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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
五章:アルファ・クラン
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十三話:人員確保任務2

休日、フゥー!↑


気分がいいから二話更新です。

 第一ターミナルは、地下含めて六層のフロアで構成されている。

 サイハテの侵入した一階は国際線の発着ロビーとなっており、かなり視界が開けていた。

 こう言ったどこからも視界が通る場所に長居はしたくないので、彼はこっそりと見つからないように地下へと逃走する。

 そこで発見したものに、度肝を抜かれてしまった。


「おーらい、おーらい、そこでストップ!」

「ここかー!?」

「もーちょい右だ!」


 武装勢力がわざわざ重機を持ち込んで、大掛かりな作業を行っているのを、この目で見たが、作業自体は問題ではない、問題なのは、その作業で作られている物だった。

 随分と古い記録でしか見た事ないが、サイハテはそれを知っている。


「装甲列車。いや、装甲リニアか……!」


 作業による騒音で、サイハテの呟きは搔き消されてしまうが、それも計算の内だ。

 とりあえず、これに関しては通信して判断を仰ぐしかないだろう、破壊するにせよ、しないにせよ。こんな大型兵器を見逃す手立ては無いように思えた。


「……こちらアルファ33、聞こえるか」

『……はい、こちら本部よ。何?』


 まだ不機嫌そうだったが、機嫌をとっている場合ではないだろう。


「敵の大型兵器を発見した。作業の進み具合から八割ほどの完成度に見える、後二週間程度で、稼働状態に持っていける事が予想される。本部の指示を仰ぎたい」

『大型兵器!? なにそれ!? そこに居るのって、ただのバンデット(野盗)でしょ!?』

「練度から見るに野盗なのは間違いない、だが、大型兵器を所持している。支持を仰ぐ」

『指示って……どうしよう?』


 どうやら、決めかねているようだ。

 やはり、一人の少女に戦場での判断を求めるのは間違っているように思えるが、これには対外的にも内部的にも、陽子をこの集団のリーダーとして認めさせるアピールもあるのだ。

 西条疾風が彼女に従っている、この事実があれば、他の面々も彼女がリーダーだと認めざるを得ないのである。


「破壊か、それとも偵察か? それを決めるだけでいい……」


 アルファナンバーズをなめない方がいい。

 表面上は仕えると体裁を取ってはいるが、隙を見せた瞬間に傀儡にされるのは目に見えている。陽子個人に忠誠を誓っている訳ではなく、野心がない奴等ではないので、いつ彼女を見限って「ジーク筆頭に天下とろーず」と言いだすか、サイハテも気が気じゃない。


『……んー、今回は偵察で、写真撮ってみんなで見分しましょ』

「了解した。君の判断を尊重しよう」


 いい判断をしてくれたと思う。

 こう言った兵器は、破壊するだけでなく、奪う事も念頭におけるので、奴らも不満は持たないだろう。不満を持たれたら、いつの間にか天下人になってもおかしくはない。

 とりあえず、写真を撮って、とっとと人質を探さなくてはならない。

 サイハテは腕に付けた小手を起動すると、いくつかの重要部を写真に収めて地下を後にした。

 次は二階の探索だ。


「……二階にたどり着いた、ドローンが徘徊している。今から画像を送るので、レアに見分して貰ってくれ」


 彼が言ったように、二階にはいくつかの自律兵器が闊歩していた。

 それらをカメラに収めて送ると、すぐさま返答が来る。


『レアが今からデータを転送するって、いくつか現地改修の後があるから、正確じゃないけど……サイハテなら対応が出来るって信じてるってさ』

「それなら、できるだけ期待に応えよう」


 転送されてきたのは目の前にいる、バケツのような自律兵器のスペックだった。

 センサーの種類と有効範囲、映像のどれがどの武装で、これはわからない等、事細かに描かれており、あの短い時間でここまで出来た彼女をサイハテは称賛する。

 対地攻撃が始まれば、敵は人質のいる部屋へと集まってくるだろう。

 ソフトターゲットだけならば問題ないが、重機関銃を装備したこいつ等に来られると、人員の命が危なくなる。

 少々、細工をしておくことにする。


 自律兵器には敵味方識別信号(IFF)と言うのがついている。

 これで敵味方を判別し、敵だけに攻撃を加えると言うシステムを、彼らは構築している。元々は戦闘機等のレーダーを使用する兵器についていた物だ。

 普通の兵器ならば、誤魔化されないようにセーフティがついているのだろうが、どう見てもあれは現地改造品である。

 セーフティが無い可能性の方が高い。


「……味方も現地調達できる時代か、良い時代になったものだな」


 皮肉を言ったサイハテは、多目的媒体に内臓されたハッキングツールを起動させる。

 後は取りついて、彼らの脳(CPU)を狂わせればいいだけだ。


「……よっと」


 決められた巡回経路を徘徊するバケツに飛びかかり、ナイフでメンテナンスハッチをこじ開ける。小手から二又フォークのような端子を伸ばし、適当に突っ込むと、それだけでクラックが始まり、一秒かからずに彼らの識別を書き換える事に成功した。

 普段から天才天才言っているだけあって、レアの仕事はサイハテが満足する素晴らしい出来である。

 後は同じ手順で、バケツみたいな自律兵器を無効化するだけなので、特に変わった事がある訳でもなく、サイハテは二階の安全を確保した。


「こちらジーク、敵自律兵器の無効化に成功。こいつ等から情報を引き出してみる、引き出せたらそちらにも転送しよう……それと、レアに礼を言っておいてくれ。いい仕事だったと」

『うん、わかったわ』


 通信機の向こうでレアが喜んだような声が聞こえた気がする。

 潜入中だと言うのに、どこじゃほのぼのとした空気が漂って来ているが、それに浸っている場合ではなく、敵味方識別信号を書き換えられた自律兵器から、サイハテは情報を抜き出す事にした。

 映像か何か、残っていればいいのだが。

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