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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
七章:風音と疾風
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七話:自分語り

更新ボタン押し忘れてました。

すいません、許して下さい。なんでもしますから。

「俺達アルファナンバーズは、愛情と言う物から遠ざけられて育てられた。何せ、本来は日本を共産化させる為の革命戦士だからな。情と言う感情は、邪魔だったんだろうさ」


 ボロボロになった病院の天井からは、木漏れ日のように太陽光が降り注いでいる。その灯りの仕業か、彼の腰掛けているベッドのシーツは、すっかりと黄ばんでしまっていた。

 それを気にも止めていないかのように、サイハテは顔を顰めている。


「共産主義者と言う存在は、インテリ気取りの馬鹿野郎共だ。資本主義と言うシステムを利用できるまで、賢くなれなかった学歴だけの高学歴と、にっちもさっちもいかない馬鹿な貧乏人が信奉する宗教だ。生かしてはならない奴等だから、見つけたら殺せ」


 出来れば思い出したくもない記憶なのだろう。

 彼は、憎悪に歪めた表情のまま舌打ちすると、貧乏揺すりを始める。


「……ハヤテ?」


 そんな様子を見て、不安になった風音が声を掛けると、彼はびくりと体を震わせると、驚いたような表情で少女を見つめ、罰が悪そうに言った。


「いかんいかん。どうも、共産主義とか、コミュニズムとか聞くと感情の抑制ができなくなる。話を戻そう」


 先程までの憎悪はどこに行ったのやら、サイハテはいつも通りのムスッとした不機嫌そうな表情に戻ると、続きを話し始める。


「それでだ。俺が七歳の頃位だったか、俺達アルファナンバーズがクソッタレの共産主義者のゴミムシ……共産主義者から解放されてすぐの頃かな」


 そんなに共産主義が嫌いかと尋ねたくなる位の憎悪っぷりではあるが、ここで余計な口を挟めば、それこそ彼は止まらないだろう。

 風音は黙って話を聞く事にする。


「アイツが話しかけてきた」

「……なんて?」

「『ねぇ、アルファ33(αスリースリー)、世界には愛って素晴らしい物があるの! 知ってた!?』って」


 子供の声だった。

 興奮を隠しきれていない、幼子の声色を再現して、サイハテは喋ったのだ。


「……それで、ハヤテはなんて答えたのさ」


 少しばかり、引きながらも風音は聞き返す。


「知らない、興味ない。と答えた」


 今度は呆れてしまう。

 知らないだけならば、まだ憐憫を誘ったが、コイツは会話を切るかのように、興味ないとも答えたのだから、しようがない。


「……けど、アイツは諦めなかった。『じゃあ、これから一緒にお勉強だね』なんて言って、見たくもないホームドラマだとか、メロドラマとかを見せられた」


 興味なかったんだけどな。なんて呟いた彼の横顔は、懐かしさを噛みしめているように見えた。


「一緒にそんな事をしていると、他の奴等も興味持ってな。いつの間にか上映会となっていた」


 だが、そこまで語ると、サイハテの表情は再び不機嫌そうな表情へと戻ってしまう。

 親子と言えど、付き合いの短い風音には、鉄面皮の奥底に隠されてしまった感情を読み取る事は出来なかった。


「……俺達の学習能力は高いみたいでな。そう言った物から一ヵ月程度で、感情を獲得した。それからは、至って普通、かどうかは分からないが、幾分か子供らしい子供にはなったと思う」


 そこまでならば、めでたしめでたしで終わる話だろう。

 だが、彼の話には続きがありそうで、その話は、なんとなく聞きたくないと感じてしまった。新人類特有のウイルスによる演算補助、そこから得られる未来予知のような物が、警鐘を鳴らしている。


「どうやら、新しいご主人も、俺達に感情と言う物は持って欲しくなかったらしい。感情を獲得して、三年後位か。俺達は殺し合いを強要された」


 そこまで語ると、サイハテは長く息を吐きだした。

 あっさりと語られた血塗られた過去に、風音はなんと言うべきか思案するが、答えは出てこない。孤独であった少女が、こんな状況で何か言えるわけがないのである。


「二百人居た俺達は、殺し合いで二十人まで減った。そして、感情を持ったおかげで、俺達は罪の感情を植え付けられた」


 相変わらず、彼の表情に感情は出ない。

 それでも、目はどこか遠くを眺めていた。


「兄弟姉妹を糧にして生き残ってしまった、という強迫観念が、民主主義と自由に対して、強い忠誠を産み出した」


 サバイバーズギルトのような物だろうか。

 ひび割れた壁の隙間から流れてくる、秋らしい風を頬に感じながら、いくら考えても答えの浮かばない言葉を諦めて、少女はただただ、風と父の言葉に集中する事にした。


「糧になってしまった彼等の為にも、俺達は戦わなければならない。民主主義と自由の旗のもとへ埋まっている兄弟姉妹の安息を守る為にも、その旗は守らなくてはならない。そんな強迫観念を抱いた」


 サイハテの短い髪が、風に靡いている。

 彼は自嘲するかのように強く鼻を鳴らして、言い放つ。


「要するに、俺達は悲劇に酔ってたのさ。産まれた感情から目を反らし、自分を納得させる為に、そんな事を考えながら、戦った。誤魔化しで人を殺す、悲劇のヒロイン気取りの糞野郎と糞女郎ども、それがアルファナンバーズの姿だった」

具体的にはおまけ書くから許して下さい

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