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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
五章:アルファ・クラン
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PV50万越えサイドストーリーズ:サイハテの事をもっと知りたいかー1

長くなりそうなので、分割させていただきます。

少々、仕事が忙しく、メインストーリーを進めている余裕がございませんが、ご容赦ください。

「気になる彼の事を、もっと知りたいかー!」


 燕尾服を纏い、サングラスをかけた胡散臭い男が叫んだ。

 ここは昔懐かしいクイズ番組のスタジオを模した一室で、サングラスをかけた胡散臭い男はニックだった。わざわざ髪の毛をオールバックに纏めており、それがもっと胡散臭さを醸し出している。


「え、何これ……」


 困惑の声を上げたのは、時を越え、終末の世界へとやってきた女子中学生、南雲陽子だ。

 彼女は回答席らしき場所で、眉尻を下げたまま、辺りを見渡している。


「しらない。あさおきたら、こんなとこに」


 相変わらず眠そうな表情のまま、ピンクの兎柄パジャマで返答するのはレアだ。

 今日は本当に眠いのか、何度も瞬きをして、目を擦っている。


「何やら面白い催しがあるとかデ、アルファの面々が寝ている貴方達を連れてきたのデス。アタシも、無理矢理つれてこられマシタ」


 混乱している二人に返答するのは、眠らない戦闘メイド、ハルカである。しかし、戦闘用ボディはグラジオラスとの戦いで完膚なきまでに破壊されてしまったので、今は汎用ボディを使用しており、どこか頼りなさそうな雰囲気を纏っていた。


「何よそれ。アルファの人達、最近暴走し過ぎじゃない?」

「元々あんな人物達ではないデスか」

「……それもそうね」


 寝間着姿の二人は神妙な表情で頷いており、その様子を見ていた機械侍女は呆れを含む視線を、司会席に居るニックに向けている。

 そんな視線も感じ取っているのだろうが、彼が気にする様子は一切ない。


「それではぁ! ジークに関する質問三百……行ってみよう!!」


 ニックの背後にある天幕が開き、巨大な液晶パネルが出現する。

 そこには憮然とした表情のサイハテが、座り心地の良さそうなソファに腰掛けており、見るからにブチ切れそうな青筋を浮かべていた。


『……で、なんなんだ。このおふざけは』


 これまた機嫌の悪そうな声が、スタジオ備え付けのスピーカーから響いている。


『何、あの小さき乙女達にのう。御前の事をもっと知ってもらおうと思っての』


 サイハテの質問に、涼やかな声色が答えた。

 あの声はよく知っている。グレイス、と呼ばれるアルファナンバーズの爆弾姫だ。


『……帰っていいか?』

『帰ってもよいが、曜変天目茶碗は木っ端微塵だえ?』

『…………おのれ』


 モニター越しでも背筋が凍り付くような、怒気が含まれた声に、二人の少女は体を震わせた。

 陽子もレアも、普段は何考えているか分からない変態を、あそこまで怒らせた事はない。いつもはガラス玉のような目玉には、憤怒の炎が燃えている。


「尚、このイベントはクイズ形式で進行致しますので、ご了承下さい」


 背後のモニターで、燃えている男をスルーして、ニックはそう宣言した。


「では第一問。ジークの誕生日は?」


 ルールも何も説明されてはいないが、聞いてもどうせ答えてくれはしないので、三人は少しの諦観の気持ちを持ちつつも、回答席に用意されたフリップにマジックペンで答えを書き込んでいく。


「それでは回答オープン!」


 粗方書き終わった頃に、彼からそう指示があったので、フリップを見えるようにおいてやる。

 陽子は「わからない」レアは「八月三十日」ハルカは「どうでもいい」と回答した。


「え、サイハテの誕生日って、その日なの?」


 レアの回答を覗きこんだ陽子が、思わず尋ねる。


「あくまでも、さいじょーはやてのこせきじょー、のたんじょーび」


 眠そうなゆるふわ幼女は、至って常識的な返答をした。


「まぁ、西条様の誕生日など、どうでもよろしいのデスガ」


 ハルカは素直である。


「では、返答ターーーーーーイムッ!!」


 ハウリングが残る位の大声で、ニックが叫んだ。

 生物の少女二人が耳を抑え、機械の少女は顔を歪める。


『のう、ジーク。御前の誕生日はいつだったかのう?』

『テメェと同じ日だよ。くたばれ』


 不機嫌ここに極まれりだろうか。

 モニターの中にいる変態は、これ以上ない位、口が汚い。


「ざーんねーん!! 三人とも不正解です! 三人とも不正解だった場合! ジークに厳しい罰ゲームが待っています!」


 顔を顰めていた三人が、驚愕のあまり司会を凝視する。

 すると、後ろのモニターとスピーカーに異変があった。


「ほぎゃあああああああああああああ!?」


 聞いた事ないような、サイハテの悲鳴に、司会からモニターへと思わず視線が映る。そこには、黒焦げになった変態が、地面に倒れている姿が映し出されている。


「ちょっと、サイハテに何したのよ!!」


 陽子が怒鳴る。何しろ、倒れ伏す彼の体からは、冗談みたいな黒煙が上がっているからだ。流石に、これはやり過ぎだと怒っているのだ。


「罰ゲームは「俺じゃなかったら致死量だね君」による電撃になっておりまーす」

「何よそれ! ふざけないで!!」


 両腕を振りながら怒る少女を尻目に、司会のニックは小さく鼻を鳴らすと、言葉を続ける。


「では第二問!」

「聞きなさいよ!?」

「ジークの特技は?」


 聞く気はないようだ。

 制限時間などはあってないような物だが、気まぐれに決められたらたまらない。サイハテが苦しむことは避けたい陽子とレアは、真面目に回答する。


「これであってほしいわ」


 陽子が出したのは、潜入と言う答えだ。


「かぶらせないよーに」


 続いてレアが、隠れる事と書いた。


「これでショウ」


 ハルカはサイハテがどうなろうとどうでもいいので、逃げる事と返答する。


「では、返答タイムと参りましょう」


 どこからか、ドラムロールが聞こえてくる。まるで、運命が扉を叩くような音だと、二人の少女は思い、機械侍女は早く終わらないかなぁと内心うんざりしていた。

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