表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
六章:父として出来る事
240/284

三十七話:殲滅戦3

今回は短ぇです。

 電解液の電力が全て無くなってしまったのだろう。

 先程まで軽やかに動けていた四肢はがっちりとロックされ、指一本動く事はなく、様々な映像処理を行っていた投影型モニターは、ただの樹脂プレートと成り果てている。

 それでも、落ちていると理解できるのは、体にかかる浮遊感のお陰だろう。


 今、空のどのあたりに居るかなんてサイハテには理解できないが、少なくとも、地面へ向かっている事だけは確かだった。

 いくら駆動甲冑が頑強と言えど、中の人間が頑丈になった訳ではない。

 地面にぶつかった瞬間、甲冑で殺しきれないエネルギーが、己を圧殺する。彼は、そんな知識も持っていた。


「……」


 だが、取り乱す事はない。

 サイハテとて、間近に迫った死は怖いのだ。

 今際の際まで、意地を張り続ける人間は、存在しない。特に、誰も見ていない状況ならば、どんな強固な精神を持っていたとしても、取り乱すだろう。


「……そろそろだな」


 閉じていた目を開く。

 相変わらず、樹脂プレートには何も映し出されていないが、彼には確信があった。

 リズが二十秒といったなら、二十秒で目的は果たされると言う事を。


「来たっ!」


 突如として、樹脂プレートに映像が映し出された瞬間、サイハテは全力で振動ジェットを吹かした。

 体にかかるGのお陰で、再びブラックアウトを経験しながらも、手に持っていた対戦車ライフルを構えると、こちらに向かってきている偵察部隊の、装甲車へと狙いをつける。

 照準の十字線を合わせ、唇を舐めると、叫ぶ。


「さあ、ロックンロールだ!」


 そのまま引き金を絞ると、発射薬の大きな衝撃で、機体は大きくバランスを崩した。

 空中で一回転しながら、バランスを保つと、光の尾を引きながら弾薬は直進し、吸い込まれるように装甲車へ突入し、大穴を穿つ。

 装甲は身を守る盾でもあるが、打ち破られた時、破片となって、搭乗者を殺傷する刃ともなる。

 

「悪くない」


 と、サイハテは75mmライフルの威力を評価する。

 正面装甲を突き抜けて、内部で爆発するタイプの徹甲榴弾だったこともあり、動きの止まった装甲車から、歩兵が出てくる事はない。

 周囲を走っていたバギーが止まり、数人の兵士が砲撃から身を隠す為に、元は家だった瓦礫に伏せているのが見えた。


 まだ発見されていない事に安堵した彼は、彼らの上空まで移動しながら、ウエポンラックに着けた機関砲と、ライフルを交換する。

 そして、歩兵の上空を通り過ぎると共に、30mm砲弾の掃射を浴びせて去って行く。

 生体センサーを積んでいる駆動甲冑のモニターに、反応がない事を確認してから、残りの部隊へと向かう。


「……この兵器は、厄介だな」


 無傷で偵察部隊を打破したと言うのに、彼の声色には不安が入り混じっている。

 それもそうだろう、歩兵の制圧力を持ちながら、ヘリの展開能力と、ガンシップの火力を組み合わせたような兵器である。

 継戦能力が低いのは重々理解しているが、この兵器は戦場を変える物だと、理解できてしまった。


 超振動ジェットの排熱が上手くいっていないので、一度着陸し、ヒレ(フィン)を冷却しつつ、彼は大きなため息を吐く。


老兵(ロートル)ってのは、こんな気分なのかね……」


 時代に取り残されて、使い慣れた火薬兵器だけを信じて戦ってきた男は、どこか寂し気に呟く。


「俺も、光学兵器とか使わなきゃいけないみたいだな。全く……俺も度し難い奴だ」


 鉄と木でできた武器から、セラミックと強化プラスチックで出来た武器へ、移行する時の古参兵もこんな気持ちだったのかなと、考えながら、彼は再び飛翔を始めた。

 目指すは、基地に向かっている他の偵察部隊である。

そして、水曜日に間に合わなかった件


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ