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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
一章:放浪者の町
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五話

 日本の下水は基本的に汚水を処理する施設まで運ぶために作られている、故に人が歩くスペースなどは基本的に、整備用の通路位しかない。しかし、このワンダラータウンの下水道は元々あった地下道に汚水を垂れ長しているだけなのか、流れはなく、発酵した汚物や汚水によって気温40度を記録している。

 そして、人が歩くスペースなど存在しないのである。ひざ下まで汚物につかりながら、前へと進んでいくしかない。酷い臭いのせいで頭痛がするし、長く居れば居るほど感染症のリスクが高まってしまうだろう。

 サイハテは、気休めながらも口元に布を巻いて、前へと進んでいくのであった。


「くっさ!! くっっっっっっさぁ!!!」


 人糞に死体に科学汚染水にと様々な悪臭が混ざり合い、デミグラスソースになるまで煮込んだような超臭に悩まされながらも前へと進む。あの仕事が最後まで残っていた、というか、日焼けしまくり、抹茶色の紙になるまで放置されていた理由がわかったような気がした。


「こんな仕事もう二度と受けないからな!! 絶対だからな!! あー!! 悪臭で頭いてぇ!! 鼻がいてぇ!! 目がいてぇ!! 体中痒ぃ(かいぃ)んだけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 大声で文句を怒鳴るものだから、彼方此方の壁に反響してわんわんと反響音が響き渡っている。

 我慢出来ないほどの臭さと言うものは、流石にサイハテも初体験であった。ぽっくり死ねる分、毒ガスの方がまだ人道的と言えるかもしれない。


「……汚物の陸地かよ、マジかよ、終末世界どんだけきったねぇんだよ。死体まで乗ってるじゃねぇか」


 蛆に覆われて、蠅が集りまくっている死体を蹴飛ばして汚水の中に落とし、サイハテは自分が変わりにその汚物の小山へと立つ。散々出した大声で、電球鼠とやらを興奮させたのか、地響きと共に鼠の鳴き声が通路の奥より響いて来ている。


「ああ、やっと来たか。ほーれ、餌はここだぞー!!」


 銃器を抜く事も、刀を抜く事もせずに、徒手空拳でサイハテはその響きの主を迎え撃つ。奥より現れたる主は、まさに光の津波と言ってもいいだろう、尾に輝く一粒の電球を携え、久方ぶりの新鮮な肉へと突進する鼠の津波。


「大きさはチワワの成犬位か。結構デカイな」


 駆除理由は疫病対策だけではないだろう、あのサイズなら数匹居れば人間の子供位襲うはずだ。

 しかし、所詮は鼠。体の頑強さは人間程ではないし、脊椎動物なら、さして急所は変わらない。弱点は脳に心臓に腎臓に肺に脊椎にと沢山ある。

 だがあの数だけは少しばかり手間がかかりそうだなとサイハテは嘆息する。この場合、必要なのはいつもの一撃必殺の拳ではない、必要なのはあの津波に負けない手数、津波が一斉に襲いかかってくる場合、必要な手数は秒間42発。


「こぉぁーーーーー……」


 特殊な呼吸法、空手の息吹を利用して全身の爆発力を高める。

 ありとあらゆる戦闘技術、その中から素手の技を探し、手数に優れるカンフーとボクシング、連撃に優れる空手と少林寺を選択すると、今この場でそれらの要素を合わせた独自の武術と呼べるものを製作する。


「ペカチューーーーーーーーー!!」


 なんかギリギリセーフなのかアウトなのか、セウトとでも呼ぶべき鳴き声を発して、電球鼠の津波がサイハテに殺到する。


「せぃやぁっ!!」


 気合の声と共に、サイハテの拳が散弾のように弾けた。

 抜けるような鋭い拳と捻りによって威力がより強力になった拳が、手刀が、蹴りが、遅い来る電球鼠の胴体を一撃で吹き飛ばしていく。

 一度打ったら、次の鼠が拳の射程範囲に入るより早く、腕を引いて、入ったと同時に放つ。それを片腕で30匹分を行う。それを、次の技へとつなげるだけの簡単なお仕事である。

 その姿、一般人視点ではまるで千手観音像の様だ、対応し切れない敵に対しては、足運びで敵の攻撃を躱す。そして確実に、一秒間に60匹の鼠を狩りとっていく。

 拳の嵐は、光の津波を、容易く押し返していく。津波はまるでサイハテの前に壁があるように、一歩も前進出来ていなかった。


「もう二度と来ない為にも、狩りつくすぞこんにゃろーーーーー!!」


 飛び散った血が、肉が、汚水の濁った川に落ちてはどす黒いそれを真っ赤に染めていく。

 余談ではあるが、報酬が出るのは、鼠の首一個に対してである。結構な割合で、頭含めてすべてを粉みじんに吹き飛ばされている鼠が出ているのを、熱くなったサイハテは気が付いているのだろうか?

 連打に、それを繋ぐ連撃は非常に美しいものである、まるで舞踊のようにも思えてくるが、彼は目的を忘れて、汚物の小山の目の前に、肉片の小山を築き上げているが、その小山に、無事な頭部は何個あると考えているのだろう。

 貧乏脱却はまだまだ先になりそうだ。

 肘閃に足刀蹴りに掌底抜き手、背撃膝当と華麗に技を繰り出すのはすごくいい、すごくいいのだが、5、6匹纏めて消し飛んでいるのを気が付いているのだろうか。

 この調子だと、気が付いて無さそうである。

 最早金稼ぎではなく、悪臭によって溜まったストレスを、ただ鼠にぶつけているだけの危ない人に化してしまっている。だが、折角解消したストレスも悪臭が消えない限り、溜まり続ける悪循環に陥っている。

 鼠は、大分減りそうだ。

少しの戦闘描写で2000文字……うーん、もうちょっとスッキリさせた方がいいのかな

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