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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
六章:父として出来る事
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十一話:マイノリティー・ガンマン2

 酒場で出会った老人と、同一人物とは思えない変化であった。

 肌が焼け付くかのような殺気が、遮蔽物の多いモニタールームに充満しており、それが、彼の気配を辿るのを困難にしていた。


「ワシも、お前さんを殺そうとした。お前さんも、ガキ共を殺した」


 そして、運の悪い事に、この部屋は声が反響しやすい作りだった。初老の男が喋る度に、あちらこちらから声が飛んできて、真後ろで彼が話していると錯覚してしまう。

 見た事もない型のPCが置かれたオフィスデスクを背に、サイハテは小さな汗を流す。


「お互い様な部分はあれども……やっぱ、割り切れねぇよなぁ」


 視界が揺らぐ程の殺気に比べて、マクニールの声色はいつも通り、どこか優しそうな低い声だった。


「つーわけでよ。いっちょ、ここで死んでくれねぇかな? ちこっと、頭出すだけでいい。一撃で楽にしてやるぜぇ? ヒヒヒヒ……」


 自分で言っておいて、初老の男は笑っていた。どこか、愉快そうに、そして、どことなく悲しそうな笑い声だった。

 サイハテは覚悟を決める、ここはどちらかが死なねば、終わらない戦いなのだと感じ取ったからだ。


「お、いい覚悟だ。お前さんも死ねないのかい」


 どこぞの遮蔽物を背にしているマクニールは、こちらの気配を読み取ったのか、言葉の内容とは裏腹に、酷く面倒臭そうに口を開く。


「じゃあ仕方ねぇ。いっちょ……」


 その瞬間、サイハテを中華で生き残らせてきた直感が、叫んだ。


「殺し合うとしますかい!!」


 横に飛べ。

 その勘に従って転ぶように横に飛ぶと、発砲音と同時に、先程まで居た場所に弾丸が命中するのを見た。

 まだ、マクニールはこちらを狙っているのだろう、狂ったように恐怖を撒き散らしている脳に従って、地面を蹴って、モップのように違う遮蔽物へと隠れる。


「糞がっ!!」


 最初のと六発。

 急いで対比していなかった死んでいたであろう早撃ちに、悪態を漏らしつつ、彼も手に持っていた自動小銃を構え、遮蔽物から身を乗り出す。

 しかしである。


「遅いなぁ……」


 マクニールが引き抜いた二丁目のリボルバーによって、手を撃たれていた。

 レアが作ったスニーキングスーツの防弾機能が正しく働き、負傷はないが、衝撃によって、自動小銃を取り落としてしまう。

 あまりにも凄まじい早撃ちだったので、自動小銃を回収する事を諦め、違う遮蔽物に飛び込んでしまった。


「すげぇ早撃ちだな、あんた」


 着弾の衝撃で痺れる右手首を弄りながら、サイハテは彼に向かって語りかける。少なくとも、利き手の痺れが取れるまでは戦闘をしたくない。

 故に、喋りながら遮蔽から遮蔽へと這いずりまわって、逃げる事にする。


「そうだろう、そうだろう? やっぱ、男の武器といやぁコイツよ」


 得意げな言葉とは裏腹に、気怠そうな話し方をするマクニール。

 彼はリボルバーを一回転させると、ホルスターに戻し、カウボーイハットを直しながら、サイハテの襲撃を待っていた。

 威風堂々と、荒野に現れるカウボーイ伝説の様に、彼は待っていた。


「敵が撃つより早く撃てれば、死ぬ道理はない。なぁ、そうだろう? 次は眉間にご馳走してやるぜぇ」


 古風なシングルアクションのリボルバーと、レバーアクションライフル。

 初めて見かけた時は、酔狂な装備かと思ったが、マクニールの戦闘スタイルを知ってしまえば、これほど合理的な装備はない。

 彼が極めたのは、近中距離での誰よりも早い射撃、たったそれだけの単純なものであり、最も効率的な物だのだから。


「いや、遠慮しよう。悪いが脳みそをプディングにする気は無くてね」


 そう返答しながらも、サイハテは己の迂闊を呪った。

 室内にしては広いモニタールームだが、野外と比べると驚くほど狭い。マクニールがここを選んだのも、どの角度からでも、この広さならば必殺の距離だからだ。

 どんな人間でも、この距離なら殺せると言う、凄まじい実力から選択した殺し間だった。


「ともかく、色々試させてもらおうか」


 だが、敵が圧倒的に有利だからと言って、こちらが負ける訳ではないのだ。

 うだうだと会話したおかげで、利き手の麻痺は回復した。

 これ位で殺せる程度ならば、サイハテはこの時代まで生き残ってはいないのだから。

 携行品を詰めたポシェットから、手榴弾を三つ程引っ張り出して彼に投げつける。


「甘い」


 が、その一言と同時に三つが撃ち抜かれて、あらぬ方向へと転がって言ってしまう。

 あちらこちらで上がる、三つの爆炎と同時に遮蔽から姿を現したサイハテは、ごり押しする事にした。交差した腕で、頭部を守って、マクニールへと肉薄する。

 恐るべき早撃ちが、腕にぶつかるのを感じるが、レアのスニーキングスーツはばっちりとサイハテを守っていた。

 交差した腕の向こうで、彼が笑う。


「嫌いじゃねぇぜぇ!」


 手斧を引き抜き、白兵戦に移るマクニール。


「そうかよ!」


 二振りの刀を引き抜いて、襲い掛かるサイハテ。

 三つの刃がぶつかり合って、派手な火花を散らす。

Q.地の利も銃の腕も敵のが上です、どうしたらいいでしょうか。


A.防弾性能でごり押ししましょう。

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