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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
五章:アルファ・クラン
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年末なのでサイドストーリーズ:陽子の友達

本編じゃないんだ。

申し訳ないね。

 一つの街に長く留まれば、それだけ友達が出来ると言う物で、陽子とて例外ではなく、サイハテの情報源でもある、スラム街の娼婦リリラと友人になっていた。

 お互い、十三歳だと言う事もあって、気の置けない友達になっているようだ。

 そして、思春期の女の子が二人揃えば、話題なんて決まったものである。


「はー、陽子ちゃんはいいよねー。西条さんみたいな素敵な人の情婦で」


 お茶を飲みながら、疲れ切ったOLのような気怠さで、リリラは言った。

 クッキーを齧っていた陽子の口が、止まる。

 何か恐ろしい物を見るような目で、彼女を見つめ、少女は急いでクッキーを飲み込んだ。


「え、私って、そんな目で見られているの?」


 陽子にとって、リリラの言った事は初耳どころか、寝耳に水である。


「えー、違うの? いつも一緒にいるしー、一緒のおうちに住んでて、西条さん、ここに来てから女を抱いてないから、陽子ちゃんが相手しているのかと思ってたけど……」


 彼女にとって、男と言う生き物は、女を抱く事が大好きだと印象付けられているようだ。

 強ち間違ってはいないが、正解と言う訳でもない。


「し、してるわけないじゃないっ! 確かにあいつは変態だけど!? 私が相手する理由もないし!?」

「男と女ってだけで十分な理由だと思うけどなー」


 リリラの反応は年頃の少女と思えない位ドライな反応である。


「それだけで……そう言う事はしたくないの!」

「ふーん?」


 顔を赤くして否定する陽子を、彼女はじっと見つけると、こう結論付けた。


「陽子ちゃん、まだ未通かぁ」

「だだだだだ、誰が処女って証拠よ!?」

「処女じゃないの?」

「……処女だけど」


 少女は返答すると、顔を赤く染めて俯いてしまう。


「……ふーん、西条さん、まだ抱いてないんだぁ」


 対するリリラの方は、何かを考えるかのように顔を背けている。

 しばし、二人共沈黙を要した。

 陽子は気持ちを落ち着かせる時間を、リリラは思案の為に時間を使い、お互いが黙ってお茶を啜るだけの時間が過ぎる。


「ねぇねぇ、陽子ちゃん」

「……何?」


 先に口を開いたのは、結論を出す方が早かった彼女だ。


「西条さんを狙ってる娼婦って、結構多いのよ」

「……は? アイツ、そんなにモテるの!?」


 先程の羞恥はどこに行ったのやら、陽子は本日二度目の驚愕を味わっている。


「モテるよー。清潔だし、マメだし、ユーモアがあって優しくて、お金も持ってる上に顔はいいし、強くてスラムなら誰にでも顔が利いて、中心街のお偉いさんにも一目置かれてる……逆にモテないと思う?」


 役満とはこの事か。


「……それもそうよね」


 確かに、サイハテは身なりも清潔で、女性への気遣いは忘れず、斜め上のユーモアは万歳であり、お金は持っていて顔は悪くない上に、顔が広い。

 が、女性の裸体より下着に興奮し、部屋着は何故かバニーガールな上、趣味である早朝の全裸ラジオ体操と、日課の生足ウォッチングを欠かしていない事は、決して忘れてはいけない。


「陽子ちゃん、姉さんたちに可愛がられてるから、今まで手を出されることはなかったけど、これがバレたらちょっとまずいかなぁ」


 そう言って、困ったように頬を掻くリリラだったが、素直になれなかった陽子は思っても居ない事を言ってしまう。


「……別にサイハテが誰と恋愛しようが、私には関係ないもん」

「そうじゃなくて、スラムに血の雨が降るよ?」

「血の雨が降るの!?」


 血の雨とは随分と穏やかでない表現だ。


「比喩でもなんでもないからね。姉さんが熱を上げ始めたら、多分、入れ込んでる男が西条さんを狙うから……」

「そっか……殺し合いになるかも知れないのね?」

「ううん、男が減ると、あたしらおまんま食い上げちゃうから」

「そっち!?」


 陽子は驚愕して見せたが、事実、スラムで燻っている程度の男達が束になっても、サイハテに敵う道理等なく、もし戦いになればスラムの男達は彼に殺されてしまい、男達から稼いでいる娼婦達の収入は途絶えるか、大きく目減りしてしまう。


「だからね、陽子ちゃん。なんとかして、西条さんの童貞をゲットして……」

「……リリラちゃん、サイハテ、童貞じゃないわよ。昔、奥さんが居たって言ってた」

「……いくらアピールしても抱いてくれないから、童貞かと思ってたーあはは」

「あんたも狙ってた訳ね……」


 スラムで、サイハテ童貞説が浮上していた。


「まぁまぁ、それよりさ。娼婦の手管を覚えてみない? こう、お酒でも飲ませた後、すっと近寄ってちらりと胸元をシャツの隙間から見せてみるとか」

「……試してみてどうだった?」

「やんわりと受け流された……」


 しょんぼりと落ち込むリリラと、苦笑いの陽子。

 今日のお茶会はなんだか微妙な雰囲気になってしまった。

それでは皆様、よいお年を。


全然大晦日に関係ない話だったね!!

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