!!)


 視線が思わず、地面に叩きつけられる陽子へと向き、砕け散った扉から入ってくる敵性戦闘員の姿を見逃してしまう。

 昔に培った感覚が、反射のようにサイハテの体を机の後ろへと逃げさせる。その机を、弾丸の嵐が叩く。


「パッケージ確保!」


 陽子を担いだ男の影が、視界から消え去る。

 相も変わらず、弾丸の嵐は止む事はない。


「ちっ」


 思わず舌打ちをしてしまう、先程の事といい、今といい、どうやら自分は気を抜きすぎていたようだと、サイハテは自嘲する。

 マグポーチからマガジンを引っ張りだし、自動小銃(相棒)へと叩き込み、机に手をかける。

 重さ100キロの防弾机、自分達最初の番号付き(アルファナンバーズ)がどれだけ警戒されていたか、わかる逸品を、今は最大の武器とする。


「ふんっ!」


 机を少しだけ浮かすように持ち上げ、盾にしながら部屋の入り口に陣取った兵士達へと突撃する、発砲光からおおよその位置は解っている。

 相手は民兵に毛が生えた程度の練度だ、部屋の入り口に陣取ったまま、射撃を繰り返していた。そいつらを、ダンプカーのように跳ね飛ばした。

 机と壁に挟まれて、もがく間抜けが三人、ひっくり返ったのが五人。


「っ!」


 右手に小銃、左手に拳銃を握り、ひっくり返ったカエルどもを撃ち抜いていく。もがいていた奴らは、発砲音に反応したのか、ぶら下げていた小銃を取って、こちらに向けようとしているのが見て取れる。

 小銃を拳銃を上へと投げる。ぼろい銃器を地面へと投げ捨てる訳にはいかない、故障してしまうからだ。

 そして、背中に担いだ刀の柄を握ると引き抜いて一閃。

 三人の首を同時に跳ね飛ばして、すぐさま刀を鞘に叩き込み、ニュートンの法則に基づいて落ちてきた小銃と拳銃をひっつかむ。

 一瞬で八人を始末したサイハテは、拳銃をホルスターに戻すと小銃を構えて走り出す、目指すは友人(・・)の元、こんな自分をサイハテで良いと言ってくれた少女の元へと駆けだすのだった。

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