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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
一章:放浪者の町
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四話

今回は短いです。

 阿鼻叫喚の中、陽子とレアは女傭兵達に引き寄せられる。


「あんたたち、今まで大変だったね! これからはあたいたちが守ってあげるからね、もう辛い思いしなくていいんだよ!!」


 そう叫んだ女傭兵は、レアと陽子を抱きしめる。なんだかとんでもない誤解を生んでしまったような気がしてならない陽子は、不安げな表情でサイハテを見つめる。

 すると、サイハテはこっそりウィンクしてきたのだ。


(ああ、なるほどね)


 彼は仲良くなるきっかけをくれたのだ。恐らく、他にはもっと穏便で確実な手段があったのは間違いないが、これはこれで、一応感謝するべきかなと陽子は思う。変態被害者と言うことで妙な連帯感が生まれているだろう、サイハテが存在する限り、この関係は続くはずだ。

 行動原理が趣味なのはいただけないが。

 死角でこっそりブラジャーを装着し直していると、酒場の親父が呆れたような口調で説明をしてくれる。


「ここは傭兵の巣(マーセナリーネスト)だ。読んで字の如く、戦いを生業とする者達が集まる酒場だってのは、見てわかるよな」

「ああ、どいつもこいつも、物騒な面しているからな」

「そりゃお前さんの行動の対価だ……まぁ、いい。仕事が欲しいならそこのコルクボードに張り付けてあるから好きな物を持って行け、特に登録とかはない。どこの誰が、何人くたばろうが、わしらの知ったことではないんでな」

「仕事はどっから来ているんだ?」

「仕事の依頼は様々だ。町から町へと行商するトレーダーだとか、町の自警団からだとか、金持ちからだとかだ、どれもこれも、直接命のやり取りをする仕事ばかりだ。溝攫いなんかがしたいなら、他を当たりな」

「あんがとよ」


 そう言うや否や、サイハテはカウンターから離れて、依頼書……どう見ても手書きのメモ用紙にしか見えないが、依頼書ったら依頼書が張り付けられたコルクボードへと向かってしまう。


(私も、何かお仕事を探さないと)


 陽子も、サイハテに従って、コルクボードに近寄ろうとすると先程の女傭兵に腕を掴まれた。彼女は心配そうな表情を陽子に向けている。


「お嬢ちゃんみたいな華奢な子に出来る仕事なんてないよ」


 言い方は悪いが、心配していると言うのは声色で伝わってくる。


「あ、大丈夫です。えーっと……」

「あたいはミール、麦穂のミールってんだ。西の農場で主に護衛をやっている」

「私は南雲陽子です、ミールさん、心配しなくても、私結構銃には自信があるんですよ!」

「あー、敬語はよしとくれ、蕁麻疹が出ちまうよ。お嬢ちゃん、自信があるって言ってもねぇ……」


 さっそく仲良くなったようで、サイハテはホッと一息ついて、依頼書を眺める。依頼書の文字は大体が平仮名で書かれており、非常に読みにくいものとなっている。

 今ある依頼は……。


・下水道の電球鼠退治:依頼者自警団:増えすぎると病気が流行するから間引いて欲しい。首一つにつき50銭の報酬。

・港までの隊商の護衛:依頼者トレーダー:港町まで守って欲しい。三日間の拘束で弾薬代支給の上、5円の報酬。

・物品調達:依頼者診療所:適当な病院の廃墟から、Gペニシリンを取ってきて欲しい。一つに付き2円の報酬。

・害鳥退治:依頼者西の農園:麦や米を食う人食い鴉を退治してほしい。一匹に付き20銭の報酬、お米のボーナスあり。


「ほほう」


 やはり朝早く来ないと、碌な依頼は残っていないようだった。

 下水道の鼠退治なんかは恐らく弾薬を使いまくれば赤字になる依頼だろうし、隊商の護衛は拘束時間が長い割には報酬が安い……であっていると思う、物品調達依頼は危険すぎるし、害鳥退治は弾薬代でかつかつになるだろう。


「鼠退治かな」


 ボロボロの画鋲に止められている黄ばんだメモ用紙を引き千切ると、それを胸ポケットにしまってサイハテは酒場を後にする。

 レアは陽子に着いて行くようだし、陽子は陽子で自分の身位なら守れるだろうから、サイハテは心置きなく仕事に励めるのだ。一度殺してしまえば、二度目の殺人は気張らなくなる、陽子もスムーズに殺ってくれるだろう。

 正直、体の栄養状態も良くなくて、疲労度も高いし、抱くにはまだ青臭すぎるが、それでも極上の女体が常にそばに居るストレスだって感じている。だがそれはあの少女二人だって一緒だ、明らかに格上の人間がそばに居て、常に身の危険を感じているのだからそのストレスは相当だろう。


「……ストレスには美味しい食事と楽しい娯楽が特効薬だからな。その為には金だ、金。タイムイズマネー」


 自分に言い聞かせるように言うと、町の構造上、下水の出入口がありそうな方向へとのんびり歩いていくのだ。

次回もサイハテ無双、はっじまるよー

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