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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
六章:父として出来る事
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終話:逃走

すごくもじけぇです

 武器を手放した風音を見て、ノワールは一瞬だけ、悲しそうに表情を歪める。

 拳を強く握り、ゆっくりと開いた彼は、腹部に突き立ったままの刀を引き抜いて、切先をだらりと垂れ下げた。

 出会った頃のような、感情が読めない瞳で少女をじっと見つめると、小さな声で呟く。


「……君を殺す事になるなんて、思わなかった」


 その声色は、強い感情が滲んだ物で、強い失望と、その裏に隠された僅かな悲しみを感じ取る事が出来た。

 ゆったりと振り上げられる刀を、目で追い、それが地面から垂直に掲げられた所で、風音はにんまりと笑って見せる。


「大丈夫」


 彼が、怪訝そうな表情を見せた。


「わたしは殺されない」


 そう宣言した途端、大口径の機銃による轟音がが響き渡り、ノワールの腕が弾き飛ばされる。どこか煩わしそうな目で、音の方向を見つめ、サイハテが車載機銃を構えている姿を確認すると、彼は困ったかのように肩を竦めて、言い放つ。


「みたいだね」


 連続した発砲音と同時に、ノワールの体は見る見るはじけ飛んでいく。飛び散る己の肉片と血しぶきを、軽く目で追った後、風音をじっと見つめて、車の方向を顎でしゃくった。

 さっさと行け、と言う事だろう。

 彼に返礼をしようと考えたが、銃弾の一発が頭を吹き飛ばしたらしい。崩れ落ちた彼の体に背を向けて、少女は車へと走り出す。


「風音! 急いでくれ!」


 機銃に凭れ掛かるサイハテが、ジープの扉に手をかけた風音を急かす。ちらりと背後を見ると、穴だらけの体を再生させながら、ゆるりと立ち上がるノワールが見えた。

 三分の一程しか残っていなかった体は、みるみると再生していき、吹き飛んだ腕までもが、傷口から伸びた触手によって、再生していく。


「しっかり捕まってて!」


 運転席へと飛び込んだ風音が、サイハテにそう警告する。

 シートベルトをしっかりと絞めて、ギアをバックにいれると、迫ってくるノワールから離れる為に、力強くアクセルを踏んで、要塞のような別荘から飛び出すのだった。


「……あー」


 体を再生させたノワールは首を回し、骨を鳴らすと走り去る車が見えなくなるまで、動かなかった。彼の隣に、今までの戦いを見守っていた白い女、ナイトメアリリィがやってくると、ようやく動き出して、彼女の顔を見つめる。


「アハハ、負けちゃったよ」


 と、情けなさそうに言った。


「フフフ、そうですわね」


 だが、手痛い反撃を受けたノワールも、彼が一度殺害される所を見ていたリリィも、特に気に病んだ様子はない。

 優秀な将官(グラジオラス)を失えど、これは敗北ではない事を、これは敗北ではない事をよく理解している。


「……それで、このまま見逃されるので?」


 ばっと開いた扇子で、口元を隠しながら、白い少女は問う。

 黒を名乗る男は、小さく肩を竦めると、返事をした。


「そんな訳ないだろう」


 二人が逃げた方向に目をやり、悪党面によく合う笑みを浮かべたノワールは、言い放つのだ。


「第七航空騎兵大隊を招集しろ」

なんで前話にまとめなかったのか

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