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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
五章:アルファ・クラン
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三十九話:サイハテの悩み

水曜日更新(金曜に更新しないとは言ってない)


今回は短いです。

水曜もしっかり更新致しますね。

 館山要塞から少し離れた平野部には、既に町が築かれている。

 放浪者の街から、サイハテを慕って集まってきたスラムの連中やら、他のアルファナンバーが活動していた街で、彼らを慕って集まってきた連中が作り上げた町だ。

 数百人規模の小さな小さな町ではあるが、労働力に対して、需要は増えるばかりである。


 東南アジアからの武装商船や、横浜からの貨物船、自由経済圏に所属する軍艦などが補給、または商品を求めてやってくるのだ。

 急いで整備した港と、その前に位置する市場、それと街の外にある農地だけで、労働力を全て使い果たす体たらくである。


「どうしたものか……」


 各地からやってくる嘆願書、もとい、人員増員要請書を抱えて、サイハテは大きなため息と共に、そんな言葉を漏らした。

 館山の町は、未曽有の好景気に沸いている。

 農地から収穫される作物と、要塞のプラントから作り出される粗鋼は、館山要塞の大きな利益となっている。なっている、なっているのだが、金ばかり溜まっても、使う人がいなければ意味がない。


「他軍閥の金なんて、貰っても困るんだがなぁ……仕方のない事だが」


 おまけに、やってくる商人や軍人は、館山要塞が発行している円。便宜上、初めて発行した円だから元円と呼称している。の取引を嫌がるのだ。

 サイハテの予想では、生産力はあっても、それを守る軍事力がないので、価値がないとみなされているのだろう。


「本当にどうしたものか……」


 そして、軍事力を増やすには人を集めてくるしかない。

 しかし、その歩兵を徴募できる場所以前に、町に人が居ないので、歩兵が集まらない。他所の町から大規模移民を行おうにも、その移民を守る歩兵が居ないので、行えないのだ。

 金を払って、マーセナリーを雇うなんて手もあるが、そもそも、その傭兵を統率する常備軍が居ないので、軒先を貸して母屋を乗っ取られかねない。


「……はぁ~~~~~~~っ」


 再び、深々とため息を吐く。

 八方塞がりとはこの事だろう。

 人が増えるまでは何もできない、無作為に増え続ける人員増員の嘆願書を前に、史上最悪の変態は白目を向きながら骨になるしかないのか。


 その時である。


「あの、部長。技術研究部より、内線電話が入っております」


 遠慮がちに声を掛けてきたのは、浅黒い肌を持ったアジア人の女性だった。

 サイハテの記憶では、最近、商船から降りて来た経理担当で、この館山の町に移民してきたベトナム人だったはずだ。


「ああ、えーっと……ありがとう、リエンさん」


 リエン、そう呼ばれた女性から無線式内線電話と言う、訳の分からない内線電話を受け取って、受話器を耳に当てる。


『さいじょー、さいじょー。いま、こまってる?』


 電話の向こう側から聞こえてくる声は、随分と聞き覚えがある割には、随分と懐かしい声だった。

 そう言えば、ここ一週間程会話していないなと、思い出しながらも彼は声の主に返答する。


「ああ、凄く困っている。困っているが……どうした? そっちで何かトラブルがあったか?」


 困っているには困っているが、その困っていると言うのは、何もできないから困っているのであって、やる事があるのならばここまで困惑はしない。


『とらぶるはないよー』

「トラブルじゃない? それなら何の用なんだ?」

『おんなごころのわからないさいじょーに、れあはかせから、ぷれぜんとがあります』


 相変わらず抑揚のない声色だったが、受話器の向こうでムスッとしている事位は、サイハテにも理解できた。

 恐らく、用がないなら電話をするなと聞こえてしまったのだろう。


「……プレゼント?」

『うん。ぷれぜんと』


 首を傾げる変態にむけて、同じ言葉を繰り返すレア。


『さんじっぷんいないに、ぼくにあいにきてね。まってるよー、さーいじょー』


 と言って、彼女は電話を切ってしまう。

 残されたのは、不可解なものを見たような面持ちのサイハテと、さっさと自分の業務に戻りたいリエンだけだった。


「……リエンさん、自分の業務に戻ってくれ。俺は少し技研に顔を出してくる」

「はい、賜りました。お帰りは何時位でしょう?」

「よくわからない。だから、定時が来たら君達は帰宅してくれ」

「畏まりました。いってらっしゃいませ、部長」


 ベトナム人の美女に見送られ、サイハテは足音も立てずに執務室から出ていく。

 三十分以内と時間制限を設けられてしまったので、今日の彼は急ぎ足で要塞内部を歩いていく。陽子もそうだが、レアも待たせると拗ねるのだ。

 急がなくてなるまいと、彼は足早に廊下を駆け抜けていった。

 ベトナムには言った事はありませんが、シンガポールになら一度だけ言った事があります。

 こう、島に立ち並ぶビル街が圧巻でございました。

 車種によって、タクシーの値段が変わったりとか、少々変わった文化があるんですね。片言でも英語が通じるのが有り難いです。


 それと、ヒュンダイの多さよ。

 アメリカの中古ショップで二十ドルで売られているヒュンダイが、あんなに走っているとは……。まさに驚きです。

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