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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
六章:父として出来る事
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三十話:懐かしき仲間3

間違えて没になった話投稿してました。

「それでも流れ弾とか危ねぇだろうがぁ!!」


 被爆はしたくないらしく、クロノは絶対に拒否をする覚悟を決めている。

 その様子を見ていたリズとサイハテは、アイコンタクトで会話をすると、ささっと前言を翻してしまった。


「それなら、別の作戦にしよう」


 ころっと作戦を変えた事に、安心したのか、それとも呆れたのか、若しくは両方の感情だろうか、クロノが大きく肩を落として額を抑えていた。

 その様子に気が付いているのだろうが、アルファナンバーズの二人は無視をして作戦を立案している。


「原子炉があるなら、ウランの濃縮位やっているだろう。それを使いたい」


 と、サイハテが言うと、


「そうだねぇ……大気圏外核爆発が有効かなぁ」


 リズが恐ろしい捕捉をする。

 放って置くと、間違いなくEMP攻撃による大規模停電が起こり、サバトの首都機能は大打撃を受けるだろう。そこから生まれるのはインフラ不全による餓死者や、渇死者だけでは飽き足らず、地下水道の電気柵も止まり、そこから変異体が溢れてくるに違いない。


 サバトが守る国家、新大阪民主主義人民共和国には、二千八百万人の人口が居る。この人数は、日本に残っている全人口の四十パーセントにも上る。

 そんな人口が死んでしまえば、日本の復興は更に遅れてしまうだろう。

 それだけは、クロノとしても避けなくてはならない事態だった。


「待て待て!! ここには二千八百万人もの人間が居るんだぞ!? この人達が死んだら、日本人が絶滅しちまうぞ!」

「リズさんは別に困らないからぁ」


 ケラケラと笑いながら、それを肯定するリズを見て、背筋に寒い物が流れる。

 冗談めかして口にした言葉に聞こえるが、本気で言っている事に、付き合いの長いクロノなら気が付く。しかも、気が付かれる事を知っていて口にするのだから、質が悪い。

 助けを求めるつもりで、サイハテを見ると、彼は悩んでいた。


「……な、なぁ、西条さん。アンタも、その、同意見なのか?」


 そう尋ねると、彼は首を左右に振って、違うと意思表示をする。


「いいや、俺はそこまでやるつもりはない」


 その言葉に安堵する男と、驚く女が居た。

 リズである。


「うっへぇ、ジーク。どうしたの? 共産主義者(コミュニスト)なんて、いくら死んでも構わないでしょぉ?」


 これがアルファナンバーズの基本スタンスでもあった。

 中立の彼らは、己の正義では戦わない。ただ、与えられた任務のみを全うする、生きる殺人機械なのだ。そして、日本が与えた共産主義者を滅ぼせと言う任務は、未だ有効であり、薬物や暗示を使って脳に刻み込まれているおかげで、消え去る事はない。


 反射的に共産主義者を殺すなんて事はないものの、それらが滅ぶ事は当たり前のように振る舞ってしまう事があった。


「誰が死のうが、人類が滅ぼうが俺には関係ない。それは確かだ」

「じゃぁ」


 いいじゃん。

 そんな事を口にするのが予想できたので、サイハテは首を左右に振って、否定の意を示す。


「良くない」


 己でも矛盾していると分かっている物言いに、リズの表情が消える。遺伝子操作で産み出されたアルファナンバーズは、どれもこれも整った顔立ちをしており、そこから表情が消えれば、人形の様に見える事がある。


「……何がダメだってのさ」


 胸を持ち上げるように、腕を組んだ彼女は、抑揚が無くなった声色で尋ねてきた。

 本来のリズを前に、サイハテは緩やかに目を閉じると、渋々と言った様子で、口を開き、答える。


「あの子が、泣く」


 そんな事を言われても、クロノとリズは伺い知れない。

 女は眉間に皺を寄せ、男は首を傾げる位、訳の分からない言動であった。

 案の定と言うべきか、表情の変わらないリズが彼に詰め寄ってくる。


「あの子ってだーれ?」


 その問いに、サイハテは珍しく唾を飲み込むと言った動作を行うと、出来るだけ平静を保って返事をした。


「南雲陽子、館山にある街のリーダーで、アルファナンバーズのボスでもある」

「ふーん、それだけじゃ、ないでしょぉぉぉぉぉ?」


 ずいずいと近寄ってくる顔から眼を反らし、彼はどうやら、逃げ切れないらしいと判断する。


「……ただ、俺が嫌なだけだ。本当に、ただ、それだけなんだ」


 顔を背け、目線を反らす。

 いつも真正面から見返すむっつりとした表情もどこかに行って、すっかり人間らしい顔つきになったサイハテを見て、リズは肩を竦める。


「……温くなったね」

「理解している」

「その甘さは、いつかジークを殺すだろうねぇ。自分に殺されてちゃ、世話ないね」

「……わかっているよ」


 非情であるからこそ、中華での作戦は成功したと言っても過言ではない。いざとなれば、市民ごと敵を打破したのも、一度や二度ではきかない。

 彼らにとって、優しさとは甘さでもあるのだ。

 そんなこんなしていると、ツクネが帰って来た。


「ただいま~。武器一杯買ってきたヨ」


 彼女が担いでいる耐衝撃トランクが下ろされると、重い音を立てた。大量の銃器が詰まっている事は、理解できる。


「その話は、また今度にしよう。今は、作戦の概要を詰めよう」

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